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第073話 無事(?)合流

 僕の指示を聞いたエヴァがイニレ家の馬車から離れたところに降りる。

 ガブリエラ=ベラがすぐに馬車を降り、いつのまにか手にしていた袋をエヴァに向けて差し出していた。

 青龍(ブルードラゴン)だったそれが変化した時と同じように光になり、今度は人型に変化していく。

 袋の中身は着替えだったようで人型の光のまま、服をまとい始めた。


 女性の着替えをずっとみるわけにもいかない(袋から下着らしきものも出てきた)ので、馬車の状況を確認する。

 浮遊の魔法をかけていたせいか、馬車本体の重量による天井の劣化はなさそうだ。

 ただまったくの無傷とはいかず、少し歪んでしまっている。

 馬車ではなく6人分の重さを支えたことによる歪みだろう。

 空中分解しなくてよかった。やはり移動手段は事前に確認するべきだったか。

 でも事前に聞いてたら、みんな嫌がって間に合わなかったかもしれないしなぁ。

 空輸にも耐えられるように改造した方が良いのか・・・

 馬車の定義ってなんだ?と一瞬思ったが自走させようとしている僕が突っ込むのは違う気がした。


 他のメンバーを見ると

 トリィとヒビキはユニコーンの様子を確認に向かったようだ。

 とはいえ初めて見るものなので、おっかなびっくりだったが手綱をつないで馬車の方に連れてきている。

 ユニコーンも特に暴れる様子もなく、おとなしく馬車につながれるようだ。

 ミアとリッキーはまだ寒けがするのか、自分の身体(特に二の腕あたり)をこすっていた。


 「待たせたわね。(あるじ)殿、行きましょうか。」

 声がした方を振り返るとエヴァとベラが立っていた。

 「メイド服?」

 ガブリエラだけでなくエヴァもメイド服を着ている。

 「そうよ、この服だったら従属してることも一目で伝わるでしょ。」

 うむ、僕の評価も一目でだだ下がりだよ。

 「他の服はないの?」

 と聞くが

 「持って来てないわね。」

 とにべもない。


 「まあ、いいか、帝国についたら服買おうね。」

 あと馬車ももう1台いるな。

 1瞬ローラさんの馬車に乗ろうかと思ったが、急に信用してもらえるとも思えない。

 せまいが1、2日はしばらくはこのメンツでの移動になるだろう。


 トリィが馬車の準備ができたと伝えて来たので、考え事を止め馬車に乗り込む。

 ミアとリッキーは身体が温まって来たのか御者席に移動した。

 最初エヴァがリッキーをギロリと見たことでリッキーが何かを察し、御者席に移動したのだが、ミアもあわてて御者席に移った。


 よく考えたらミアがエヴァに失神させられたのは昨晩のことだ。

 いきなり同じ配下になったので仲良くしてね。と言われても困るだろう。


 そういえばヒビキもガブリエラに眠らされているのだが、何も思っていないようだ。

 まさかガブリエラが仮面をはずしているから気づかないということもないと思うが・・・

 あとでそっと確認した方が良いかもしれない。


 「あの・・・」

 と御者との連絡用の小窓が開き、そこからミアの顔が見える。

 「どうしたの?」

 「このユニコーンたちですが、普通の馬のようにムチ当てて大丈夫でしょうか?」

 僕はわからないのでエヴァを見ると、エヴァが代わりに答えた。

 「ムチを当てても良いけど、あなたなら言葉にすれば察して動いてくれると思うわ。」

 とミアに言う。

 「そっちの人はムチの数は最低限、力も弱めにして気づかせるぐらいにした方が良いと思うわ。」

 とリッキーに言う。

 「なんでそんなに違うの?」

 とエヴァに聞くと

 「ユニコーンとはそういうものよ。」

 どういうものだよ・・・と思ったが生態を知らないので、ここはまかせよう。

 不安そうにこちらを見ていたミアに黙ってうなづくと、意を決したらしくミアもうなづく。

 小窓が閉まると、前方で小さくムチがなる音がし、

 「ミアの前方にいる馬車まで移動します。」

 と言う声がした。

 少し遅れて馬車が動き始める。


 ◇◇◇◇◇


 馬車がイニレ家一行に近づいたあたりで、馬車が止まり、再び小窓が開く。

 「一旦ここで止まれと言われています。」


 そうか、顔を見せずに近づいていけばそりゃ不審がられるか。

 ましてや先ほどドラゴンを目撃したばかりだ。


 「全員降りて顔を見せよう。」

 と馬車を降りる。


 見るとイニレ家一行から1騎だけ、こちらの馬車の近くまで来ている人がいた。

 ミアに止まれと告げたのはこの人だろう。

 僕より少し年上ぐらいの男性で、軽武装で視界を確保するためか、頭部は額を守る”はちがね”のようなものをつけているだけだった。

 話しかけようとしたが、馬上から僕の方ではなくユニコーンをマジマジと見つめている。

 横向いてると”はちがね”も意味はなさないのだが・・・


 「あの・・・」

 と声をかけるとハッと気づいたようにこちらを向き、

 「あなた方は何者か。こちらはやんごとなき方が乗っておられるので、急ぐのであれば少し距離を取ってまわりこんでいただきたい。」

 と告げて来た。


 「私はタック・タッキナルディ。王国男爵でイニレ伯爵家の寄子です。あちらの馬車にはローラ・イニレ伯爵がお乗りではありませんか?帝国領に入る前に合流させていただきたく急ぎ参じた次第です。」

 と告げると、男性は一旦イニレ家一行に戻る。

 馬車の周辺で車内の誰かと二言三言交わし、またこちらに戻って来る。


 「ローラ様からタック殿だけ、こちらに来ていただくことは可能か?と」

 と伝言を受け、トリィと顔を見合わせる。


 見るとローラさんが馬車から降りて姿を見せていた。

 了承し一人でイニレ家一行に向かう。


 歩いていこうとしたら、男性が馬の後ろに乗せてくれた。

 馬車に近づくと、ローラさんが出迎えてくれる。

 「待っていましたよ。こちらにどうぞ。」

 と馬車に連れ込まれる。


 うちの馬車と違い、少し大きい。4人ずつ前後に8人ほど乗れるサイズだろうか。 

 メイドさんがどこかでお湯を準備していたらしく、車内のテーブルに紅茶が置かれ、そのメイドさんが辞して、車外に出るとローラさんはニコニコとした笑顔のまま、


 「少しお会いしないうちにまたタックさんの状況が変わっているようですが・・・」

 と言葉を一旦区切り、

 「まずは・・・ちゃんと説明していただけますか?」


 と笑顔ではあるが、ハイライトが消えた感情が消えた瞳で僕を見ながら言う。

 これは説明と言うより査問・・・かな?

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