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第069話 お迎えへの説明

「従属魔法をレジストできたのは誰?」

「私、黒子(ヴァレンティナ)、それと黒鎧(アナスタシア)ね。」

 とエヴァが代表して答える。

 またターシャさんが入っていない。

 だが、アド姉がここにいるメンバーについて聞いているかもしれないのでひとまず黙っておく。

「3人だけ? ガブリエラもレジストできなかったの?」

 とアド姉が僕とガブリエラを交互に見ながら聞くとガブリエラが黙ってうなづいた。

 アド姉はこめかみに手をあてたまま、目を閉じ黙り込んでしまう。


「アド姉がここに近づかなかった理由はなんなの?」

 黙ってしまったアド姉に逆にテムステイ山組の聞きたかったことを代わりに聞いてあげる。

「いくつか理由があるのだけど、1つはここの子たちの中には命を狙われている子もいるってこと。」

 アド姉は目を開き、僕の質問に答えてくれた。

「狙われている?」

「ターちゃんはここにいる子たちが訳アリなのは知ってる?」

「うん、聞いた。」

「他の国もそうだと思うけど、司教領にもいろいろあってね。表向きには国外追放した、奴隷落ちしたってことにしておいて、その後すぐに殺しておきたい。って考える過激な連中がいるの。私が裏から手を回してバレないように助けてたんだけど、いろいろやりすぎて私が疑われる状態になってしまったのよ。」

「バレないようにしてたのに疑われたの?」

「物的証拠は何一つないけど、動機と実行能力がある人間で絞り込まれるとねぇ・・・」

 と肩をすくめながらアド姉は言う。

「アド姉がここに来ると、逃亡した人がここにいることがばれるからここに近づかないようにしてたと。」

「そういうこと。」

「監視を振り切ってここに来るわけには?振り切るぐらいできるでしょ。」

「振り切らないといけない理由があります。って宣言することになってしまうからそれは悪手ね。」

 他にも理由はあるとのことだが、疑われてるのでここに近づくのは控えてたというのは分かった。

 となると他に聞かないといけないことは・・・と考えを整理する。

「ここのメンバーにその理由を伝えなかったわけは?」

「さっきも言ったけど他にも理由はあるの。理由を全部手紙とかに書ききれないし、一部だけ伝えてしまうと、何人かはその問題だけ解決しようと動くからそうしてほしくなかったのよ。私を疑ってる人間を排除されても司教領が混乱しちゃうし。」

 とアド姉は周りの顔ぶれを見る。エヴァとブルーノを見る時間だけ少し長かったのは気のせいか・・・

 頭より体が先に動くメンバーが望まない行動をしそうだから、あえて連絡を取らなかったという事か。

「でもここに食糧とかは運び込んでいたんでしょ。そこから疑われる線は?」

「あくまで運送中に野盗に襲われて奪われたって体裁を取ってたから。それに私を疑ってる人たちもさすがに商会全員の動きまでは追えないわよ。」

 なるほど、引き渡し方法までは聞いてなかったな。

 エヴァ達を見るとうなづいている。完全ではないだろうがある程度理由は納得できたということか。


「じゃあ、僕からは最後に一つだけ。それだけここに来ることを避けようとしてたのに今来てるのは?」

 と聞くとアド姉はポカーンとした顔をした。

 ポカーンとしているのはアド姉だけでなく、横に座っているトリィ、僕の隣にいるエヴァもそうだ。

 何を今さらって顔をしている。そんな変なことを聞いたかな?

 黒子(ヴァレンティナ)黒鎧(アナスタシア)は表情読めないので知らん。ガブリエラはニコニコしている。

「あなたを迎えに来たからに決まっているでしょ。」

 アド姉は呆れたような顔をして僕に言う。

「アド姉が来ることが僕を解放する条件って聞いたから?」

「そうよ。」

黒鎧(アナスタシア)が連れ去ったのがわかれば、命の危険はないのはわかるよね。」

「ベアちゃんが泣いて頼むからよ。」

「泣いてないです!」

「だとしても武装してここに来る必要はないよね。」


 そうなのだ。武装して来る必要はない。

 アド姉は何を心配して武装したのか。


 アド姉は僕の質問に少し困ったような顔をして、

「万が一のためよ。」

 と答えた。

「万が一?」

「ターちゃんかエヴァが暴走しちゃうんじゃないかって心配していたの。」

「暴走?なんで?」

「まずターちゃんはここの子達の魔法を目にしちゃうと片っ端から試してみたくなっちゃうでしょう?」

 むう、否定できない。

 黙った僕にアド姉は言葉を続ける。

「ここに(かくま)った人たちの中には危険な固有魔法を持ってる人もいるの。国によっては地位を与えて管理下に置くこともあるけど、さっきも言ったように危険だと言うだけで排除しようとする人もいるの。」

 ずいぶん勝手な理由である。

「ちなみに従属魔法も危険視されてる魔法よ。当然それの使用者も危険視されるわ。」

 エヴァが自分を魔獣認定されていると言ったのはそのせいだろうか。

 エヴァに目を向けるが僕の方は見ておらず、変わらずアド姉を見ていた。


「あとエヴァがターちゃんに従属魔法をかけて、魔道具大量に作らせると困ったことになると思って。」

「困ったこと?」

「多分、ここの集落の人間だけで戦争できるわ。」

 なんか壮大な話が出てきたが、飛躍しすぎててよくわからん。

「ごめん、アド姉。その結論に至った経緯がさっぱりわからないよ。」

「従属魔法で統率されてる一部隊全員が、()()()()()()()()()()()()の指輪をはめてる場合、どこの軍隊だったら勝てると思う?」


 うーん、勝てる気しないな。自分の防衛用に作っただけだが意外に危険なものなのか・・・

「でも、兵站の問題もあるし、戦闘し続けることは無理でしょう?」

 トリィが黙った僕の代わりに質問する。

「そうね。でも初戦は絶対負けるか大損害が出る。そんな戦闘したがる国はいないのよ。」

 とアド姉がトリィに答える。


「そもそも従属できてないし、できたとしても今さら戦闘行為はしないわ。」

 とエヴァがアド姉に言い、

「キリがないし、どんな手を使われるかわからないもの。」

 と続けた。

 それはそうだろう。正面切って戦うと大けがするとわかっていたら、誰だって別の手を使う。

 剣だって、槍だって、銃だって、もともとその発想から生まれたものだ。

 魔道具で身を固めたところで、どんな方法で攻撃されるかわからない。


「じゃあ、ターちゃんは返してもらっていいかしら。従属は追って解除するということで。」

 とアド姉は僕を連れて引き返すべく、話を終わらせにかかってくる。

「あ、そのことでちょっと話が・・・」

 と言いかけた僕の言葉をさえぎり、エヴァがアド姉とトリィに向けて宣言する。

「テムステイ山のものは魔獣含め全員、タック・タッキナルディの庇護下に入ることになった。」

 と。


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