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第007話 婚姻制度

 両肩をトリィにしっかりと捕まえられる。

 肩が壊れてないので全力ではなさそうだが、逃げようとしたら壊されるかもしれない。


 「私は王子なんて眼中になくてタック一筋なのに、タックは他の女に目移りするの?」

 とトリィが僕を見ながら言う。

 さっき”今から新しい相手探すのもめんどくさい”と言ってた気もするが、それを今言うのは間違いだ。


 「目移りなんかしてないよ。僕もトリィ一筋だよ。」

 間違ってはいけない(負けられない)戦いが始まりを告げる。


 「嘘。ミアにもったいないって言ったわ。」

 トリィの顔がすぐ近くにせまる。だが、ムードらしきものはどこにもない。

 鍔迫り合いの状況に近い。


 「確かに言ったけど、ミアの才能のことだよ。」


 「護衛だけなんてもったいない。俺の女になれ。って意味じゃないの?」

 いつのまにかトリィの手が肩から離れ、僕の胸倉をつかんでいた。


 「違う。情報収集能力が高い魔法使えるのに、口が軽いからもったいないって意味。」

 胸倉をつかんでいた手が少しゆるむ。トリィに納得感を与えられたようだ。


 いつの間にか我関せずとばかりに壁際のアレックスのとなりにいたメイド(ミア)が”心外”とばかりの顔をしているが、知らん。


 「なんでミアの顔を見つめてたの?」

 胸倉をつかんでいた手が再びしまる。まだ終わりではないらしい。


 「見つめてたんじゃないよ。ミアとの会話からミアの魔法を推測するのに集中してただけ。」


 「・・・。女の子の顔を見ながら考え事するのやめなさい。って前言ったわよね。」

 と言いながらようやく手を離してくれた。


 「誤解はとけただろうか。」

 ようやく離してもらった服の首周りを戻しながらトリィに告げる。


 「タックが言葉足らずで行動がまぎらわしかったのはわかったわ。」

 と顔を合わせないようにしながらトリィが答えた。


 「側室が欲しいってわけじゃないのね?」


 「欲しいって考えたこともないけど。妙に側室にこだわるけどなんでそんなこと気にするの?」


 「だって、経済的余裕がある男は側室とか愛人とかハーレムとか欲しがるってみんなが・・・」

 とトリィがこちらを見ながら言う


 「みんな?」


 「騎士団の。魔道具あれだけ売ってるからお金は持ってるはずだって。」

 シャワーの魔道具とかのことか。さんざん要求(機能追加と改良要望)を繰り返しておきながらトリィにあらぬ情報を吹き込みやがって。次のメンテナンスの時にシャワーから熱湯が出る設定にしてやろうか!(後が怖いからしない。)



 この国の婚姻制度は一夫一妻が普通だが、一夫多妻もしくは多夫一妻も許されている。

 この国では家長になる権利が男女ともにある。

 貴族や商人などの場合、後継者問題を避けるためにこのような形になっている。

 もちろん後継者を明確に決めていて一夫一妻のままという家もある。

 ただ病気や戦争、その他の理由で後継者不在となるリスクを減らすために一夫多妻、もしくは多夫一妻としている貴族や商人は少なくなかった。

 また家長同士が夫婦という形も許される。

 ただ王家の場合は例外で今回トリィが王子の求婚を仮に受けた場合、ローデス家(商会)の次期家長の座を放棄して王家入りすることになる。(ならんけど。)



 「婿養子の身分でそんなことしたらおじさんたちに怒られると思うんだけど。」

 騎士になって商会の仕事をしてないが、ローデス家の次の家長はトリィであることに変わりはない。

 「でもタックはお金持ってるから、商会の独立をほのめかせて愛人持ちたがるかもって。」

 新規に商会を起こすってこと?

 お金があればできるわけじゃない。

 取引先のコネクションとか要所を任せられる人材とかいろいろ必要だ。

 「想像力豊かすぎるだろ。確かに儲かったけど魔道具の開発資金とかでほとんど消えてるよ。」

と先ほどミアと実験していた浮遊板を指さしながら言う。


 「そうなの?なら良いけど。」

 「よくない。開発資金が底をつきそうなんだ。」

 「そのことを”良い”って言ったんじゃないわよ。」


 とトリィは腰に手をあてて、ミアを見ながら、


 「とにかく。タックは周りにお金持ちって思われてるんだから、側室や愛人にどうですかって話が来てもちゃんと断わらないとだめよ。」


 「わかった。トリィ一筋ですって言っとくわ。」

 とこれ以上ない(と思う)正解を述べる。


 「そ、それは恥ずかしいから普通に断って。」

 と耳まで真っ赤にしたトリィは顔を背けながらそう言った。

 何かと不安がるくせに、正直に本心を伝えると安心するのではなく照れる。

 魔法すら使えない時からそばでいろいろしてくれたトリィを差し置いて愛人なんて持つわけないのに、どうして僕がハーレムを持ちたいのでは?と心配するのかよくわからない。


 「さてと、誤解も解けたことだし、開発続けますかね。」

 真っ赤になったトリィを見ながら、そう言葉を続け浮遊板に向かう。

 浮くところまではうまくいったが、いろいろ検証した後に自動追尾機能も付けないと。

 この機能がないと自分が押さないといけなくなってしまう。

 他にもいろいろつけたい機能はあるが、まあそれは明日間に合わなくても良い。


 だが、腕まくりして再び作業に取り掛かろうとした僕は着手することができなかった。

 「タック様。店先に来られた方が、”タック様を出せ”と叫ばれてます。」

 と”感知”魔法を使っていたミアが僕に告げたから。

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