第068話 お迎えが来ました
アギレラからこちらに向かっているうちの1人はアド姉と聞き、もう1人はトリィだと確信する。
2人を迎えに行こうと立ち上がったが、エヴァからそれは駄目だと言われた。
確かにエヴァ達からすると僕は説得(?)できたものの、アド姉が僕を取り返したら計画がたちまち破綻してしまうので、アド姉に話し合いの席についてもらうことが必要だ。
そのために僕の左右を4人で固める今の状態は否が応でもアド姉に話し合いの場についてもらうための彼女たちの覚悟とも取れる。
ブルーノに案内されて、アド姉とトリィが大広間に入ってきた。
誰かから借りたのかアド姉は帯剣している。
トリィもトッドの小手とミアの指輪を借りたようだ。
最悪力づくでも僕を取り返すつもりで来たのだろう。
2人とも憔悴している。ひょっとしたら寝てないのかもしれない。
無事なことを伝える方法がなかったとはいえ、心配かけてしまって申し訳ない。
と2人のことだけ見ていたが、よくみるとブルーノの片頬が大きく腫れていた。
『ブルーノの頬は、どうしたの?』
とアギレラに聞くと、案内しようとしたらアド姉にぶん殴られたそうだ。
どうやらご機嫌はよろしくないらしい。
広間に入ってきたアド姉とトリィが僕を見つける。
トリィが駆けよろうとするが、アド姉がそれを片手で制す。
「みんな、久しぶりね。元気してた?」
とアド姉が立ったまま4人に声をかける。だが4人は声を出さない。
「あのね、みんなが連れてっちゃったタックはレイスリン王国の貴族なの。それも王様のお気に入りの。だから開放してほしいんだけど。」
エヴァがちらりとこちらを見る。”そんなキーマンとは聞いてないけど”って顔だ。
おもちゃとして気に入られているだけである。
「アド姉もトリィも立ってないで、とりあえず座らない?アド姉は彼女たちの話も聞いてほしいかな。」
4人が黙ったままなので、さすがに沈黙に耐えられず僕がしゃべる。
「ターちゃんは話せるのね。この子たちに何もされてない?」
「ここに連れてこられる以外は何もされてないよ。食事も食べさせてもらってる。彼女たちから事情も少し聞いてる。まずは座ってよ。」
アド姉が黙ってエヴァを見る。
「真龍に誓うが彼に魔法は使ってないよ。」
ようやく口を開くエヴァ。僕に従属魔法でしゃべらせてるわけではないということだろう。
真龍が何者かは知らないが、その言葉を信じたようでアド姉が席に着く。
「正確には魔法を使おうとしたが私が止めた。」
とエヴァの向かいに座っていた黒鎧が言うとアド姉がジト目でエヴァを見る。
「いやっ、使ってないのは本当だから。」
と動揺しながら話すエヴァ。昨晩ミアを戦闘不能にした時もそうだが、責められ慣れてないらしく、ボロが出るともろい子かもしれない。
「私は彼女にアドリアーナが姿を現したら彼を返すと言って連れて来た。アドリアーナがここに来たならタックを解放しても良いと思う。」
と黒鎧はトリィを見ながら言う。
「アナスタシア?あなた、彼をかつぐことに同意したじゃない?」
エヴァが言うと
「アドリアーナがここに来ないことが前提だ。これほど早く来ることは想定外だった。」
と黒鎧が答える。
「そうね、私たちがあれほど呼んでもここに来なかったのに、タックがいるとすぐ来るのね。姉と呼ばせてもよいと思うぐらいお気に入りの子だからかしら。」
ヴァレンティナも言葉をつづける。
『私はマスターが解放されたら付いていくから。』
ガブリエラは安定の懐きっぷりだ。
「じゃあ、タックを返してくれるのね。」
とそれまで黙って僕を見ていたトリィが、言う。
「約束通り解放しよう。ただし。」
と黒鎧はここで僕を向き、
「解放する前にタックも我々の仲間を解放してほしい。」
が言葉を続けた。
「「えっ、どういうこと?」」
トリィとアド姉の声がかぶる。
黒鎧がエヴァを見る。
一瞬、えっ?私から?と言わんばかりの顔をしたが、トリィに固有魔法の説明をすることになるので、自分で話した方が良いと判断したようだ。
「さっき話に出た、私がタックに使おうとした魔法は従属魔法って言う相手を従える魔法なんだけど・・・」
とエヴァが話を切り出す。
トリィは驚いた顔でエヴァを見、そして続けて僕を見る。
「かかってないから。」
と口パクで伝えたが、微妙な顔をしていた。
「私が使おうとした時にアナスタシアが止めたって言ったじゃない。」
エヴァがおさらいするようにアド姉とトリィに言う。
「その時に起動はしなかったんだけど魔法陣は浮かび上がってね。その魔法陣を目にしたとある優秀な魔道具士が好奇心からその魔法陣を再現して、魔力全開で起動させてしまったそうでね・・・」
「まさか、ターちゃん・・・」
とアド姉が僕を見る。信じたくない。と言った顔だ。
「この山に住むほぼ全員を従属させてしまったんだな、これが。」
とエヴァが言うとアド姉とトリィはほぼ同時に頭を抱えてしまった。




