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第064話 アルビノ

ストーリー上避けられない部分ではありますが、差別が発生している状況を不快に感じる方がおられるかもしれませんがご了承ください。

作者はこのような差別をなくしたいと考えており、主人公のタックもそのように動こうとしています。

 「処遇を決める前に一つ。食事も終わったのでガブリエラは仮面を付けても良いかな。」

 とエヴァンジェリンがこちらに確認する。

 「仮面付けてるのは僕に素顔を見せたくなかったからでは? もう見せてるので隠す必要はないと思うけど。」

 「報告や連絡のためにここに余人が来ることもある。なるべくガブリエラの特徴は見せたくない。」

 「こんなにきれいな白銀の毛なのに見せないんだ。もったいないね。」

 というとエヴァンジェリンは眉をひそめ、

 「君は|()()《はくじゅ》を知らないのか。」

 と聞いてくる。

 「白呪(はくじゅ)?」

 と首をかしげながら聞き返す。なんだそれ?知らん。

 いきなり話が脱線したが、エヴァンジェリンは白呪を簡単に説明してくれた。


 ・両親や祖先には誰もいない白い毛の子供が生まれてくる。

 ・体毛が白いだけでなく、眼も赤い。

 ・太陽に焼かれ、低度の火傷を負うこともある。

 ・太陽を信仰している種族ではその太陽に拒絶されたものとして()()と呼称され忌み嫌われている。


 最後の一つ以外はアルビノの人の特徴なんだが・・・

 「マスター。アルビノって何?」

 とガブリエラが僕を見ながら聞いてきた。思考漏れは継続中らしい。

 「よく覚えてないけど、メラニンという体の色素を形成する成分が足りない状態。目が赤いのは実際赤いのではなくて目の血管を流れている血の色で赤く見えるだけ。」

 「私は呪われてる子じゃないの?」

 「わからないことを呪いの一言で片づけてるだけだと思うよ。君は呪われていない。」

 と答えると、ガブリエラはその紅い瞳から大粒の涙を流し始めた。

 「あれ?泣かせてしまった?」

 と聞くと嗚咽するガブリエラに近づき、その肩をそっと抱きしめたヴァレンティナが、

 「泣かせたと言えば、泣かせたけどうれしくて泣いたのよ。」

 「うれしくて?」

 「生まれてからずっと”お前は呪われている。”と言われ続けてたことを、初めて理由も合わせてきちんと否定してくれる人が現れたからね。」

 とヴァレンティナが教えてくれる。

 「君は”よく覚えてないけど”と言ったが()()()()だの、()()()()だの、どこでその知識を得たんだ?私たちもいろいろ調べたんだが、そんな言葉はどこのどんな書籍にも記載はなかったんだが。」

 とエヴァンジェリンが僕に聞く。

 ウサギの目が赤いのは何故か?が気になったんだと思うけど、今世にウサギがいるのかどうかもわからんしなぁ・・・

 一角ウサギという物騒なウサギはいるがそいつの目は黒かった。


 それは前世の知識ですと正直に答えてよいものか・・・。あ、ガブリエラこれは口にするなよ。

 と漏れた思考を口にしないように心でつぶやくとヴァレンティナに頭をなでられていたガブリエラがこくりとうなづいた。

 が、僕に向けてうなづくところを他の3人にしっかりと見られてしまう。

 「魔力量が潤沢でどんな魔法も一目で覚えてしまう魔道具士と言う以外にも君には秘密がありそうだな。まあ仲間の悩みを解消してくれた代わりにそこは追及しないでおこう。」

 とニヤリと笑いながらエヴァンジェリンがそう言った。


 そこから僕の処遇を決めるために僕の事情聴取が始まる。

 ・ローデス商会で魔道具士として雇われ生計を立てていること

 ・最近レイスリン王国の貴族・男爵になったこと

 ・両親はミゼラ帝国にいて、父も最近ミゼラ帝国の貴族・子爵になったこと

 ・兄はオーグパイム司教領にいて、兄も最近オーグパイムの司教と結婚するすることになったこと

 ・兄の結婚式に出るためにミゼラ帝国経由でオーグパイム司教領に向かおうとしたところ同行したアド姉が原因でテムステイ山に寄ることになったこと(拉致されたという表現は使わなかった。)


 説明している途中で彼女たちの反応がおかしなところが3回ほどあった。

 「あなたは商会でどんな魔道具を作って売ってたの?」

 「空気中の水分を集めてシャワーを出す装置を作ってたよ。火魔法も組み合わせてお湯も出る。」

 と答えたらエヴァンジェリンの目が輝いたり、

 「あなたはレイスリン王国の貴族になったというと言うことだけど、どういうきっかけ?」

 「表向きには第一王女を暴漢から救った。」

 と答えたらアナスタシアとヴァレンティナが「ほう。」と漏らしたり、

 「アドリアーナ以外であなたと同行していたのはあなたの配下?」

 「1人を除いてはそうだね。メイドだったり護衛だったり。」

 「その1人は?」

 「僕の婚約者」

 と答えたらそれまでピクピクと動いていたガブリエラの耳が垂れたりだ。

 それぞれ何が彼女たちの琴線に触れたのかさっぱりわからない。


 「じゃあ、君の処遇を決める相談をするので部屋で待っててもらえないか。」

 と言われ部屋に戻る。

 エヴァンジェリンからは部屋で待っている間シャワーの魔道具をできるだけたくさん作ってほしいと言われた。あとは他に気になる魔法があっても勝手に実験しないようにと釘を刺される。

 昨晩の一件でずいぶんと危険人物認定されてしまったようだ。

 まあ自分の従属魔法を上書きしてしまう人間を危険視しないのもどうよって話だが。


 やれることが他にないので、言われた通りシャワーの魔道具を作成する。

 材料は部屋に引き上げる時にガブリエラが渡してくれた。

 2つ目を作り終わるころにドアがノックされる。

 どうやら僕の処遇が決まったようだ。

 「どうぞ。」

 と声をかけると、そこにはガブリエラが立っていた。

 トレイに飲み物を持っているのは別に良い。

 でもどうしてメイド姿なの?

 と声をかけるでもなく待っていると、()()()()()はこういった。

 「は、初めまして、私ガブリエラ様の部下のベラと申します。ガブリエラ様の命令でタック様のお世話を仰せつかりました。よろしくお願いします。」

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