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第030話 ダンス

 アニストン姉弟が僕の護衛に就いた翌日。僕はローラさんとの勉強会のために登城していた。


「じゃ、行ってくる。迎えは昼過ぎてからで良いから。」

 と王城の前まで馬車で送ってくれたミアに告げる。

「了解しました。ではお昼にお迎えにあがります。」

 とミアは応じ、入城まで待たなくて良いと言うと、馬車を商会に戻していった。


 トッドとヒビキを引き連れ、入城の手続きに向かおうとする。

 2人を学生時代同様愛称呼びしようとしたところトッドはOKだったが、ヒビキは”(側室候補の)誤解は避けたい”とヒビキのままになった。

「タック、こっちだ。」

 とトッドに言われ、これまでの商人用の入り口の隣にある別の入り口に連れていかれる。


「タック・タッキナルディ男爵とその護衛2名です。通過の許可をお願いします。」

 と勝手知ったるヒビキたちに手続きをまかせ問題なく入れてもらう。

 ローラ様の部屋までもヒビキたちは覚えているようでそのまま案内してもらった。


「会談(お勉強)中は俺たちは隣室に控えてるから。」

 トッドはそう告げ、僕だけがローラさんの部屋に入る。

 先日教わった挨拶を行い、今日は何を教わるのか聞いたところ、

「タックさんはダンスはできますか?」

 と聞かれた。

「できません。」

 と断言する。学校の授業でしたことはあるが、できると言ってはいけないレベルだった。

「実は来週、王家主催でパーティが行われることになったのですが、イニレ家の当主交代の話があるので私はどうしても出なければならなくて。」

「そうですか。」

 いやな予感はするが、話を聞くことにする。

 確か宰相さんはパーティとかには出なくてもよいと言ってたはずだ。

「私のエスコートをお願いしたいのです。」

「えっ?」

「父も兄もそれまでに自領に戻ってしまいますし、虫が・・・」

 本当、もう自然に会話に虫が入ってくるんですけど。

 よく見るとテーブルにいつか見たような紙束が再び積んである。

 封は切られているので、一応目は通されたようだ。

 読んだ上で僕に頼んでるということか・・・


「ベアトリクスにはちゃんと話してくださいね。あとダンスは勘弁してください。」

「大丈夫です。風魔法で動かして差し上げますから。そこに一緒にいていただければ。」

 ダンスは勘弁という僕の願いは聞いてもらえてない。

 大丈夫とは言わない。

 トリィが見たら嫌な気持になるだろう。立場を入れ替えて想像するといい。

 トリィが第一王子にエスコートされてダンスしてたら、と考えるだけで鬱になる。


「あくまで新しく貴族入りされた男爵を寄親として連れてきているという格好なので。」

 僕が相当ひどい顔をしていたのだろう。

 ローラさんが申し訳なさそうに口添えしてくれた。

「いえ、大丈夫ですよ。ローラさんが大変なのもわかりますから。」

 というとローラさんはうれしそうに微笑み小声で『ありがとうございます。』と言い、続けて

「あと、王が王女を救ったタックさんをみなに紹介したいみたいです。」

「紹介しなくてもいいんですけどねぇ。」

「手を出すなよ。と釘を刺しておきたいのもあるのだと思います。」

「こんな新任男爵、誰も気にしないでしょう。」

 と言うと、ローラさんは真顔になり、

「それが今回の件、結構貴族の間では話題になっているようでして。」

「そうなんですか。」

「はい、屋敷の謎の爆発とそのあとの騎士団突入で。そのあとの突然の当主交代ですから。」

「なるほど。」

 確かに。それは僕のせいだわ。

「さらに借金ありで有名だった男爵位を継いだ謎の魔道具士。少なくともお金持ちとは思われてますね。」

 ひどい誤解だ。これから一所懸命働かないといけないと言うのに。


「憂鬱ですね。」

 と口にすると、ローラさんも同意する。

「そうですね。一息ついてからお勉強開始しましょうか。」

「そうしましょう。」


 と何もしてないのにテンションが下がってしまったので、

 ローラさんがメイドさんに飲み物を準備するよう伝えた。


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