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第021話 催眠解除

「はい、できあがり。」


 筆がのった。という表現が正しいかどうかはわからないが、想定したよりも早い時間で魔法陣ができあがる。

 近くにいたおっさんと宰相さんは黙って僕の作業を見ていた。


「さて、検証となるのですが、いきなり王女で確認ということでよろしいですか。」

 王女の部屋の横で作業させたのだから、まさかリール氏で確認ということもないだろうが、念のため確認する。

「そうじゃな。お主の腕を信用しよう。」

 うなずくおっさん。宰相さんも特に異論はないらしい。

「ついてくるが良い。」

 と扉に向かうおっさん。僕も特に異論もないのでそのままついていく。

 見た通りのものを書いたのでこれで駄目なら自然回復を待つしかない。

 扉を開け、隣の部屋に入る。そこは大きな部屋で、真ん中にこの部屋に合わせたような大きめのベッドが置いてあった。

 ベッドの上には昨日から意識が戻っていないラナ王女が横たえられている。

 近くに控えていたご典医さんと看護師らしき数人がこちらを見て少し離れた。

 ご典医さんは昨日僕を見てくれた人だったので軽く会釈をする。


「どうじゃ、様子は。」

 とおっさんがご典医さんに確認する。

「変わりありません。脈も正常で呼吸もおだやかです。意識だけが戻らない状況です。」

 ご典医さんは僕が手にしている紙に目をやりながらおっさんの質問に淡々と答えていた。


「お主の仕事を増やすかもしれんが、試させてもらうぞ。」

「お決めになられたのであれば、異は唱えませぬ。ただ万一のために私も立ち会わせていただきたく。」

「うむ。それは余からも頼む。」


 おっさんの言葉にうなずき、後ろに控えていた看護師さんたちに合図を送るご典医さん。

 ご典医さんと看護師さんたちはベッドから離れ、壁際の方に移動した。

 いつのまにか部屋について来てたトリィたちの横に並ぶ格好だ。


 おっさんが僕の方を見てうなずく。

 始めて良いということだろう。

 紙を手にしたまま、ラナ王女の枕元に向かう。


 「では、始めます。」

 と言い、ラナ王女に向けた魔法陣にゆっくりと魔力を送る。

 魔法陣が光を放ち始める。

 昨日イニレ家邸宅で見た光と同じだ。


 だが、王女には変化があるようには見えない。

 十数秒ほど魔法陣を光らせてみたが、状況が変わる様子もないのであきらめようかと思った次の瞬間、王女がゆっくりと目を開けた。


 「ラナ!」

 「ラナ様!」


 とおっさんとお付きの方、ご典医さんたちが駆け寄る。

 慌てて魔法陣に魔力を送るのを止め、下に向ける。新しく被害者が増えても困るのである。


 おっさん達が声をかけるが、ラナ王女が反応する様子がない。

 王女を見ていたご典医さんがこちらを向き


 「意識は戻られたようだが、催眠魔法がかかった状態のままのようだ。それでこれも解除できんかね?」


 と魔道具を見ながら言う。

 催眠がかかったまま?と言われ魔道具を壊す直前のことを思い出す。あの時モルガンは王女に何と言った?


 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 モルガンのセリフを思い出す。それに対してラナ様は


 ()()()()()


 と答え、話を待っている状態になった。

 そのあとに魔道具をぶっ壊したので、おそらくラナ王女は話を待っている状態ではなかろうか。


 「もう一度試させてもらってよろしいですか。」


 とご典医さんから状況の説明を受けていたおっさんに話かける。

 おっさんはご典医さんにちらりと目をやると、こちらを向いてうなづいた。


 試す前に看護師さんにお願いしてラナ王女の枕元にクッションを重ねてもらい、半身を起こした状態にしてもらう。そして再度魔法陣を向けるため、ラナ王女の背後に人がいない状態にしたもらった。


 「では、始めます。」


 焦点の合わない目でこちらを見ているラナ王女に魔法陣を向け、再度魔力をこめる。


 ”()”をモルガンと認識しているのか、魔道具を持った者と認識しているかで結果が違いそうなので、確率は五分五分だがやらないよりかはマシだろう。


 「引き続き王族としての責務をきちんとお果たし下さい。ラナ王女。私からの話は以上です。」

 少しだけ考えた結果。()()はこうすることにした。

 自分の能力に自信があるのかもしれないが、好奇心で動くと今回のように危険な目にあうこともあるだろう。

 このお願いであれば、振り回される人も減ろうというものだ。


 まあ、これはうまくいったらの話だ。

 魔力供給をとめ、魔法陣を書いた紙をたたむ。


 全員でラナ王女を見守ること数秒。突然、目をしばたかせたかと思うと、正面にいた僕を見て


 「タックではないか。私の部屋で何をしている?」


 と何事もなかったかのように、いつもの口調で言った。

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