第103話 ダメ男認定
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皇女様ご乱心。というわけではないだろうが、突然婚約宣言をしたジリオンを周囲のものが引き止め、一旦解散し話は改めて明日のグリフィス辺境伯領でということになった。
解散となったが部屋の片隅から父さんと母さんが僕を手招きしているのを見て、そちらに向かう。
「側室持つなんて、いつ決めたんだ?」
「・・・き、昨日かな。」
その前からアプローチは受けていたが。正式に決まったのはそこのはずだ。
「帝国貴族なんだから、婚姻関係は一応報告が必要だ。急な叙爵だったので俺のところに婚姻関係の確認の話が来たが、トリィちゃんのことしか話してないぞ。なんで4人も急に増えたんだ?アドリアーナも入れたら5人か。」
「いや、5人というか。ここにいないけどあと3人いる。」
部屋で待ってるミアと、あとアナスタシアさんとヴァレンティナさんもそうらしいし。
でも2人はエヴァから聞いただけで直接確認はしてないんだよね・・・
「「は?」」
と父さんと母さんが声をそろえ、同時に額に手をやる。
あきれられてる?
「思い切り政権争いに巻き込まれてないか?」
「政権争いとは関係ないと思う。半分は僕がテムステイ山を制圧する前からアプローチされてたし。」
「人気者なのは結構だが、ちゃんとしないと刺されるぞ。」
「トリィちゃんは納得してるんでしょうね。」
父母が僕を心配しているいろいろ言ってくる。
トリィが一番だし、トリィも納得している旨を伝えると疑いの目は向けられるものの、追及は収まった。
「それよりもジルはどこまで本気なんだろう?」
「結構まじめに本気だ。お前はどこで思わせぶりなことを言ったんだ。」
「いや、さっき会う時までジルを男だと思ってたのに、どこでフラグが立ったかなんて覚えてないよ。それよりなんで皇女殿下を一商人があずかってんのさ?」
「しょうがないだろう。あずかって商売のことを教えるか財務卿になって仕事手伝うかの2択を迫られてだな・・・」
「父さん、陛下に何か弱み握られてるの?」
「そういうわけじゃない。帝立学校で同級生だった時からの腐れ縁だ。」
「そんな縁断ち切りなよ。」
「それはもう母さんがずっと前から言ってるんだけどね。」
と母さんが口をはさんでくる。
「いや、もうそれはわかってる。でもいろいろ便宜も図ってもらってるから持ちつ持たれつなんだ。それより今はジリオン皇女の件だ。」
と無理やり話を戻す父さん。
「少なくとも今、帝国の学校は魔法使えなくても卒業できるようになってるし、子供のいないとある伯爵家と交渉してお前を養子にしようと画策するぐらいにはお前に執着はある。今回もロッコの結婚式にかこつけてお前がここに寄るのを手ぐすね引いて待ってたみたいだ。今回の婚姻の件はいったん口にした以上簡単には引き下がらんし、何より3国のバランスをとるという大義名分を見つけてしまったから、断るなり代替案出すなり早めにしないとどんどん話を進めていくぞ。」
マジか。
「わかった。ちょっとみんなと相談するよ。」
そう言って父さんたちと別れて、トリィ達の所に戻る。
待ち構えていたトリィ達に早速拘束されて、部屋に連れていかれた。
◇◇◇◇◇
「ジリオンさん?だっけ。あの人との関係を簡潔に述べなさい。」
と僕を見下ろすようにトリィが腰に手をあてて聞いてくる。
僕はなぜか壁を背にして床に正座させられている。
左からローラさん、ガブリエラ、トリィ、ミア、エヴァ、ヒビキと半円を描くように僕を囲んでいる。
ブルックリンとステラ、リッキーには馬車番を命じている。
何かあったら周辺にいる皇家関係の方々に助けを求めろと言ってある。
まあ、皇族関係者が近くにいるところでユニコーンに悪さしようとする人もおらんだろう。
下手をすれば帝国を敵に回すことになるのだから。
いや、3人のことはどうでもいい。
今は僕のことだ。なぜこのような危機的状況になっているのだろう。
ガブリエラはまあいい。いつもどおりニコニコ笑顔のままだ。
エヴァはさすが主殿じゃ。となぜか感心していた。
ミアとヒビキは達観したような顔をしている。
問題は感情が消えた能面のような顔をしているトリィとローラさんだ。
「ジルは帝国に住んでた時の幼馴染だよ。」
「私が遊びに行ったときに会ったことないけど?!」
「いや、2年に1度くらい、2か月ほど泊りがけで遊びに来てて、トリィが遊びに来る時とタイミングがずれてたから・・・」
「泊りがけ? 2か月も? あんな美人が泊まりに来ててさぞ楽しかったでしょうね。」
「いや、その時は髪も短かくしてて、ズボン履いてて男の子だとばかり思ってたんだよ。」
「そんな友達がいるなんて聞いてない。」
「いや、会うなら紹介するけど、会えない友達紹介してもしょうがないでしょ。」
こんな友達がいるんだぜ。今いないけど。そんな話をして何が楽しいというのか。
遠くから友達が来てるところで地元のほかの友達の話をすれば、”じゃあその子と遊べば”となるに決まっているじゃないか。
だがトリィはご不満らしい。何故だ。
「ジリオン皇女がいるなら、私いりませんね。」
ローラさんもローラさんで謎なことを言い出した。
「ローラさん、そんなことないですよ。僕にはローラさんの助けが必要です。」
「ジリオン皇女は帝国は次代も安泰と言わしめるほどの逸材ですよ。タックさんの相談役にもってこいじゃないですか。」
へー、ジルってすごいんだな・・・
「いや、テムステイ山のことは相談に乗ってくれるかもしれないですけど、ジルは王国との交渉ごとの相談まで乗ってくれないと思いますよ。仮に乗ってくれたとしてもその助言が王国のためかどうかは判断つかないでしょ?違う視点を持った人は必要だと思いますけど。」
「・・・そうやってすぐ言葉巧みに人をたぶらかそうとする・・・」
ジルはジルで立場があるから、僕の側室になんて入らないと思うんだけどなぁ・・・
でもローラさんは自分は必要なくなったと思ってしまったらしい。何故だ。
残る4人も僕を目の前にして、
「何人いてもいいと思う。私はマスターから離れないから。」
とぶれないガブリエラ。
「英雄色を好むというからな。主殿の周りがメスだらけになっても私は気にしないぞ。」
メスって言うなエヴァ。ん?でも龍だから男女じゃなくてオスメス表現は正しいのか?
「せっかくヒヒ爺の魔の手から逃れたのに・・・ 私男運悪いのかしら・・・」
というヒビキ。それだと僕がろくでもない男前提なんだが。
「お母さん、私も旦那で苦労しそうです。」
とつぶやくミア。それだと僕が女房に苦労ばかりかけるダメ旦那前提なんだが。
こんな感じでみんなそれぞれだ。
ジルの申し出をどう逸らすかを相談したかったんだけど、それどころではないっぽい。
みんなからいろんなところで女の子に粉をかけるダメな男認定されてる気がする。
仕方ない。明日の移動の馬車の中で落ち着いたころに話をしよう。
そう割り切ることにした僕だった。
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