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第099話 側室?

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 私を妻の一人として紹介してください。

 あっさりとローラさんはそう言った。

 「ローラさん!」

 と思わず声が高くなる。

 「なんでしょう。タックさん。」

 「それ以外手はないんですか?」

 「私以外に同席してても問題なくて、政治的助言ができる人がいるなら、侯爵と交渉はできると思います。」

 「ローラさんと同程度?」

 もともとローラさんは第一王子(オーウェン)が降家したときの内政・外交をまかされようとしたぐらいの人だ。それこそ宰相さんぐらいしか思いつかない。

 「あとできそうな人に心当たりがないこともないですが。」

 とローラさんが助言してくれる。自分を妻の一人に入れてもらうことが目的というわけでもないらしい。

 「誰ですか?」

 と聞くと、

 「私の兄ですわ。今形式上無官なので、タッキナルディ家で雇ったものとして傍にいさせても問題ないでしょう。」

 とローラさんが言い渋ることもなくあっさり言う。

 リールさんか・・・、あの人も優秀だと思うが、洗脳からの病み上がりだし、何よりかによりローラさんとの結婚を押している人だ。助けを求めても”ローラがいるでしょう。”となりかねない。

 時間がない中手紙一つ二つで協力を求められるとも思えなかった。


 腕を組み、打てる手を考え出した僕に対して、

 「いいわよ、タック。ローラさんを奥さんの1人として紹介しても。」

 と隣に座っていたトリィが口にする。

 「えっ、どういう心境の変化?」

 と僕が口にする。

 「タックはテムステイ山の人たちを助けたいんでしょう。」

 「うん。できることなら。」

 「アナスタシアさんをエルフに差し出したり、ガブリエラちゃんを獣人に返したりもしないんでしょ。」

 「本人が望まない限りは。」

 「ローラさんのこと嫌いじゃないでしょ。」

 「嫌いじゃない。むしろ美人で頼りになるから好きだよ。」

 「嫌いか嫌いじゃないかで答えなさい。」

 「はい。嫌いじゃないです。」

 ここでトリィは少し黙る。同席しているほかのメンバーも黙って話の行く末を見守っているようだ。

 「・・・私が一番でしょ。」

 「はい。トリィが一番です。」

 「それが確認できればいいわ。」

 「我慢とかしてない?」

 「うーん、我慢といえば、我慢かもしれないけど、私のためにタックがいろいろ困ったり悩んだりするのも嫌なのよ。」

 「僕は僕のわがままのために、トリィが我慢したりするのは嫌なんだけど。」

 と正直に話す。

 

 ここでローラさんが笑い始めた。

 「トリィさんが1番なのは変わりそうにないですね。私は3番でいいですわ。」

 「3番?」

 「2番はアドリアーナさんでしょう?」

 と言われハッとする。アド姉の件もあいまいなままだ。真意を確認しないと。

 このまま第2婦人になると大っぴらになると母さんたちが何を言うか。

 「4番以降は私たちで決めてよいのだよな。」

 とここでエヴァも口を出す。いつのまにかガブリエラもテーブルの横に立っていた。

 「エヴァさん、それなんですが、ここのヒビキとも相談していただけませんか。あと今買い物に行ってるミアちゃんも。」

 とここでローラさんが再度爆弾発言をする。

 「ろ、ローラ様、私は。」

 と真っ赤になるヒビキ。

 「あら、いいんですか?ボヤーキ(あなたのお父)さんも反対しないと思いますけど。それともほかに思いを寄せてる方でもいるんですか?」

 「いえ、そういう人はいませんが。」

 「トリィさんのことを気にしているのであれば、大丈夫でしょう。これ以上増えるなら問題あるかもしれませんが、いったんタックさんのふところに入った人を追い出すとも思えませんし。」

 「ト、トリィはいいの?」

 とおずおずとヒビキがトリィに聞く。

 「嫌と言えば嫌よ。でも1人が2人にならまだしも6,7人いるのにさらに1人増えてもって思うし、タックの側室を考えるのならヒビキは良い選択肢だわ。」

 とトリィが質問に答え、

 「そうですわね。損得で近づいているわけでもないですし、タックさんを尊敬してますし、より寵愛を受けようとして和を乱すような野心もないいい子です。」

 とローラさんも補足する。ヒビキはほめられてるのか?と疑問に思うが、僕は口にしない。

 こういう時は口を出さない方がよい。どんな言質を取られるかわかったもんじゃない。

 とりあえず落ち着いたようで何よりだ。

 侯爵との会談もローラさん同席ということで問題なく行けるだろう。


 ローラさんはいつのまにか手にしていた紙を手早く封にすると、護衛の1人にそれを渡した。

 受け取った護衛は一礼して部屋を出ていく。


 「ローラさん、あれは?」

 「ああ、あれですか、王へのお手紙です。第一王子の婚姻まとめましたという連絡です。」

 「そうですか、早いですね。」

 「併せて、わたくしがタックさんと婚姻結びましたという連絡も。」

 「ええ?今決まったことですよ?」

 「はい、でもタックさんが陞爵(しょうしゃく)されると分かったタイミングで、寄親寄子は見直されるとわかってましたので。何かしらの理由をつけて私をタックさんの妻にしていただこうと思ってたんですよ。王国からの情報が今の時点で入ってきたのは私にとっては好都合でした。」

 「反対意見があるってわかってたんですか?」

 「ええ、大公はわかりませんでしたが、ムーンオーバー侯爵は難癖つけてくると思ってました。」

 「難癖?奴隷を返せということですか?」

 「はい、逃亡奴隷と一口に言っても所有権がどこにあるかなんてわからないですもの。所有者が死んでる場合もありますし、2回以上逃げ出してる場合は、どっちに所有権があるかなんてわからないでしょう?」

 「確かに。ではなんで侯爵はそんな言いがかりを?」

 「言いがかりを取り下げる代わりにテムステイ山からムーンオーバー侯爵領を通る航路も作れと要望するのでしょうね。」

 「航路?」

 「だって今のままだとテムステイ山とアニストン領を結ぶ航路しかひかれないでしょう。そしたら貿易による旨味も通行料もムーンオーバー侯爵領には入ってこないじゃないですか。」

 「はー、貴族って怖いですね。あとそんなこともあるかもと思って準備万端だったローラさんも怖いです。」

 「あら、味方だと思えば怖くないでしょう。」

 とローラさんはにこりと笑う。こういう人ほど怒らすと怖い。

 「・・・そうですね。敵には回さないように気を付けます。」

 「そう思って大事にしていただけるとうれしいですわ。」

 とローラさんは艶然とほほ笑むのだった。  


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