うちなしとわ②
野球部のユニフォームの中に見慣れない格好の人が一人。白い群れの中に真っ黒のジャージ姿。四月とは言えこの日差しの中その格好は見ている側がつらいと思うんだ……内梨翔和。
遠くで白球を追いかけながらチームメイトとコミュニケーションをとっている。
スポーツは体を動かし同じことをすることで親密度が上がりやすい。とは聞くが、今日転校してきてさっそく部活に参加してあの雰囲気……単純に彼のコミュ力が高いんだと思った。
「いきなり私に突っかかってくるぐらいだもんな」
私はなんとなく彼を目で追っていた。
彼は必死に白球を追いかけていた。汗を拭う動作をしながら何か掛け声を発していて、その声が私の耳にまで届いた。同じポジションのメンバーと会話をしコミュニケーションをとっている。
「楽しそう」
思わず口に出た言葉に自分が驚いた。私は彼を見て楽しそうだと感じていた。
現に楽しそうに練習をしている。キラキラしている。
たぶんあの輝きは私にはないなぁ。なんて思って少し悲しくなった。
抱えた膝に顔をうずめてそっと目を閉じた。
私もあんな風に……
「集合!」
ハッとして目を見開き首を上げる。視界がまぶしく感じ視界の真正面、黒のジャージの彼と目があった気がした。慌てて目をそらし集合場所へと向かった。