うちなしとわ①
まだ四月だというのに今日の日差しは容赦がない。私はインドアなかつみがこの日差しに耐えて無事帰宅できたかを少し心配していた。
「アップできた?」
キャプテンである先輩から声をかけられた。
「ばっちりです!いつでもいけます」
「よしいい感じに気合入ってるね。昨日監督にいい感じに絞られてたから今日のモチベーションはあんまりかと思ったが……心配しすぎだったか?」
「先輩……ありがとうございます!親友が、助けてくれました」
「持つべきものは、だな」
先輩はにっと口角を上げ振り返る。手を叩いて部員の注意を集めた。
「それじゃ各自種目に分かれて練習開始!いつも通り、怪我には十分注意するように」
開始の合図はいつもこの言葉と決まっている。が、今日は一言付け足された。
「ちなみに新入生の見学は来週からになっているが各自、浮かれて怪我しないように!」
またも口角を上げて先輩は自分の持ち場へ移動していった。
先輩は頼りがいがあって皆をしっかりまとめる理想的なキャプテンだ。この名門と呼ばれる陸上部の精神的支柱と言っても過言ではない。そんなキャプテンを理想に思い、尊敬の念を抱いている。
柊結。彼女を尊敬する人間は少なくない。が、こと恋愛においては不器用極まりないことを知っている人は多くはないだろう。
私は幅跳びの練習スペースに移動し、いつものメニューをこなす。
日差しが強く昨日より疲労感が強く感じる。日差しのせいか、ほかに何かあるのか、なんて考えながら休憩のタイミングとなった。
グラウンドを見渡せる陰で休憩をとっていると、やはりまだ四月だなということを実感しつつグラウンドに目をやった。休憩場から対角に位置する野球部の練習場所を何気なく眺めていると、なにか違和感を感じた。
「ん?あれって」