あつもりかつみ①
「ふぁ~……今日も午前中だけってラッキーすぎる」
かつみんはあくびをしながら幸運を喜んでいた。
「帰ってお昼寝?それとも夜中までネトゲ?」
ちなみに私はしっかり部活動が待っている。うらやましくないと言ったら嘘だろうと思う。好きなことして生きるって言うのはきっと幸せだ。陸上が嫌なわけじゃない。自ら望んでそこにいるのか、もしくはいたのかが大事で、流されるようにその場に立つ私はある種の反逆者なんじゃないかと感じていることもあった。
そしたら、彼は私の心の壁をいとも簡単にすり抜けて土足どころかスパイクでずかずかと、いや、ザクザクと踏み込んできたわけだ。
なんでわかったのかな?
「今日の夜はレイド戦があるからね、体力を蓄えるためにお昼寝だよ」
鼻からンフー!と蒸気が見えた気がするほど気合が入っている。すごい熱量だ。
そういえば彼の熱量もほとばしっていたな。
「レイド?ちょっとわかんないけど、頑張ってね」
「みなこもしなよ!ネトゲ!楽しいよ?」
「無理無理、部活で体力使い切ってそんな余裕なし」
「そっかぁ」
「まぁ、でも、そうだな、今度教えてもらおうかな?」
かつみの返事が寂しそうでつい口に出してしまった。ただ、かつみはその言葉に満面の笑みで返してくれた。その笑顔を見ているとこっちまでうれしくなってくる。
「ありがとう。みなこは優しいね」
「……?」
私はその言葉を理解できぬまま笑顔で疑問符を投げかけていた。
「そういえばみなこ何かあったの?」
かつみは疑問符については触れず、代わりに疑問を投げかけてきた。