いつもの景色
私の名前は高峰みなこ。どこにでもいる女子高生だ。俗に言うJKというやつだな。高校に通いだして一年、今日から二年生だ。一年生の時にも毎日のように通ったこの坂道を二年生も登るのだ。今日は雲ひとつない青空で桜の木も笑っている様だ。
「おはよー」
私は自分の席に座り隣の席の敦盛かつみに声をかけた。
「はよぅ」
かつみはやる気のない挨拶にあくび付で返事をしてくれた。
「かつみくん?今日も眠そうだね、新学期前日に夜更かしでもしたのかい?」
「うん~、夜更かしってほどではないんだけど、いつもしてるゲームがちょっと盛り上がっちゃって」
かつみは基本眠そうなしゃべり方をする。しゃべっているのかむにゃむにゃいっているのかわからないときもちらほら。
「かつみくん、何時まで起きてたんだい?」
「……三時」
「さ、三時!?」
忘れていた、かつみの夜更かしの概念は我ら一般市民とはステージが違うのだっ
た。
「かつみくん、われわれの世界ではそれで充分夜更かしと呼ぶのだよ」
ちなみにかつみの夜更かしは日が昇り始める辺りである。なんなら、徹夜で来ていることも多い。完全に昼夜逆転の状態になっているが、この子の凄いところは無遅刻無欠席無早退と言うところだ。真面目なのか不真面目なのかよく分からない。
「だってぇ、ゲーム面白いんだもん、共闘系は一番テンション上がるよね!最近ボイチャが実装されてよりコミュがとりやすくなったし最近始めたRPGのストーリー展開はまじでハリウッドレベルだと思うしそのくせバトルシーンにも手抜きを感じられないんだよそもそも……」
どこで息継ぎをしているのか、かつみはゲームについて熱く語っていた。後半は専門用語多くてよくわからなかった。まだまだ終わらない感じだったが私は会話の途切れる一瞬を見逃さない。
「かつみくん、それだけ熱中できるってのは素晴らしいことだよ」
ちなみに、名前をくん呼びで会話をする教授コントは私のお気に入りである。が、割と序盤で元に戻るのは通例だ。
「え?いや、それを言うならみなこも部活への熱量はんぱないじゃん」
「……それとこれとはちょっとベクトルが違うなかなぁ」
本心であった。好きなものに熱中するかつみと私の部活とでは見た目は同じでも本質的なところは違っているんだろうと思っている。かつみは同じだよぉと言って笑っていた。私は苦笑いだった。
始業式を終え、教室に戻り午前中はホームルームとなっている。
最後に皆の興味をそそるお知らせがあった。
「明日から転校生が来ます。明日紹介するのでよろしくお願いします。それではまた明日」
HRを終え転校生だってさなどとざわつく教室に隣で突っ伏しているいつもの光景と転校生かぁと思いつつ部活へ向かう私がいた。