クラス内での順位決めの模擬戦①
「次、黒霧対萩原だ」
「「はい」」
今、僕はCクラスの生徒と模擬戦をしていた。もうこれで3試合目だ。そして何故僕が模擬戦をしているかについては、数時間前の朝のホームルームにまで遡る。
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「今日の午前の授業は変更で、お前達Cクラスはトーナメント方式で模擬戦をしてもらう」
チームを決めた数日後の朝のホームルームで、速水先生がいきなりそんな事を言い出した。
「模擬戦ですか?」
「そうだ。何故模擬戦をさせるかについては、このクラス内での強さの順序を決める為だ。クラス内で順序が分かれば、それだけで刺激になる。つまり順序が下の者が上へ行こうとして、順序が上の者は下の奴らに抜かれない様にする事で、クラス全体が強くなる様にするという事だ」
なる程、つまり1人で強くなっていくよりも、他の人と競い合った方がより強くなれると考えたのだろう。
「その為今日の授業は中止し、午前から模擬戦をするので、着替えた者から体育館に集合しろ」
こんな感じで僕達、Cクラスは模擬戦をする事になったのだ。
そして時間が経ち、現在の3試合目と言う訳だ。
また、Cクラスの人数は54人と少し多い為、Cクラスは27人数ずつの2組に分けられている。
これを学園では、Cー1、Cー2と言った風に呼んでいる。因みに常夜はCー1の方だ。
そしてこの人数で模擬戦をトーナメント方式で模擬戦をすれば、シードを抜いて6試合勝てば優勝出来る。
因みに僕の1試合目と2試合目は、1試合目の相手の異能が対象の動きを遅くする異能で、相手を遅くして攻撃する戦い方だったが、僕は生体超強化の異能で身体能力が上がっている為、効果が薄く簡単に勝つ事が出来た。
そして2試合目の相手は、異能が対象の思考を読む異能で、下手をしたら隠密者と絶死眼の異能がバレる危険もあるので、これからは注意が必要だ。因みに2試合目は、思考が読まれても、僕のスピードについて行けずに、相手が降参した。
また昨日決めた僕以外のチームの人は、暁斎は相手が防御を抜けないのは勿論として、櫛見さんも無事に3試合目に行った。まぁ、これは異能や技術的に考えれば当たり前だろう。因みに星野さんは、戦闘能力が無いため1試合目に棄権した。
「よし、両者準備は良いな」
「はい」 「大丈夫です」
「では3試合目、開始だ!」
そしてこうして僕の3試合目が始まった。
3試合目の相手は、前の試合を見た限りだと、水を操る後衛方の異能だったが、他にも異能があるかもしれないので、迂闊に攻撃出来ない。
そして先に動いたのは、相手だった。
相手は、持っていたペットボトルの水を薄く伸ばして、カッターの様にして飛ばして来た。
それを僕はサイドステップで躱し、今度は僕から攻撃に出る為に相手に近付く。
すると、今度はペットボトルの水を球状にして沢山とばして来た。僕はそれを上手く躱しながら相手に近付いて行く。
また相手はペットボトルの水を使っている為、恐らく水を操る事は出来ても、水を創り出す事は出来ないのだろう。
そして遂に僕が相手の目の前に来ると、相手は水を盾の様にして自分を守ろうするが、僕は相手の背後に回って首に短剣を突き付ける。
「そこまで、勝者黒霧」
「ありがとうございました」
これで3試合目も勝利だ。
それにしても、僕が思っていたよりも相手が弱い。Cクラスがこの強さならBクラスでも通じると思う。
まぁ偶々僕が戦った相手が弱かっただけの可能性もあるし、決めつけるの良くないだろう。
「黒霧君、お疲れ様」
「流石だね」
「随分余裕そうだったな」
僕が3試合目が終わった後、皆の元に戻ると、それぞれの声を掛けられる。
「うん、このくらいなら全然問題ないよ。それにこれなら暁斎でも余裕でしょ」
「まぁ、さっきの水の攻撃なら全く問題ないな」
「当たり前だよ。そもそもあんな防御を破れる人なんてCクラスにはいないよ」
というかCクラスだけじゃなくて、Bクラスでもいるか怪しいのだが····。
「確かにあれは反則よね」
「はい、反則です」
「おいおい、皆酷くねーか?それを言うなら常夜だって、十分反則だろう」
「いや、僕は身体能力が高いだけだし、後は技術で補っているだけだから、反則なんて言われても困るよ」
本当は思考速度や感覚も強化されるのだが、女子の2人はまだ気付いていないようなので黙っておこう。それに僕の生体超強化の異能は、感覚が鋭くなる分デメリットも増える為、いい事だけではない。
「その身体能力が反則なんだよ!お前の技術をあんな身体能力で出されたら、殆どの奴は対応できねーよ!」
「確かにあたしじゃ、あれは対処出来ないわね」
「だよな、俺は盾があるからなんとか対処出来るけど、それでも勝てる気が全くしないんだよ」
「それってもう、Cクラスの強さじゃないって事ですか?」
「そうだな。常夜、お前試験の時に手を抜いたんじゃないよな?」
「あ〜その、試験時に暫く戦った後に、更に身体能力を上げようとしたら、上げる前に先生が中断しちゃって、本気を出す前に終わったんだよ」
「なんか常夜ってしっかりしてそうに見えて、意外とドジだよな」
「ドジって言うより天然の方がしっくり来るわ」
「そうですね」
自分では結構しっかりしてると思っているのだが、僕ってそんなにドジだろうか?
でも良く思い返してみれば、少しドジな所もあったかもしれない。
「次、櫛見対笠松だ」
すると、何処かからそんな声が聞こえてきた。
どうやら思ったより話込んでしまい、時間が経っていたらしい。
「あっ!朱里ちゃん、試合呼ばれてるよ」
「えっ!?もうそんな時間なの?じゃあ、少し行ってくるわ」
「頑張ってこいよ」
「当たり前よ」
そしてそう言って、櫛見さんは出て行った。
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side 櫛見 朱里
今あたしの前には大きな巨体を持つ、ガラの悪そうな男子が居た。
そしてその手にはあたしの身長程ある、大きな斧を持っている。
今から始まるのは、クラスで強さの順位を決める為の模擬戦の3試合目。
そしてこの模擬戦勝つ事が出来れば、Cクラスでベスト8になる事が出来る。
「両者、準備は良いな?」
「はい」 「良いぜ」
「では、始め!」
そしてあたしの3試合目が始まった。
まず、あたしは試合開始と同時に異能で分身を創り出す。
そしてその手にはあたしと同じ刀を鞘ごと持っている。
またその分身の身体能力は本体と同じだが、デメリットとしてダメージも共有になってる為、分身でも攻撃を受ける事は出来ない。
始めに動き出したのは相手だった。
そして相手は大きな斧をあたしに振り落として来たが、あたしはそれをバックステップで躱すと、相手はそのまま斧を地面に振り落としす。
そして次の瞬間、その斧が振り落とされた地面が陥没する。
さっきも思ったが、あの大きな斧を振り回せるのは自分の腕力ではなく、異能によって強化されている様だ。
またスピードは変わっていない事から、腕力だけの強化だと思われるが、その分強化が強いのだろう。
先程は斧の威力に驚き反撃出来なかったが、今度は相手が振り落として来た斧を躱し、カウンターで刀を相手に向かって振るう。
しかし相手は斧の柄で私の刀を受け止める。
普通ならあの腕力なら受け止める事は簡単だろう。
キンキンッ
「うごお!」
しかし一度しか攻撃していない筈が、何故か2度当たる音がして相手は体勢を崩す。
これはあたしの追加攻撃の異能の効果による攻撃だ。
そしてあたしは相手が体勢を崩したその隙を見逃さず、分身と同時に攻撃する。
相手はなんとかその攻撃を防ごうとするが、あたしの攻撃を止められても、分身の攻撃は止める事が出来ず攻撃が被弾し、相手の意識を奪う。
「そこまで、勝者櫛見!」
こうしてあたしの3試合目が終了した。
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「お疲れ様、櫛見さん」
そう言って、僕は飲み物を渡す。
「ええ、ありがとう」
櫛見さんの3試合目は、最初は相手の攻撃の威力に驚いていた様だが、それからは一方的な戦いで終わった。
特に櫛見さんの追加攻撃の異能は強力だ。
もし櫛見さんとあたったなら、相当面倒そうだ。
「櫛見さんも、結構余裕そうだったね」
「そうでもないわ、あの攻撃が当たっていたらやばかったと思う」
「当たったらね。櫛見さんならあんな攻撃、まず当たらないと思うけどね。それに刀の扱いも上手かったし、何処かで習ったの?」
「あたしの家が抜刀術の道場をやっていたから、私も習っていたのよ」
「なる程。でもこれで櫛見さんもベスト8に入ったね」
「ええ、それに堅木君は、まず確定でしょね」
「そうだね」
「そういえば、堅木君と夢は?」
「暁斎は櫛見さんと入れ違いで試合で、星野さんはその応援だよ」
「なる程ね、じゃああたし達も見に行きましょ」
「そうだね」
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「あら、もう終わった見たいね」
そして僕達が暁斎の試合を見に行くと、丁度試合が終わる所だった。
「星野さん、暁斎の試合どうだった?」
「はい、堅木君が攻撃を盾で弾いて、その隙に攻撃してすぐに終わりました」
「まぁ、予想通りね」
「うん、相手が物理系なら、暁斎にまず負けはないね」
「う〜、なんかチームで私だけ役立たずですね」
「星野さんは異能が補助系だから仕方ないよ。それに星野さんの真価はチーム戦で発揮するから、なんの問題もないよ」
「でも、私も何かお役に立ちたいです」
「じゃあ、遠距離で攻撃出来る武器を使えば良いんじゃないか?」
すると試合が終わり戻って来た暁斎が、そんな事を言って来た。
「遠距離で攻撃出来る武器ですか?」
「ああ、流石に銃は無理だけど、弓とかなら行けるんじゃねーか?さっきも弓を使ってる奴がいたし」
「···そうですね、分かりました。私を武器を弓にして、皆さんを援護します」
「本当に大丈夫?無理はしなくて良いんだよ?」
「はい、大丈夫です。上手くなるのに時間は掛かると思いますが頑張ります」
どうやらもう自分の中ではやる気の様だ。それに戦闘技術を身に着けて損はないし、ここまでやる気なら止める必要もないだろう。
「それにしても、これで3人ともベスト8決定ね」
「ああ、この調子なら上位を独占出来るんじゃないか?」
「いや、それは分からないよ。多分だけど僕の予想では次はチームで当たると思う」
「えっ、なんでですか?」
「それは、さっき暁斎が言った1つのチームに上位を独占させないためだよ」
「次、黒霧対堅木だ」
そして僕がそう言ったのと、先生の声が聴こえたのは同時だった。
「当たりみたいだね」
こうして、僕は4試合目で暁斎と当たる事になったのだった。