チーム結成
「暁斎、やっと学園が本格的に始まるよ。楽しみだね!」
月曜日になって遂に本格的に学園での生活が始まる日になり、準備をした僕は校舎に移動しながらそう言う。
「そうか?授業なんて面倒なだけだと思うけどな。まぁ、それでも、常夜にとっては楽しみなんだろうけどな」
「それはそうだよ。授業なんて今まで受けた事ないんだから!それに自分が知らない知識を教えてもらえるなんて最高だよ!」
「常夜って意外と知識欲が深いんだな。俺はあんまり勉強は好きじゃないからな。俺の場合、午後の戦闘訓練の方が楽しみだわ」
「あはは、戦闘が楽しみなんて、暁斎ってもしかして戦闘狂?」
「違うわ。いや戦闘は確かに嫌いじゃないけどな。それに誰だって強くなれるなら、なりたいだろ?常夜の知識欲と同じ様なもんだよ」
「なる程、なんとなく分かったよ」
でもやっぱり暁斎は戦闘狂だと思うのは気のせいだろうか?
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僕達が教室に着いて中に入ると、既に星野が来ていた。
「あっ、星野さんおはよう。僕達は結構早く来たつもりだったのに星野早いね」
「おはようございます。それに私が早いのは偶々ですよ。堅木君もおはようございます」
「おう、おはよう、星野さん」
「へぇ〜、貴方が夢が言ってた黒霧君ね」
すると、急に星野さんの隣から女の子が話し掛けて来た。
「あっ、紹介しますね。こちら私の寮ルームメイトになった櫛見 朱里ちゃんです」
「櫛見 朱里よ。夢共々よろしくね」
「うん、よろしくお願いするよ、櫛見さん。僕は、黒霧 常夜です」
「夢から話は聞いてるわよ。それにしても凄く女の子みたいなのに、本当に男の子なのね」
「うっ、···女の子·····」
「あー、えっと櫛見さんだっけ?常夜は自分が女顔なのがコンプレックスらしいから触れないで置いてくれ。それと俺は堅木 暁斎だ。よろしく頼むわ」
「ええ、こちらこそよろしくお願いするわ。それと黒霧君の事は善処するわ」
「絶対じゃないんだな···」
「だって黒霧君を見てたら、何故かからかいたくなるのよ」
「んー、なんか分からなくもないが····程々にな?」
「ええ、分かったわ。そういえば2人は昨日何してたの?因みにあたし達は、学園でする事がなかったから、町で買い物をしてたわ」
「ああ、昨日は常夜に付き合ってもらって訓練をしてたぜ」
「訓練なんてしてたの?」
「ああ、最近随分と負けっぱなしでな、このままじゃ駄目だと思って、常夜に色々教えてもらってたんだ」
「へぇ〜、黒霧君って、戦闘も出来るのね」
「ああ、常夜の奴、滅茶苦茶強いぞ。てか常夜はいい加減戻ってこいよ」
「はっ、ごめん。なんか変なスイッチ入ってたよ」
そして僕は暁斎の声で復活する。
「それで、何の話だっけ?」
「ああ、昨日何をしてたかって話だ。」
「昨日は暁斎と訓練だね。暁斎に色々教えてたんだけど、呑み込みが速過ぎて驚いたよ。1週間掛かると思っていたやつを1日で終わらせるとか反則だよ」
「そういえば昨日もそんな事言ってたな。あんなの誰でも出来ると思うんだが···」
「いや、あれを1日で出来るのは、学園でもそう何人も居ないと思うよ」
「そうか?そんな事ないと思うけどな」
「いや無理だよ。少なくとも僕じゃ無理だ」
すると、ここまで話した所で、速水先生が入って来た。
どうやら思ったよりも、時間が経っていた様だ。
「今日から授業が始まる。午前は座学で午後が訓練だ。それと午後の訓練ではCクラス以上のクラスも合同でする事になっているからそのつもりで頼む」
どうやら僕達よりも上のクラスの人も来るようだ。
それから速水先生の話が終わった後、暫くして朝のホームルームが終わり、遂に授業が始まった。
因みに今日の授業は最初の授業と言う事もあり、簡単なものだった。しかし常夜にとってはそんな授業でもとても楽しく、満足する事が出来た。
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午前の授業が終わり昼飯を食べた後、僕達は運動着に着替えて体育館に向かった。
「学園の訓練か、どんな事をするか楽しみだな」
「確かにどんな事をするかは気になるけど、午前の授業と同様に最初の授業だから、簡単なもので終わりだと思うよ」
「そうね、あたしもそう思うわ」
「訓練なのにそこまで余裕って事は、櫛見さんって戦闘が出来るんだね」
「あら、良く分かったわね。あたしの異能は戦闘向きなのよ」
「私の場合は、異能が補助系なので少し怖いです」
「へぇ、星野さんの異能って補助系なんだ。でも流石に補助系の異能者に直接戦わせるなんて事はないと思うから大丈夫だよ」
「そうですよね、ありがとうございます」
「おっ、やっと着いたな。この学園って無駄に広いくて施設も揃ってるけど、移動に時間が掛かって面倒なのが欠点だよな」
「そうだね。でも逆に学園が狭くても不便だから仕方ないよ」
「それもそうだな」
僕達が体育館につき暫くすると、他のクラスの人達が入って来た。
そして全てのクラスの人が入り終えると、速水先生が前に出た。
「全員揃った様なので午後の授業を始まる。ではまずは魔獣について説明する。知っていると思うが魔獣は、何らかの理由によって動物が魔獣化した者やそのまま魔獣として生まれてくる。何故、魔獣が生まれて来るかは分かっていない。そして魔獣は基本的に身体能力が高く、中にはある程度知能がある者もいる為、とても強力だ。したがって基本魔獣との戦闘では、数人でチームを組んでもらう。勿論中には魔獣を単独で討伐出来る者も居るだろうが、1人ではもしもの時に対応出来ない可能性がある為、チームを組む事は絶対だ。では今から1時間程時間を取るから、そのチームを決めてもらう。それと余程の事がなければ、チームの変更は出来ない為、しっかりと考えてチームを組む事だ」
そう言って先生が下がると、周りが騒がしくなる。
皆、少しでも強い人にチームに入ってもらおうとしているのだろう。
「常夜、チームにならねーか?」
「うん、良いよ。暁斎なら仲が良い上に実力もあるし、なんの問題もないよ」
「そうか、なら決まりだな。で、後はどうするんだ?流石に2人って訳には行かないだろ?」
「それに関しては、星野さんと櫛見さんを誘おうと思ってるよ」
「理由はあるのか?まさか、ただ仲が良い人が他に居ないからとか言わねえよな?」
「うん、それもあるけど、1番の理由はさっき櫛見さんは戦闘が出来て、星野さんは補助系の異能だって言ってたでしょ。僕達は2人とも前衛だから、補助系の人がいた方が何かと助かると思うんだよ。それに仮にもCクラスだから全く使えない異能と言う事はないよ。後はCクラスの僕達じゃ、上のクラスの人をチームに入れるのは難しいと思ったからだよ」
「なる程な。それなら納得だ」
「じゃあ行こうか。2人が他の人に取られたら堪らないからね」
「おう」
そして僕達は星野さん達をチームに誘う為に、2人を探し始めた。
「星野さん、櫛見さん僕達とチームにならない」
そして星野さん達を見つけた僕達は、早速2人をチームに誘う。
「え?いいんですか?私なんかをチームに入れて···」
「うん、ただ仲が良いという理由だけで、誘った訳じゃないから大丈夫だよ」
「分かりました。ただ私は良いですけど、朱里ちゃんはどうする?」
「ん?勿論あたしもオッケーよ」
「じゃあ決まりだね。これで4人だけど2人は他に誘いたい人とかいる?」
「いえ、私は居ません」
「あたしもよ」
「じゃあ、チームはこの4人で決まりだね。見た感じ他の人達はもう少し時間が掛かりそうだし、今から皆で自分の異能を教え合わない?」
「そうね、仲間の異能が分からないんじゃ、連携も出来ないしね」
それから僕達は自分達の異能を話し合った。
そして分かった2人の異能はこれだ。
まず星野のさんの異能は未来視、感情眼、感覚共有の3つだ。
その効果はこれだ。
未来視
·····数秒先の未来が見える。
感情眼
·····見た対象の感情が色として見える。
感覚共有
·····対象と自分の感覚(五感など)を共有出来る。
星野さんの異能は言っていた通り、完璧な補助系だが、その効果はとても強力だ。どういう事かと言うと、星野さんが未来視で見た未来を感覚共有の異能で僕達に共有させる事で、敵がどう動くのか教えてくれるのだ。
つまり星野さんの補助があれば敵がどう動くのか、あらかじめ分かるので、例え相手が予想外の行動をしようとしても先読みして対処出来るのだ。
そして櫛見さんの異能は、分身と追加攻撃の2つだ。
その効果がこれだ。
分身
·····自分の分身を作る事が出来る。分身の能力は本体と同じだが感覚や傷は共有される。
追加攻撃
·····自分がした攻撃の後に、その攻撃の威力と同じ攻撃を与える。
櫛見さんは自分の分身を出し、分身も連携して攻撃する戦い方をするらしい。また分身は1体までしか出せないらしいが、手数で考えれば、追加攻撃の異能がある為、実質4人に攻撃される様なものなので、とても強力だと思う。
「なかなか良いんじゃないか?」
「そうだね。星野さんが補助して暁斎が守り、僕がスピードで撹乱して櫛見さんが攻撃する。これは予想以上に強いチームになったね」
「特に夢の補助が加わった堅木君の防御を破る事は、そう簡単には出来ないわね」
「これは決まりだね。それと星野さんは戦闘が出来ないんだよね?」
「はい、私に戦闘は無理です」
そもそも異能者と言っても、戦闘訓練などを受けている方が稀なのだ。
「分かった。じゃあ星野さんは出来れば、ある程度の体力を付けて欲しい。もし何らかの理由で逃げる事になった時に、体力が尽きたりしたら終わりだからね」
「分かりました。頑張ります」
「じゃあ、そろそろ時間だし戻ろうか」
いつの間にか時間が経っていた事に気付いた僕はそう言って、チームを作る前の場所に戻った。
「時間だ。全員チームは出来たな。では今日は初日という事もあり、これで終わりにする。本格的な事は明日からするからそのつもりでいろ。では解散だ」
その言葉で周りが帰り出したので、僕も帰る事にする。
「初日とはいえ、まさかチーム決めるだけで終わるとは思ってなかったぜ」
「仕方ないよ。それに明日からは本格的に訓練が始まるって言ってたじゃん」
「そうだけどよ、なんか動き足りないんだよな」
「昨日あれだけ動いたじゃん。明日までの我慢だよ」
「はぁ、分かってるよ」
その後僕は最終的にまた訓練をする約束をしてしまったが、機嫌を直した暁斎と寮に帰ったのだった。