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特訓

「違う違う、もっと重心を前にして振ってみて」


「こうか?」


「う〜ん、なんか違うんだよなぁ」


今僕は約束通り、暁斎の特訓に付き合っていた。

昨日寝るのが早かった為か、早朝に起きた僕は、朝風呂を浴びた後に暁斎を起こして朝食を取った。

その後、少しして約束通り暁斎の剣術の特訓を行っていた。


「てか、なんで俺は剣の素振りをしてるんだ?相手の攻撃のいなし方を教えてくれるんじゃなかったのかよ」


「いなし方を覚える前に重心移動や足捌き、その他の基本的な事をしっかりしないと、中途半端になっちゃうんだよ。それに暁斎は体の方はほぼ出来上がっているから、そういう基本的な事を学ぶだけで大分違って来ると思うよ」


暁斎の剣術は我流らしく、そういう基本的な事が余り出来ていないのだ。


「そうなのか?でも重心の移動の仕方とか戦闘で使えるのか?」


「うん、重心移動は大切だよ。重心の掛け方によって攻撃に重さも増すし、隙が少なくなるからね」


「なぁ、重心移動なんかで隙が減るものなのか?」


「う〜ん、実際にやってみた方が良いね。じゃあ暁斎、僕に向かって攻撃して来てよ」


「えっ、良いのか?···分かった」


そして暁斎が木剣で僕に攻撃して来た。

僕はそれを体を捻って上手く躱し、そのまま暁斎の足を僕の足で軽く引っ掛ける。


「うおっ!?」


そして重心移動がしっかりしていない暁斎は、その少しの力だけで簡単にバランスを崩して倒れる。


「こんな風に重心移動をしっかりしてないと、弱い力であっさり倒されるんだよ。だからまずは重心移動と足捌きを完璧にして、それから相手の攻撃のいなし方とかを教えるよ」


「なるほど、これは確かに大切そうだな」


どうやらわかってくれた様だ。

しかし、あれだけ言っても判らなかったのに、1回やってみせるだけで判るなんて、暁斎ってもしかして·····。


「ねぇ、暁斎ってもしかして感覚派なのかな?」


「ん?感覚派?何だそれ?」


「人が剣とか武術をする時に、感覚で動くか考えて動くかの事だよ。因みに僕は考えて動く方かな」


「なるほど、確かに俺は感覚でやってるんかもな」


「じゃあ、言って教えるよりも、実際に体験したり反復して体で覚えた方が良いね」


「なんか、そう聞くと調教されてるみたいで嫌だが、確かにそっちの方が俺には合ってるかもな」


「じゃあ、早速やってみようか」


「おう、頼む」


それから僕は、暁斎に体の捌き方や重心の移動の仕方を何度も反復させて覚えさせたりした。

そしてそれが出来る様になると、今度は実践形式で隙のある部分を徹底的に攻撃したりして自分の弱点を判らせて、隙をなくす様に何度も攻撃した。


「ふぅ〜、よし、もうそろそろお昼の時間になったし、1回休憩して、大分基本が出来る様になったから、午後からは攻撃のいなし方を教えて行こう」


「はぁ〜はぁ〜、やっと終わったー。てかなんで常夜は余り疲れてねーんだよ!」


「僕の生体超強化は生体に関する事の全ての強化だからね。体力とかも強化されてるんだよ」


「まじかよ。お前、絶対Cクラスの実力じゃねーだろ!チートだ!」


「まあそうかもね。(隠密者と絶死眼の異能は本当にチートだと僕も思うよ)」


「はぁ、午後からやっと、攻撃の捌き方を教えてもらえるわ」


「やっととか言ってるけど、実際暁斎の技術の吸収力は化け物の部類だからね。僕的には今の所まで教えるのに軽く1週間は掛かると思ってたよ」


「そうか?(おだ)てても何もないぜ?」


「いや、煽ててないよ、このスピードで強くなれば、僕なんてすぐに抜かれるよ」


「まじか!でも結局は技術的に勝てても、相手の身体能力に付いて行けなければ意味がねぇけどな」


「確かに実際暁斎の異能って対人向きじゃなしね」


「対人向きじゃない?」


「うん、対人戦の場合は相手に防がれたりするけど、魔獣なら普通の剣じゃ防がれる硬いの体を持った奴でも暁斎なら攻撃が通るでしょ?」


「確かに···。そう言われると俺の異能は対人向きじゃないな」


「うん、対人で異能を活かしたいなら、それこそ全身に甲冑を纏うか、相手の武器破壊を狙うかだね」


「なる程、武器破壊か。確かに相手の武器を壊しちまえば、こっちのもんだな」


でも幾ら硬度が上がっても流石に相手の武器を壊すのは難しいかな?いや、でも10倍なら行けるかも···。駄目だ、そもそもその前にやられたら終わりだ。じゃあ相手の攻撃を防がないと···そうだ!


「ねぇ、暁斎」


「ん?なんだ?」


「武器を片手剣に変えて、左手に盾でも装備してみたらどうかな?それなら対人でも異能の効果が有るよね?盾の硬度を上げとけば、盾で防ぐだけで相手の武器にダメージを与えられるし」


「なる程、それなら確かに俺の異能を活かして対人戦でも使えるな。いや、これなら魔獣戦でも使える」


「決まりだね。じゃあ、午後からは盾と片手剣で行ってみよう」


「そうだな。それよりも、まずは飯だな。流石に腹が減っちまったわ」


「そうだね、じゃあ食堂に行こう」


「ああ、そうだな」


_______


「うめぇ!昨日も思ったが、この学園の飯って美味いな」


食堂に着いた僕達は早速昼食を取っていた。


「うん、美味しいね。レシピを教えて貰いたいくらいだよ」


因みに食べいる料理は、僕がパスタで、暁斎はとんかつだ。


「ん?レシピって、常夜は料理するのか?」


「うん、僕は一人暮らしだったからね」


「へぇ〜、料理まで出来るとか、常夜ってまじで女子力高いのな」


「うっ、女子力って言わないでよ!料理が出来る男はモテるって、聞いた事あるよ」


「確かに聞いた事あるが、常夜の場合、女より男にモテるんじゃねーか、なんてな」


「·······」


「え?もしかして図星?·····あー、えっと、なんか悪かったな」


「···もう良いよ」


「そ、そうか。·····そ、それより早く食べて、訓練再開しよぜ」


「···そうだね」


それから暫く常夜の様子がおかしくなり、暁斎はこれから常夜を女と言ってからかうのは、辞めようと決めたのだった。


________


昼食を食べて少し休憩した後、訓練を再開する事にした。


「じゃあ、装備も盾と片手剣に変えた事だし、攻撃の対処の仕方を教えるのは、午前中にやった事をその装備で出来る様にしてからにしようか」


「ああ、そうだな少しはこの装備に慣れないとな」


「よし、じゃあ早速やってみよう」


「おう、頼む」


こうして訓練が再開した。


それから僕は、午前と同じ様にして、新しい装備の感覚を掴むと同時にそのまま午前の訓練でした事を出来る様にした。


そして結果から言うと暁斎は、午前でやった事を2時間程度で出来る様になった。

いくら、午前にしたとはいえ、装備を変えてこんな短時間で出来るのは、やはり暁斎は天才だと思う。(無自覚)


「じゃあ、今から暁斎が身に着けたいって言う、攻撃のいなし方を教えるよ」


「お、やっとだな。頼むわ」


「うん。まず、攻撃をいなすなら相手の攻撃の力の向きに逆らわずにする事が大切だよ」


「力の向きに逆らわない事?」


「うん、逆に力の向きに逆らうと、それはもういなすじゃなくて、受け止める事だからね。···だから相手の攻撃を身体ごと横に流す感じて·····」


それから僕は、相手の攻撃の流し方を細かく教えていき、時には実践して見せたりして、暁斎に教えていく。


「どう?出来そう?」


「うん、やってみないと何とも言えないな」


「それもそうだね。じゃあ僕がゆっくり攻撃するからそれをいなしてみてよ」


「分かった」


そして僕は暁斎に向かって剣を振るう。

それを暁斎は僕が言った通りに、相手の力に極力逆らわずに横にいなす。


「おお、出来た」


「みたいだね。じゃあこれを速い攻撃でも出来る様になろう」


「おう、どんどん頼む」


それから僕は何度も剣を振るい、段々剣速も上げていく。

因みにいつも僕が使っている武器が短剣じゃなく剣なのは、短剣だと刃が短くいなし難い為だ。


そしてそれから暫く攻撃をして、大分攻撃をいなせる様になったら、今度はいなすだけでなく反撃の仕方も教えていく。




そして太陽が落ちて、空が茜色(あかねいろ)に染まって来た頃になると暁斎は、重心位置や足捌き、そして攻撃の対処の仕方をほぼ完璧にマスターした。


「うん、合格だよ。ここまで出来るなら、もう暁斎に勝つのは余程の相手でもないと無理だよ」


「そうか?常夜には全然負けてると思うんだけど」


「流石に僕もたった1日で抜かされる訳には行かないよ。それに暁斎の異能で強化した防御に剣でのいなしも破って暁斎に攻撃するとか、普通はまず無理だから」


良く考えたら、こんなの異能無しじゃ、まず無理だな。

これなら、Aクラスの異能者にも通用する人も居るのではないだろうか?


「なる程。つまりそれが出来る常夜は普通じゃないって事だな」


「うっ、それは酷いよ」


「ははは、悪い悪い。それにしてもありがとうな。なんか今日1日で凄く強くなれたって、実感出来るくらい変わったよ」


「気にしなくて良いよ。僕が教えなくても、どうせいつか誰かに教えてもらってたと思うし」


「でも教えてくれたのは常夜だろ?」


「そうだけど····」


「まぁ、何はともあれ。また、時間があったら頼むわ」


「うん。任せてよ。僕もいつか暁斎に頼る時はお願いね」


「ああ、任せとけ」


「じゃあ、もう暗くなって来たし、寮に戻ろうか」


「そうだな」


そして僕達は寮に帰って行った。




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