クラブ活動
「おお!これが寮か、でかいな!」
「うん、確かにこれは凄いね。僕も大きいとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかったよ」
寮につくと、暁斎が余りの寮の大きさに声を上げ、僕もそれを同意して、寮に目を向ける。
すると、そこには4階建ての建物があり、その建物が校舎程ではないが、それと同じくらい大きいのだ。
「てか、もうこれって寮って言うより、少し小さめのホテルって感じだな」
「そうだね。取り敢えず中に入って見ようか」
「そうだな、外にずっと突っ立てるのも可笑しいしな」
そう言って僕達は寮に入った。
寮に入った僕は、まず自分達の部屋が何処か聞くために、受付に向かった。そして、受付に居た、30歳前後くらいの女性に声を掛ける。
「すいません、Cクラスの部屋って何処ですか?」
「Cクラスですね。速水先生からペアの事は聞いています。名前を教えてくれるかな?」
「はい、黒霧 常夜と堅木 暁斎です」
「黒霧君と堅木君ですね。···君たちがCクラスでは一番最後みたいですね。最後だから部屋は少し遠いけど我慢して下さい。部屋は2階の1番奥の部屋で、これがその部屋の鍵です」
「あっ、送った荷物はいつ来ますか?」
「輸送された荷物なら今日の夕方くらいに部屋に届ける予定になってるます。なんらかの事情があって、すぐに欲しいなら、私に言って下さい」
「分かりました。では失礼します」
そう言って僕は受付から離れて暁斎の所に行く。
「暁斎、部屋の場所は2階の1番奥の部屋だって」
「まじか、1番奥ってこの寮の大きさを考えると、相当遠いよな?」
「そうだね。でも、Cクラスはその範囲が部屋らしいから、クラスの皆も同じ様なものだし、僕達だけがただを捏ねても仕方ないよ」
「それもそうだな」
「取り敢えず部屋に行こう」
「ああ」
そして僕達は階段を登って2階に行き、1番奥の部屋に向かう。
別にエレベーターで登る事も出来るのだが、流石に2階に上がる為だけにエレベーターは使わない。
「お、ここだな」
僕達の部屋に着くと、暁斎が声を上げて扉を開き中に入る。
すると、部屋には二段ベッドや勉強机、洗面所や風呂が付いていた。
「···なんか、寮って言うより、もうホテルだな」
「そうだね。それにこの寮には大浴場もあるらしいよ」
「まじかよ。大浴場があるのに、部屋に風呂を付けるとか無駄だろ」
「確か大浴場を余り好かない人の為に、部屋に風呂が付いてるとか聞いたよ。でも朝にシャワーを浴びる時とか一々大浴場に行くのは面倒だし、良いんじゃない?」
「それもそうだな」
「それと、荷物は今日の夕方に部屋に届けられるみたいだから、早速学園を見て回ろう」
「ああ」
「なあ常夜」
僕達は寮から出ると、暁斎が声を掛けてきた。
「ん?どうかしたの?」
「学園を見回るって言ってたけど、具体的に何を見るんだ?」
「僕は個人的には図書館の方に興味があるけど、今日はクラブ活動を見てみようと思ってる」
「クラブ活動?部活の事か?」
「うん、それ。この学園は一般的なクラブだけでなく、異能を使った特殊なクラブもあるらしいから気になったんだよ」
「なるほど、異能を使ったクラブか、確かに面白いそうだな」
「じゃあ、早速クラブ活動から見に行こう」
「おう」
そして僕達はクラブ活動を見る為に歩き出した。
まず初めに見るのは、普通の学校にもある一般的なクラブだ。
因みに学園にある一般的なクラブは、テニスやバスケ、サッカーや弓道、他にも屋外のものだけでなく、屋内で出来るクラブも沢山ある。
「へぇ〜、これがクラブか、いっぱいあるんだね」
そして僕はそういったクラブの活動を見て声を上げる。
「ん?そうか、これくらいの数なら普通くらいだと思うけど、常夜はこういうスポーツとかしたことないのか?」
「うん、学校に行ってなかったから友達も居なかったし、色々と大変でスポーツをする時間がなかったんだよ」
「そうなのか。しかし、俺は異能者が集まる学校だから、普通にスポーツで異能を使ってるのかと思っていたんだが、誰も異能を使ってないな」
「確かに使ってないね。でももし異能を使ったら、それはもうスポーツとして成り立たなくなるんじゃないかな?」
「あー、確かに考えてみればそうだな。全員が同じ条件でやるからルールとして成り立ってるのに、異能を使ったら滅茶苦茶だな」
「そうだね。良し、じゃあ次は異能を使ったクラブの方に行こう」
「最初は何処に行くんだ?」
「そうだね〜、先生から貰った冊子に色々なクラブが書いていたけど、科学的なやつとか異能の研究とか、僕達には難しい専門的なものが多いからね、早速だけど、異能戦闘のクラブに行ってみる?」
「おっ、いきないだな。だけど確かにそんな専門的なやつは嫌だしな。それで、その異能戦闘のクラブってのは、何処でやってるんだ?」
「少し待って。···えっと、冊子には第二体育館って書いてあるよ」
「そういえば、学園って体育館複数あったな。じゃあ、その体育館に行こうぜ」
「うん」
そして僕達は第二体育館に向かった。
_____
僕達が第二体育館の中に入ると、すぐに金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。
「おっ、どうやら丁度訓練をしてるみたいだな」
その声を聞き、僕も音がする方に目を向けると沢山の人が武器や異能で戦闘訓練をしていた。
「へぇ〜、やっぱり戦闘のクラブとなると、結構人数が多いんだね」
「そうだな。元々この学園は戦い方を学ぶ場所だからな、そういう奴は多いんだろ」
「なるほど。それにしても結構動きが良いね」
「ああ、大分戦闘慣れしてるな」
暁斎が言った様に体育館で訓練をしている人の動きは、無駄な力みがなくて、動きにも隙が少ないく、明らかに戦闘慣れしている。
「ん?君達、そこで何をしてるんだ?」
それから暫くすると、訓練をしていた男子の先輩がこちらに気付いて、声を掛けてきた。
「あっ、勝手に入って来てすいません。僕達は今日入学してきた1年生なんですが、時間があったので学園のクラブを見学して居たんです」
「なるほど、1年生か。因みに何クラスか聞いて良いか?」
「はい、Cクラスです」
「Cクラスか、なら問題ないかな。良かったら見学だけじゃなくて、体験でもしていかないか?」
「体験ですか!?どうする、暁斎?」
「ん?体験出来るなら、良いんじゃねーか?」
「そうだね。すいません、体験させて下さい」
「おっけー、分かった。俺は風宮 春人だ。よろしく頼む」
「あっ、僕は黒霧 常夜です。よろしくお願いします、風宮先輩」
「俺は堅木 暁斎です。よろしくお願いします」
「黒霧と堅木だな。見た感じ武器は持ってなさそうだから、学園のやつを貸すよ。なんの武器を使うんだ?」
「僕は短剣2本でお願いします」
「俺は長剣でお願いします」
「短剣と長剣だな。少し待ってろ」
そう言って風宮先輩は体育館の倉庫に入っていった。
「ラッキーだったな」
「うん、そうだね。でも、クラブに入った訳じゃないのに、勝手に参加していいのかな?」
「良いんじゃねーか、中学の時には体験入部ってのもあったし」
「そんなのあるんだ」
それから暫くして、風宮先輩か戻って来た。
「ほい、短剣2本と長剣だ」
「「ありがとうございます」」
「じゃあ、少し実力を測らせてもらうよ。おーい裕二、ちょっと来てくれ」
すると、風宮先輩が実力を測りると言い、誰かを呼んだ。
「どうしたんだ?」
「ああ、こいつらを体験させる事になったから、模擬戦をしてどれくらい出来るか測ってくれ」
「体験?こいつらをか?···分かった」
「じゃあ、今から模擬戦をして実力を測るから、全力で来ていいよ」
「僕が風宮先輩と戦うよ」
「じゃあ、俺はあっちの先輩だな」
そして僕達は分かれて武器を構える。
「じゃあ、開始だ!」
こうして模擬戦が始まった。
まず、僕は始めの合図と同時に先輩に近付き、短剣を振るう。
しかし、先輩は強化された僕の身体能力に驚くが、先輩が持っている刀でいなす。
「うお!?あぶねぇ、身体強化系の異能か」
先輩にどんな異能を使うかばれてしまったが、僕は構わず先輩に短剣を振るう。そして先輩はそれをまたいなし、こちらに刀を振り下ろして来るが、僕はそれをもう1つの短剣で防ぐ。
「思ったよりも速いな。じゃあ、次はこっちからいくぜ!」
すると、先輩は言った通りこちらに攻めて来た。
そして先輩が振るった刀をすれすれで避け、カウンターで短剣を振るおうとする。しかしその瞬間、僕の横から衝撃が走り、吹き飛ばされるが体を捻って、上手く着地する。
「今のは、風?」
「おお、正解。俺の異能は風を操る異能だ」
どうやら当たっていた様だ。
「じゃあ、次行くぜ」
すると今度は体に風を纏い、凄まじい速度で近付いて刀を振り下ろして来た。僕はそれを地面を転がって回避する。
このままではジリ貧なので、僕は更に生体超強化のギアを上げる。すると動体視力や思考速度まで強化され、周りの動きがゆっくり見える様になる。そして今度は僕から先輩に向かって行き短剣を振るおうとする。それと同時に感覚に集中する。すると僕が短剣を振り下ろそうとした所で、右横から風を切る音が聞こえた。
「そこだ!」
そして僕は、その音を頼りに風の衝撃を回避して先輩に攻撃する。
「まじかよ!」
先輩は慌てて逃げ様とするがもう遅い。僕は先輩の首に短剣を突き付ける。
「参った。俺の負けだ」
「ふぅ、ありがとうございました」
「いや〜、お前強いな、本当にCクラスかよ」
「いえ、先輩はその気になれば、もっと強い風で攻撃する事も出来た筈なので、手を抜かれてこれでは駄目です」
「はは、自分に厳しいな。おっ、向こうも終わったみたいだぞ」
先輩にそう言われそちらを見ると、暁斎の首に少し子ぶりの剣を突き付けていた。
「そっちも終わったみたいだな」
「ああ、なかなか強かったぞ。そっちはどうだ?」
「こっちか?こっちは負けちまった」
「はあ!?負けたってまじかよ!?」
「ああ、横から撃った風をまさか躱されるとは、思わなかったわ」
「風を避けるってまじかよ!あんなの一体どうやって避けるんだよ」
「あっ、それは俺も気になったんだ。なぁ、黒霧、お前どうして見えない風を避けれたんだ?」
すると先輩がどうやって風を避けたのか聞いてきた。
「ああ、それは音です」
「音?」
「はい、僕の異能は身体能力だけじゃなくて、感覚も強化されるので、風を切る音で風の位置がわかったんですよ」
「まじか、音かよ」
「はい」
僕は話が切れたので暁斎の元に行く。
「暁斎、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。くそーもう少しだったのによ」
悔しそうにしているが、結構いい戦いが出来たのか、暁斎は笑っていた。
「別に今日負けても、いつか勝てる様に頑張ろう」
「そうだな。でも常夜は勝ったんだって?凄いな」
「いや、先輩が本気じゃなかったからだよ。もし本気だったら瞬殺されてたと思う」
「まじか、そこまでかよ」
「うん」
それから僕達は、外が暗くなるまで訓練に参加して寮に帰った。
______
「ふぅー、今日は楽しかったな」
「うん、でも僕達はまだまだだね」
「ああ」
そして夕食を食べ風呂に入った僕達は、今日あった訓練の感想を言う。
「もっと、強くならないとね」
「ああ。なあ常夜、明日は何か用事あるのか?」
「ん?明日?明日は日曜日で学園が休みだから、特に何もないよ」
「じゃあ、明日は俺の剣の特訓に付き合ってくれないか?」
「剣の特訓?」
「ああ、今日の訓練で分かったんだけど、俺の剣には隙が多いと思うんだよ。常夜みたいに相手の攻撃をいなせる様に技量を上げたいんだ」
「分かった、良いよ」
「お、まじか、良いのか?」
「うん、どちらにしても明日は暇だからね」
「ありがとな」
「うん。····ふあ〜、今日はもう疲れたから、僕は先に寝るよ」
「そうか、おやすみ」
「うん、おやすみ」
そうして僕は眠りについた。