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浪人下僕と灰かぶりな姫  作者: 中田 タナカ
4/5

クロスロード



「お、なんかすげぇ!。」

驚嘆の声で言うその視線の先を見ると、道の端にいくつもの店が立ち並んでいた。

上手く表すなら日本の祭りの店がのようなそんな感じ。

良平は無邪気な子供のようにそこめがけて走り出した。

「ちょ、速いって。」

その後をなぞるように歩く。

果物屋に駄菓子屋、よく見ると射的のような物もある。

目移りしてしまう視線の先で良平は興味津々に一つの店の商品を見ていた。

伊月もようやくそこにたどり着く。

「なに見てんの。」

店にはネックレスや指輪、ライオンの顔に見立てた置物など骨董品らしき装飾品が並んでいた。

「いやぁ、こういうのって男心注がれるくね。」

と、金属で出来たドクロの首飾りを手にする。

いや、流石にそれはない。

「あんたら日本から来たのかい?。」

店の奥から声が聞こえた。

流暢な日本語、女の声だ。

見ると特徴的な黒い帽子を被った160センチくらいの女性が座っていた。

店主だろうか。でも、何で気づかなかったのか。

「え、何で分かったんすか?!。」

驚く良平に、女店主はにっこりと微笑む。

「なーに、商人の感というやつさね。何年もこういうことやってると自然と分かってくるのさ。」

そう言うと彼女の視線が伊月に映る。

「そこの人はうちの商品に興味なさそうだね。」

突然、言葉を投げかけられ口が固まる。

「...いや、別に。」

そう言うと店主は何かを悟ったように、ふーん、と言って足を組んだ。

「苦悩が見えるね、それも年単位で続いてる、そして、これからも続く苦悩。」

「っ!。」

一瞬で悪寒が走った。

何で、

それが顔に書いていたるのように彼女は伊月の顔を見つめている。

何か怖い。

そう感じたのとは反対に良平はさらに興味が湧いたようで、

「お姉さん、占いみたいなの出来るんすか?!。」

興味津々に食いつく良平に店主は声に出して小さく笑った。

「こっちのほうが本職なんだけどね、私の占いはよく当たるよ。」

「へぇ、じゃあ、俺たち二人を占ってもらっていいっすか?。」

突然そんなことを言い出す。

「おい、なに勝手に。」

「いいじゃん、さっきのだって当たってただろ?。」

「いや、それはたまたまで。」

そんな声を聞こうとはせず、良平は、お願いしまーす!と大声で頼んだ。

「二人で10ユーロだよ。」

横の男は躊躇いもせず二人分の金を店主に渡した。

最後に奢ってやるよ、と耳に囁く。

「じゃあ、そこの焼けた坊やから。」

そう言うと店主の瞳が宝石のように輝いた気がした。

碧い、エメラルドのような。

「ふーん。」

組んだ足を逆に組み直す。

「明るい兆しが見えるね。決して裕福な者ではないけど、人並み以上の幸福がきっと訪れる。」

おー、と良平は感嘆の声を漏らす。

漠然としていて誰にでも当てはまりそうないかにもな良い方。

「じゃあ、次、伊月で。」

自分の番がわまってくる。

再び碧い瞳が向けられ、深く息を飲む。

また、瞳が輝いたように見えた。すると、店主の口元から笑みが消える。

「これはダメだね。次も失敗するよ。そして、その次も。」

「........。」

想像以上に痛烈な言葉が投げかれられた。

流石の良平も伊月が気がかりなようですぐに口を挟んだ。

「あー、でも、勿論、その対処法とかも教えてくれるんすよね?占いだし。」

「運命を変えるようなものはないけど、ここで役立つものならあるよ。」

そう言って引き出しから指輪のような物を取り出した。

「聞いたことがない言葉でも理解できるようになるよ。効果が出るまで一日かかるけど、旅行にはぴったりさね。」

「....くだらない。」

そう言葉を吐き捨て、店を出ようとする。

その伊月の手を良平が掴んだ。

「ちょ、なに。」

伊月が振り向いた時同時、聞こえたのは、

「お姉さん、それ買います!!。」




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