早くも三度目の詰み。
「はーい、集まってください!!。」
クールビズの西欧顔の女性が、流暢な日本語を使いながら手を上げていた。
周りに散らばっていた研修生が一気に彼女の方へと集まっていく。
星野 伊月もその中にいた。
数日前から始まったこのイギリスへの語学研修は母さんからの提案だった。
受験の英語にも活用できるかもしれない、という理由でのことだ。
多分、落ち込んでいた伊月を気遣ってのことだったのだろう。
現にプログラムは半分は観光に近いものになっていた。
周りの人々もカジュアルな服装を着こなし休み最後の思い出作りという印象だ。
この研修に両親はいくら払ったのか。
そう思うとよりいっそう罪悪感が増していく。
いい、俺は周りの奴らとは違う。こいつらとは目指す場所が違うんだ。
勉強は一人で出来る。今までだってそうして来た。
その時、
「じゃあ、二人以上の組を作って下さい。今日はそのメンバーで街を回って貰います。」
指示者の言葉に、旨の奥がドキッとした。
....まずい!。
キョロキョロと辺りを見渡す。
数日前のオリエンテーションもあってか、すぐにグループが出来始める。
交流を拒んでいた伊月にはそんな相手はいない。
このままじゃ、一人残されたことをみんなの前で報告しなければいけない。
まだ二週間近くあるのにそんな目立つことにはなりたくない。
だからと言って、今からキャラ作って陽気に演じるのも無理がある。
「はい、もうこれで全員ですかー。」
あ...。
そうこうしている間に残りは自分だけになっていた。
もうこれは仕方ない...深くため息をつく。
「伊月?。」
肩にポンと手が置かれた。
「え?。」
驚いて振り向く。
そこには自分より一回りほど大きな男が立っていた。短髪のツーブロックと黒い肌、そしてほどよい筋肉質な腕。
伊月はその顔に見覚えがあった。
「良平?。」
ぽっと出たその名前に男はにっこりと笑った。