表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳴子たる森  作者: 花美輪 乃霧
第一章
9/20

9 咎めた思い

 私たちは客室で一息ついて、静かで少々長路たる廊下にでた。廊下は相も変わらず、薄暗く感じる。

 客室を通り過ると、陳列棚が並んでいた。私と彼女は寄り添いながら余所見せずに陳列されている形見の骨董品を拝観した。陳列棚には美術品と共に名札や説明書きがされている物もあった。


 斑な瑠璃色の光沢を放つ染錦鉄仙花花瓶や光収たる肌を纏う越前おはぐろ壷、名称不明の赤鉄たる備前焼などが展示されている。刀も四振りほど飾られていた。一振りは錆びていて長たる刃は朽ち果てていたが、崇高なる刀掛けに展示されている。

 これら刀は無名の物と思われるが、刀剣鑑定証と共に展示されていることから、本物であることが解る。

 さらに仏像を拵えた日本画、琵琶の花が描かれた物などが、陳列棚上部のガラスケースに展示されている。

 奇妙にも隕石や、渦を巻いた形状の化石なども存在していた。説明書きにはこの地域の地層で見つかった物らしい。亡くなった宿主人は幾分、畸人たる趣味を持っていたようだ。

 通路受付部屋の近くには、御札集と書かれた飾棚があり、怪異を感じさせるような、海亀や鶏、犬、きじなどの剥製と共に御札が剥製横に展示されている。それらは剥き出しの状態で埃を被っていた。

 一枚の黄み色にせた御札が、今にも千切れそうになっている。札には朱色で文字が書かれているが、劣化と朱墨の掠れのため読めなかった。動物の剥製は義眼なる眼球や耳、毛などが欠落している物が殆どで、少々気味悪い印象であった。

 私たちが、宿に到着した際は気にならなかったが、薄暗い照明の中、こうしてとくと見物していると、やはり不気味なものである。彼女は気味悪そうに見やっていた。


 私たちのような素人が、これらの美術品を見ても良さは判らないが、日本美術品がこの温泉宿の雰囲気に合っていると言う事だけは判る。奇知気色じみた剥製を除いては。



 陳列棚の片隅に年季の入った赤茶けた厚い封筒が目に入った。封筒にはかびと思われる染みがあり、手書きで『幻夢郷』と滲んだ呂色ろいろのインクで記述されている。

 私は無性に中身が気になった。私は手に取ろうとした矢庭に、老婆の枯渇した声が廊下に轟いたのである。ついとの事であった為、私の心臓は狂振めいて身体が発震した。その条件反射によって身体がよろめき、私は腕でバランスを取ろうと陳列棚に手を当てた。

 その拍子に、剥製棚に展示されていた千切れかけの御札が完全に二枚に破れ、私たちの足元にひらと落ちたのである。私と彼女は慌てて広い上げ、元の場所に戻した。

 その一始終を見ていた老婆が私たちに近寄ってきたのだ。私たちはとがめた思いで謝罪した。

 老婆は顔の皺を収縮させ、何事も無かったかのように夕食の準備が出来たと告げ、私たちを二階の食の間へと促したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他の小説へ「小説家になろう 勝手にランキング」(この小説を投票)

読まれる方へ
これは実際の呪術を使用して執筆された手記です。
精神疾患等の発病については著者は一切の責任をおいません

※すでに心臓疾患・精神疾患のある方は絶対に読まないで下さい
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ