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鳴子たる森  作者: 花美輪 乃霧
第一章
8/20

8 浅紅色の肉片

 ラバー製の白射する腰用エプロンを身に着けた、恰幅かっぷくの良い男が地下の冷たい調理場で黙々と作業を行っていた。


 男は毛達磨の太い腕を洗い、ひたいに垂れ出た剛毛を衛星帽に押し込み、冷風の掛かる熟成室へと足早に向かった。熟成室には大きめの鈎針で宙吊りにされた七体の長方形に近い肉塊が保存されている。その中から、一番良い状態の肉塊を選び、太く長めの部位を二塊、肉鋸にくのこで切断した。切断した部位を大きめのアルミ製容器バットに入れ、無機質なタイルが敷き詰められた厨房へと戻ったのである。


 アルミ容器から、しっかり血抜きされ熟成が進んだ肉を一本手に取り水洗いした後、太長たる肉塊を肉鋸で半分に切断した。その後、皮と肉身の堺に包丁を入れた。少しばかり浅めの筋を入れ、右手で皮を掴み左手で肉身を使い古されたひのきの厚い俎板まないたに押さえつけ固定した。その状態から右手を勢い良く引き上げると肉身から皮が綺麗に剥がれ、浅紅色の身があらわになったのだ。その光景に涎を滲み出しながら、男は綺麗な容器に皮と肉身を分けて投げ入れた。

 男は腹を冷たいアルミ製の作業台に当てながら、同じ作業をもう一回繰り返した。


 続いて男は半分に切断した肉界を一つ取り上げ、縦に深く切り込みを入れ、肉内から骨を取り出す作業を行った。これを後三回繰り返したのであった。


 容器並べられた浅紅色の肉片は、弾力と張りがあり上質な物である。さらに脂は少ないが、切り口には所々霜降り肉のような模様があり、高級肉に匹敵する見栄えである。


 次に男は深紅色の塊と明太子の様な物を冷蔵庫から取り出し、作業台に載せ切り身包丁を手に取り、紅色の塊を切り分け、大葉、大根、山葵を大皿に盛り付けていった。

 また明太子の様な物は小皿に盛り付けた。


 男は厨房の備え付けとなっている焜炉コンロの前に移動し、筋が太く両手大程の白子の様な物で御吸物を作り始めたのだ。


 作業台には見栄えの良い料理が並べられ、男は涎を飲み込みながら、満足げに眺めるのであった。


※浅紅色 ピンクに近い色。

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これは実際の呪術を使用して執筆された手記です。
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