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鳴子たる森  作者: 花美輪 乃霧
第一章
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6 陳列棚

 外林で小さく木霊する機械音のなか、白い割烹着かっぽうぎを着用した小さな老婆の歪曲した背中を私たちは追っていた。焼き杉の廊下が歩く度に、みっしらと音を上げる。


 廊下は黒い杉板が敷かれ、また蛍光灯の間隔が広くなっているため、先ほどの受付部屋に比べると、少々暗く感じられる。

 この杉薫る通路には様々な骨董品が飾ってある。古そうな壷や皿、刀までが陳列棚に展示されていた。その数は数十はあり、老婆の旦那が集めた物らしい。旦那は既に亡くなっているようで、形見として大切にしているとのことだ。

 老婆と亭主の二人で宿を経営していたのであるが、現在は女主人として老婆が切り盛りしている。行楽シーズンになると多くのパートを雇うのであるが、今時期こんじきは客が少ないので、料理人の息子と、湯番一人、仲居として二人のパートを雇い宿を運営していると老婆は言っていた。

 今のところ、老婆以外の従業員は見ていない、客室の掃除でもしているのだろう。


 廊下は、受付から北東に伸びており、受付部屋を出ると、すぐ右に上り階段と、従業員用の地下へ続く階段があった。地下へと続く階段は電気が消され暗くなっていた。

 廊下西側には例の骨董品陳列棚が10メートル程並んでいる。さらに通路を進むと東側に事務所と思われる、従業員の部屋があった。事務所を通り過ぎると客室が東、西、共に五つあり、私たちは東の一番奥の客室に案内されたのだ。

 通路の最深部突き当たりには女湯男湯と暖簾が垂れ下がっていた。この温泉宿は客室にも温泉風呂が完備されているのだ。故に今晩は二人きりで温泉を堪能できるのである。


 老婆は振り返り私たちに、皺がれた笑顔を向け、水分が枯渇した喉仏を震わせた。

 夕飯は十八時三十分より二階、食の間にて用意するので、時間になったら上がって来いとのことである。

 夕飯までは幾分時間があるので、宿内に飾られている骨董品を見て回るのも悪くないと私たちは考えた。


 私たちは老婆に案内され、一階奥に位置する客室へと入っていった。


 客室まで来ると微かに聞こえていた機械音は消え失せていた。

 

※みっしら 茨城弁で「みしみし」という意味。「みしみし」より「みっしら」の方が言音が良かったため使用した。

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