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鳴子たる森  作者: 花美輪 乃霧
第二章
17/20

17 激動たる轟音

 晴天の夜空はしだいに暗思の渦に呑まれ、月は光を失い、狡猾な烏どもが奇声を発し曇天に舞っていく。

 コンクリート増築された宿の裏小屋の配水管から狂熱たる蒸気と共に大地の泉が噴出し、濁流となり川へと流れていた。給水分配器と記された金属とガラス製の四角形たるメータの側に、コックレバーが下に下げられていたのだ。

 能たる面を被りし者たちは大地の遥か下奥で、厳命たる藁で作られし七体の鳴子人形に両手を合わせ額を赤土に擦り続けていた。その者たちは両手を挙げ、そして大地の赤い内臓に静かに降ろすのであった。

 曇天はやがて雷鳴となりて、嵐を呼び覚まし、怒憾に満ちた雷雨と成り果てたのだ。その激撼たる音量は発狂した和太鼓の音に類似している。

 宿舎に泊まる客たちは激しい雷雨の豪景の様子を伺っている。

 外林の木々はへし折れんばかりにたおり歪み、受付け部屋のガラスに大粒と畏風が轟音を立てている。腹を満腹にさせた宿泊客たちは、受付部屋で轟音に覆い尽くされた外林を只見つめるだけであった。

 部屋に飾られた能面の冥府なる瞳に雷光が貫き、木壁を映す。

 松明の暮れ色の赤い内臓に手を合わせる能面の化身たちは鬼畜じみた奇声を発し続け、アニミズム思想を想起させる祭事を行っていた。偶像たる藁人形は彼らの前に立ち呆然と顔面の藁の隙間から、人間の奇声を聞き続けるだけであった。

 宿客らは外の様子を伺う。雷鳴に怯えるものの、純良たる温泉の話に夢中になりだし、全員で共に湯に浸かることを約束したのである。宿客らは畏怖なる空気が漂い始めていることに気づきもせずに、和気藹々とそれぞれが思いゝに語っているのだ。

 薄暗い獣臭い廊下に足を止め、宿泊客らは陳列された剥製の前で、年配の男とワイシャツの男は疑論を交わし、若い女と年配の女、醜女の三人は美人図が描かれた掛け軸を眺めている。一人の若い男は刀を目黒輝かせながら観見していた。

 大浴場に繋がる通路が雷鳴を倍音化し、低音を響かせる。 

 しばらくすると、宿泊客らは各々の部屋へと戻り大浴場に浸かる準備をし始めた。

 月を覆った曇天は光点させながら激動たる轟音を轟かせるのであった。

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これは実際の呪術を使用して執筆された手記です。
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※すでに心臓疾患・精神疾患のある方は絶対に読まないで下さい
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