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鳴子たる森  作者: 花美輪 乃霧
第一章
10/20

10 白妙なる無表情

 私たちは老婆に案内され、二階へと続く階段を上った。

 薄明が照らされている階段は客室を背に東、受付部屋の直ぐ近くにあり、地下へ続く下り階段と二階へ続く上り階段がある。蛍光灯の明かりが薄明に階段の段差を照らしている。

 地下へと続く階段は従業員専用と札が木壁に掛けられ、奥は暗く見えなくなっていた。上り階段の踊り場には、骨董品と見られる壷が一つ隅に飾られている。

 

 腰曲がりの老婆は階段横の手すりを掴み慎重に、段差に足を掛け着実に上っていった。

 階段の幅は二人ならんでも余裕がある広さで、両脇に木製の手すりが取り付けられている。

 左右の壁には歴代宿主人の肖像写真が五枚並んでおり、こちらを見据えていた。

 皺枯れた女将は、階段を上がりきると、右に折れ曲がり歩を進めた。


 二階に上ると、階段の眼前に共同トイレがあり通路は北側に向かって伸びている。照明は一階同様、広い間隔が取られている。東と西側共に客室が二室あり、そこから5メートルほど歩くと西側に遊楽広間と垂れ札に書かれた、北側縦に長い四十畳程の畳部屋があった。遊楽広間と客室の間に、従業員用と記された木製片開きの扉がある。

 遊楽広間の向かい東側に、食の間と書かれた四十畳程の畳部屋が北側に伸びていた。さらに、遊楽広間、食の間の先は突き当たりで、壁には無名の能面が飾られている。

 一階受付部屋にあった能面とは少々異なり、二倍程の大きさで、白妙なる無表情で真っ直ぐ南を見据え、瞑想しているかのような顔相をしていた。


 二階の廊下は一階の木床と違い、赤い絨毯床となっている為、私たち三人の足音は絨毯に吸収され鈍い曇った音質へと変わっていた。

 廊下の壁は最近白く塗装されたようで、照明の光を厚明と反射させている。


 老女将が扉を開けるとそこには二人の宿泊客が、長い座敷食台の前に座っていた。


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これは実際の呪術を使用して執筆された手記です。
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