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予知の威力

4月12日


授業開始から4日がたった。


予定帳にはかなりの量の文字が書かれていたが、この日の分の予知だけはなんとか頭に入れた。


そして、女子生徒(礼儀知らず)の名前もわかった。


黒井しおりというらしい。


まず初めの予知は、俺が担任に殴られる、だった。そしてその状況を視界に入れない、とも書いてある。


これは昨晩遅くに見つけた法則の様なものだが、予知っぽいことの後には必ず、自分(しおり)のとる行動が付属している。


これは、突発的に起こるアクシデントではなく、意識的にとる行動を予定しているということだろうか。


意味がわからん。


とにかく、最初の予知の時間はそろそろだ。ここでなにも起きなければさっそくデタラメだったということになる。


「まぁ、そもそもあり得ない話だと………」

「なにがあり得ない話だってぇ?ぇえ?」


気がつくと、感情を噛み殺したような笑みの担任が拳を握りしめて目の前に立っていた。


「せ、せんせ?何をそんなに怒ってらっしゃるのですか?」


冷や汗ダラダラである。メッサ恐い。


「なにを…?なにをだと…、本気で言ってるのか貴様……っ」


「先生は何か誤解をしています。おそらく騙されているのです。とりあえず話を、話をっ!?」


ゴツッ!


「放課後、職員室に来るように!」


め、目の前がチカチカする。


くそう、何故俺が殴られなきゃならんのだ。


まさか昨日どさくさに紛れて(紛れてきれてない)胸を揉んだことを気にしているわけではあるまいし…………。


あー、そういえば揉んだな。どさくさに紛れて(紛れきれてない)


うん。殴られてもしょうがないか。


痛む場所をさすりながら予定帳の写しに目をやる。


しかし、当たったな。


見事、予知通りである。


次の予知は……、授業中にモンシロチョウが教室に迷い込む、か。そして……………。


それを全力で捕まえて踏み潰すだぁ!?


なんだこの予告ホームランならぬ行動宣言は。


モンシロチョウになんの恨みがあるというのだ!それに全力でとも書いてある。何故全力を尽くすのだ!もっと頑張ることはないのか!


それに……。


あの無口で本ばかり読んでいて、他人に話しかけられると「予定があるので」としか言わない黒井しおりが全力でモンシロチョウを捕まえる姿……。


想像出来ない。想像出来ないししたくない。


そんなことで悶々している間に刻一刻と時間は迫り、とうとう予知の時間、三限目である。


数学の教師が自慢げに公式を説明していた時である。


春にしては少々暑すぎる気温をなだめるため、爽やかな風を送り込んでくれていた窓から、ヒラリ、ヒラリと。


まるで大きめの桜の花びらのように美しく綺麗なモンシロチョウが迷い込んできた。


その幻想的な光景に、クラスの女子達が、わぁっと歓声を上げた。


黒井しおりは虫捕り網を担ぎ上げた。


……………へ?


華麗な跳躍と見事な網捌き。


一振りでモンシロチョウを捕まえるとなんの躊躇もなく………。


グチョっ。


踏み潰した。


そしてそっと網をなおして何事もなかったかのように席に着いた。


なんだか、夢を見ているようであった(悪夢)

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