告白
「好きです、付き合ってください!」
「嫌です、無理です」
さて、早いとこ教室に戻って飯食うか。こんなのに構っていられるほどおれも暇じゃない。
踵を返しこの場を去ろうとしたが、どういうわけか足が前に出ない。どうやら女が制服の裾を摘んでいるようだ。
かまわず歩き出そうと試みる。、、、ん?なんだ?全然動かない。
まぁ、まだ本気の半分ほどしか出してないからな。
さらに強く踏み込む。
動かない。
さらに強く。
、、、。
さらに、、、。
「ふんぎぎぎぎ、、、っ!!」
アカン、全然動かへん。動かなすぎて関西弁が出てしまった。(エセ)
女は漫画などで良くある裾をチョコンと摘んでいるだけなのに、全力を出しても離せない。とんだ化け物だった。
いい加減に離せよと視線で訴えようと振り向いたら、
「、、、即答。結構勇気出したのに、即答」
なにやらブツブツ言っている。うん、すごく怖い。
目もどこか遠くを見ていて、俺の制服の裾を摘んでいるのもどうやら無意識らしい。無意識でこんな力出せるとか、寝相で人を殺せそうだな、こいつ。
まぁ、こんな幼稚な力比べに意地になってもしょうがない。(言い訳)
高校生にとって貴重な昼休みをお互いに無駄にしないため提案する。
「なぁ、離してくれないか?そろそろ戻りたいんだが」
すると我に返ったように目の焦点が合い、
「ご、ごめんなさいっ」いや、だから離して貰わないともどれないんだが。
どうしたものかとその場に留まっていると、女が先に口を開いた。
「あの、告白の返事、もう少しだけ考えてくれませんか?、、、それでダメだったらあきらめますから」
即答で断られたのにも関わらず、まだ食い下がるのか。
、、、なんてあざとい女なのだ!
この俺も舐められたものだ。こちとら几帳面さと用心深さには絶対の自信がある。それ故こんな見え透いた嘘にひっかかる筈もない。
この女は嘘を付いているのだ。
なぜなら、俺はこの女と話したことがないのだから。話したこともない相手をどうして好きになるだろうか。
いい加減にこの不毛なやり取りを終わらせるため、ズバンと言ってやることにした。
「何が目的だ?」
「、、、は?え、っと、目的?」
この女、まだシラを切るつもりか。どれだけ貫き通すつもりなのだ。
「金か?金が欲しいのか?言っておくが俺の財布の中にはポッキー二箱分くらいのかねしか入ってないぞ!残念だったな!」
「いやいやいや!いらないですよ!それに残念なのはあなたの財布のなかみです!」
「ええいやかましい!ホラ、受け取れ。俺の全財産だ。これやるからもう解放してくれ!」
「いるかぁこんなはした金!!もういいです私が間違ってました!」「ぐはぁっ」
去り際に溝打ちを放たれて悶える。
俺のことが好き嫌いどうこうではなく、女であるかも疑わしくなって来た。苦しい。
基本的に、馬鹿には馬鹿力が備わっているものであり、あれ程低レベルな嘘をつく怪力女は余程のバカ女なのだろう。
Q.E.D.証明終了