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少年
私があたたかい気持ちに浸っていると、
突然ジークが威嚇するように唸り声をあげた。
「?」
不思議に思って彼を見上げると、私の後ろにいる誰かを睨みつけているようで。
彼の腕の中で体をひねり後ろを振り返る。
そこには…
「あなたは確か…」
先程のお客さんの中にいた、少年だった。
淡いブルーの瞳と目が合う。
「あ…の……」
息が上がっているところをみると、走ってきたようだった。
「はい?」
「父が…
あなたに直接お礼を言いたいと……」
私は不機嫌そうに唸り続けているジークを軽く制すると、きちんと少年に向き合った。
「あの……ごめんなさい。
お気持ちは嬉しいのだけれど、私…」
ジークの首に巻かれた包帯に滲む血を見上げる。
「彼の手当を、一刻も早くしたいの。
大切な、人だから……」
少年はジークの痛々しい姿と、私の真剣な顔を見ると、悲しげに微笑んで頷いた。
「分かった。父には上手く伝えておくよ」
私は満面の笑みを浮かべる。
「ありがとう」
すると、少年は目を見開いて。
少しの間固まったあと、
「じ…じゃあ……」
踵を返すと、テントへと走って行った。
その後ろ姿を見送っていると、
肩に大きな手が置かれた。
振り返るとそこには、ぶすっとしたジークの顔。
「ごめんごめん、すぐ手当てするから…」
私はそう言うと、リュックから傷薬を取り出した……




