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空翔る竜と私  作者: mikito
7/12

怒り


 そんなやりとりを幕の後ろで聞いた私は、心から安堵した。

(よかった…)

手の甲で額の汗をぬぐっていると、後ろから使用人に声をかけられた。

「突然のことでしたのに、ありがとうございました」

「いえ、そんな…」

「こちらにお荷物をお持ちしました」

私はお礼を言いながら自分のリュックを受け取ると、

中に瓶入りの傷薬が入っていることを確認した。

「それと、ご主人様から、今回身に着けた物はすべて報酬として授与する、と言付かっています」

私は驚いて目を見開いた。

「そんな、こんな高価なものを…」

咄嗟に断ろうとしたが、そんなことをすればかえって失礼だということに思い至る。

使用人は微笑んで頷くと、出口へと案内してくれた。

私は見送ってくれる使用人にぺこぺこしながらテントを出た。


途端に、強い日差しが体を突き刺す。

(ジーク、大丈夫かしら…

椰子の木陰にいてくれるといいんだけど…)

そしてジークの元へと帰ろうとした、その矢先。

私は、少し足を引きずりながら街へ入っていこうとする人影に気付いた。

(あれは…)

「ジーク!」

私の声に気付いたジークはこちらへ振り向き、

走り寄ってくる私の姿を見ると、みるみるうちに顔が険しくなった。

そして近くまで来た私の腕をものすごい力で掴むと、

壊さんばかりの勢いで腕輪を外し始めた。

「ちょっと、ジーク! 落ち着いて!」

しかし彼の怒りはとどまるところをしらず、腕をつかむ力はさらに強くなった。

「いたッ…」

すると、私が苦しいと感じたことを感じ取ったのだろう。

彼はパッと私の腕を掴む手を放し、

申し訳なさそうな、それでいて私を咎めるようなまなざしで見つめてきた。

彼の言いたいことは分かる。

私にこの格好をさせること……私を踊り子にさせることが、彼にとってどんな意味を持つのか、ということも。

彼の怒りが大きいのは、それだけ私を大切に思っていてくれている、ということ。

悪気はなかったとはいえ、彼の心を乱してしまって、本当に申し訳なかった。


私はそっと、心を込めて、背の高い彼の胴を抱きしめた。

「ごめんなさい…

でも、私は大丈夫、大丈夫だから……」


(…あれ?)


目から零れ落ちる涙が、頬を伝った。

思わず手で拭おうとすると、

それよりも先にジークが私を力強く抱きしめてきて、身動きがとれなくなる。

けれどもそれは、さっきと違って、とっても優しい力強さだったから。

涙なんて、止まってしまった。

幸せで、しかたがなかったから………



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