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空翔る竜と私  作者: mikito
2/12

狩り人

 出発してから、小一時間ほど経っただろうか。

岩山の先に広がる砂漠の中に突如現れたオアシス。まるでそこだけが異世界のように。

大きな湖を囲んで、数多くの丸いテントが所狭しと並んでいる。

不毛の大地の中、定住することのできる貴重な場所…

「今回の街は、けっこう大きいわね」

私が体を低くして、ジークの耳に向かって嬉しそうに言うと、

彼も嬉しそうに唸り声をあげた

――― その時。

私の右頬の近くを、下から飛んできた何かが通り過ぎた。

ジークは機敏に身体をくねらせて進路を変えつつ高度を上げる。

下を見ると、まばらに転がっている巨石の一つの陰に、こちらへ矢を放つ人影をとらえた。

「また…」(ここにも、狩り人が…)

竜を狩って高値で取り引きしようとする族は、後を絶たない。

「ジーク、大丈夫?」

立派な二本の角を握る手の片方を放し、鬣をなでながら語りかける。

彼は何もなかったかのように唸って答えたが、速度と高度は明らかに落ちてきている。

(もしかして、矢が身体に…?)

「手当てするから、早く地上に…

もう傷薬は切らしてしまったから、街で手に入れないといけないわ」

しかし、ジークは尚も飛び続けようとする。

(もう、変なところで意地っ張りなんだから)

「…降りてくれないなら、私、飛び降りるわよ」

長い付き合いだ。ジークは私が言い出したら聞かないことを知っている。

彼はしぶしぶ、高度を落とし始めた…



 街から少し離れたところにある鬱蒼とした椰子の林の中へと、静かに降り立つ。

私はすぐに地面へ飛び降りると、ジークの身体を見てまわった。

矢がかすった傷が数ヶ所と…一本の矢が、首の近くに深々と突き刺さっている。

意識がしっかりしているところをみると、毒矢ではなかったようだ。

安堵の息をついた私は、すぐに心を鬼にした。

「抜くわね」

彼が身構えるのがわかる。

太くて立派な矢を両手でしっかりと掴み、一気に引き抜く。

途端に、傷口から血が滲み出す。

彼は必死に平静を装っているが、激しい痛みに耐えているのが痛いほどわかる。

治癒力の高い彼でも、この傷は簡単には治らないだろう。

私は意を決すると、

「待ってて。薬を買ってくるわ」

踵を返すと、街へ向かおうとする。

薬だけではなくお金も底をついているのを知ってか知らずか、

彼はすぐさま抗議の唸り声をあげた。

そして唐突に人の姿になると、私の左腕を掴んだ。

その金色の目は、私を一人で行かせるわけにはいかない、と訴えていた。

「でも、怪我してるんだから…」

と、私は彼の首の付け根のあたりから滲み出す血に気づき、すぐにスカートの裾を破ると、包帯にして手早く巻いた。

それから、預かっていた彼の着物の腰紐を取り出すと、優しく結んだ。

「私なら大丈夫。動くと血が出てきてしまうわ。ここで少し、待ってて」

尚も不服そうな彼を残し、私は街へと駆け出した………


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