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空翔る竜と私  作者: mikito
12/12

出会いとはじまり

〈 その日、私はいつものように踊っていた。

サーカス団の公演の、前座として。

鮮やかな彩色の施された、大きな大きなテント。

天井は遥か、遥か上にある。

舞台に立つ私を無遠慮に見つめる、大勢の観衆。

今日は特に、大入りだ。

踊る私のすぐ後ろ、布で覆われた大きな檻に入っている、

今日の目玉の出し物が目当てなのだろう。

舞台裏からは、出演者や動物たちの声が聞こえてくる。

華奢な手足に重ねてつけた金メッキの輪が、動くたび互いにぶつかって音を立てる。


私の、この黒髪がなければ、今も私は、奴隷として酷使されていただろう。

奴隷と踊り子に、大差はないけれど……


物心がついた時、私はもうすでに“売られて”いた。

親の顔は覚えていない。

今から数年前、ここの団長が私を… “買い取った”。

それだけが、確かなこと。


「あ…!」

突然、目がくらんだ。

思い当たる理由は数えきれないほどある。

目眩は、日常茶飯事だった。

問題は、今、私が踊らなければいけない時だということ………


思わず倒れた私に、一斉に観客から罵声が飛ぶ。

舞台袖から出てきた団長が、私を鞭で叩く。

太い鞭が風を切る音がうなる。

叩かれたところが燃えるように熱くなる。

「いいぞ!」「もっとやれ!」

団長を煽る群衆の叫びの渦。

頭を抱えて縮こまり、あふれる涙を、必死にこらえる。

(これは現実じゃない、現実じゃない……)

いつものように、私は痛みを忘れるため、自分に言い聞かせる。

そう、これは全部、夢………


――― 耳をつんざく、怒りに満ちた咆哮。


その場にいた人々が、水を打ったように静まりかえる。

そして皆の視線は、私の後ろの大きな檻へ。

なおも続く咆哮に加え、

何か大きくて重いものが、ものすごい力で檻に向かって中から体当たりする音が響き始め、

我に返った団長が慌てて指示を出す。

「おい、静かにさせろ!」

係の者が袖から飛び出してきて、檻の中のモノをなだめようとする。

そのとき。

布の間から、大きな金色の瞳がきらめくのが、見えた。

次の瞬間。

少しひしゃげてできた、檻の隙間から。

布を被って何かが、私のもとへと駆け寄ってき、て。

人間の大きさのそれが私に触れ、て……

気が付くと私は、大きな竜の背中に、うつ伏せになっていた。

視線を上げると、目の前には立派な鬣と、二本の角。


何が何だかわからず目を白黒させていた私に。

私の、心に。

(つかまれ)

そう、力強い声が呼びかけてくれた。

そんな、気がした。


私が半ば無意識に二本の角を握ると、

“彼”は勢いよく飛び立った。

私が捕われていた巨大なテントを、ぶち壊して。

星のきらめく、漆黒の夜空へ。


“彼”のぬくもりが、

夢みたいなその状況が、夢ではないと、思わせてくれて……

凍えるように冷たい夜風さえ、心地よく、感じられたの、だったーーー 〉




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