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なまえ
やはり良品であったらしく、金の腕輪と足輪は、かなりいい値段で買い取ってもらうことができた。
ずっしりと重くなった財布に心が弾む。
と。その時。
後ろから控えめに肩をたたかれ、驚いて振り向く。
そこには、先ほどの少年。
「やっぱり、君だった」
淡いブルーの目が細められ、はにかんだ笑みを浮かべる。
彼が少したれ目であることに気付く。
「いきなり、ごめんね。知らない人ばかりだったから、何だか心細くて……
商談がひと段落したから、少し市場を見てみようと思って、抜け出してきたんだ。
あ、その首飾り、よく似合ってるね。踊りもすごく…よかった。父も、直接お礼が言えなくて、とても残念がっていたよ……」
勢いよく話されて私が何も言えないでいると、
「あ、ごめんごめん。僕はルキ。
出身は……ずっと遠くから来た、とだけ言っておくね」
彼は私を愛嬌のある笑顔で見つめながら、そう自己紹介した。
「そうなの…」
「あ、そうだ。君の名前は?」
ーーー なま、え。
私は、その問いに固まった。
ルキが不思議そうに、数回瞬きをする。
「私…」
「ん?」
「ごめんなさい、私…
私の名前、忘れてしまって…… ずっと前から、わからないの………」




