雨宿り
空から、ちいさな雨粒がひとつ
私のひび割れた下唇へと落ちてきた。
ジークが低く唸ると、その振動が伝わってきた。
「そうね、雨宿りしましょう」
ごつごつした鱗に覆われた長い身体をくねらせると、ジークは高度をゆっくりと落とし、
眼下に広がる岩山はどんどん大きくなる。
やがて、雨をしのげるサンのある小さな岩棚へ、そのたくましい指と爪からは想像もできないほど繊細に、地面をつかむように四肢で着地した。
「ありがとう、上手ね」
私が微笑んでそう言うと、
ジークも嬉しそうに長い二本のひげを揺らす。
私は地面に降り立つと、彼の横に岩を背にして座り、もふもふした鬣に頭をあずけた。
雨は次第に強くなり、岩に水の浸み込む匂いがした。
自然と、瞼が重くなる。
二人はいつしか、深い眠りに落ちていった……
一晩中続いた雨も朝にはカラリとあがり、
朝日が眩しいばかりに射しこんできた。
私は眼を瞬かせながら開けると、私の頭を支えてくれている肩の感触に気付いた。
やや視線を上げると、すやすやと眠る少年の横顔。
その肌は朝日に照らされて、ほんのりと虹色に光っている……
「きれい……」
この色を見ると、心が安らぐ。
私はそっと彼の肩から頭をどけようとした…が、やはり起こしてしまった。
低く唸りながらゆっくりと瞼を開ける彼に、私は詫びた。
「ごめんなさい、私の頭、重かったでしょう……」
彼はその金色の瞳で私を見つめると、柔らかく微笑んで首を左右に振った。
―― 彼は優しすぎる。
分かっているはずなのに。甘えていてはいけないのに。
その優しさに触れるたび、心があたたかくなって仕方がない……
彼は大きく伸びをすると、元の姿へと戻った。
虹色の鱗が朝日に輝く。
私も体を伸ばし、髪を整えて、ひとつに結い上げた。
私の頭の中に入っている地図によれば、もうすぐ大きめの街に着くはず。
そこで、有益な情報が得られればいいのだけれど……
固い鼻にそっと背中を小突かれて振り返った私は、ジークを待たせてしまっていたことに気がついた。
大きな金色の瞳は「行こう」と言っている。
「そうね、行きましょう」
悩んでいても仕方がない。
まずはそこに、行ってみなければ……




