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【1】君のためなら



 カーテン越しに朝日が差し込む頃になってようやく目覚まし時計のベルの音で目が覚める。なかば習慣のように隣を見てもやはり誰もいない。その事実に今日も気づいてしまったことに小さくため息をついて起き上がる。これが僕の日常だ。いつもと同じように顔を洗って、いつもと同じ朝食を食べて、いつもと同じスーツを着て、いつもと同じように仕事に出かける。この淡調な日々がかれこれ半年も続いている。でも誤解しないでほしい。僕がただ無気力なのではない。半年前までは僕も明るく、もっと人生を楽しんでいた。そう、半年前に彼女……瑠衣が突然いなくなるまでは。行き先も告げず、僕が洗い物をしている最中に出ていってしまったのだ。僕の名誉のために言っておくが、僕らは仲がとても良かった。断じて彼女に夜逃げされたのではない。その証拠に、彼女は結婚指輪を持って行っている。僕らは結婚2年目の新婚夫婦なのだ。夜逃げならばまだ子供のいない僕らにとつては愛の結晶である指輪も置いていくはずだ。僕らは大きな喧嘩をした事もなく、彼女もいつも笑顔で僕を支えてくれていた。もちろん僕も瑠衣を愛していた。この世の何よりも、と胸を張って答えられる。

 それではなぜ、彼女は突然いなくなってしまったのだろう? その理由は今でもわからない。何度考えてみても思い当たる節はなく、いつも堂々巡りだ。愛する妻がどこにいるのか、無事なのかもわからない状態で一体どうしろというのだろう。



早く戻ってきてよ、瑠衣。君のためなら僕は何だってするから。世界中の人間に恨まれてもいい。命を落としたとしても構わない。身体も命も心も愛も.....僕の全てが君のものだ。

だって、君を誰よりも愛しているから。



 .......瑠衣は? 瑠衣は僕のことをどう思っていたんだろう。彼女が僕に愛の言葉をささやいた事がかつてあっただろうか。『好きだよ』 『愛しているよ』と言うのをきいたことがあっただろうか。そう言うのは僕ばかりで、それを聞いて瑠衣はいつも恥ずかしそうにはにかむばかり。本当に君は僕の事を愛してくれていたのだろうか。今となっては誰にもわからない。知っているのは瑠衣ただ1人だけだ。確かめようにも瑠衣は行方がわからない。生きているのかさえわからないのだ。



 ……君の本心が、知りたい。




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