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ジリリリリリ!

目覚まし時計の音が鳴り響き、アルナは身体を起こした。


「ふわぁ…眠い。」


アルナは大きな欠伸をして制服に着替え始めた。

今日は魔法学校ランドル学園の通常授業が始まる日だ。


エドガーの呪いをとく依頼を正式に受けることになり、ペンドルトン一族が去った後、アルナはハリスとヴァンと呪いの対処方法の詳細を話し合い、夜遅くに寮に帰ってきた。

おかげで寝不足のアルナは朝ごはんを少しだけつまみ、寮をでて教室に向かっていた。

すると後ろからガバッと抱きつかれた。


「アルナ、おはよう!もう体調は良くなった?」

「シェリー、おはよう!体調は大丈夫!昨日はごめんね。王都散策一緒に行けなくて。」

「気にしないで。病院でトラブルが発生したなら仕方ないわよ。それよりエドガー様とあれから何かあったんじゃない?」


うきうきとシェリーはアルナを見つめる。


「…エドガー様がうちの病院の患者になった。」

「え?患者?なんでそうなるの?

というか、アルナ説明はしょりすぎじゃない?」

「だってシェリーの期待する展開はないよ。」

「えー!アルナにも恋の予感って思ったのに!ロナウド殿下も気にしてたわよ。」

「もーあのやり取りのどこに甘い空気を感じたの?エドガー様が猫被ってただけだよ。」

「…悪かったな。猫被りで。」

「うわぁ!でた!」


後ろを振り向くと不機嫌そうなエドガーと微笑むロナウドがいた。


「でたとはなんだよ。お前本当に失礼だな。」

「いきなり出てこないでくださいよ。心臓に悪いです。」


するとぶはっ!とロナウドが吹き出した。


「エドガーにこの対応…。いやーエドガー相手にビンタくらわせ、眠らせて逃亡成功させるアルナ嬢は本当にすごい…。ぶっ…。」


ツボにハマったのか、くすくす笑うロナウドを横目にエドガーはため息をついた。


「…ロナウド。それ以上笑うなら容赦しねぇぞ。」

「いや、これは笑うでしょ。邪龍を倒した英雄が女の子1人にやられっぱなしって。」

「ちょっと待ってください!ロナウド殿下、なんでそれを知ってるんですか?」


「だって僕ビンタの跡も目撃してるし、オリエンテーションの後、ベットですやすや寝てるこいつを起こしたのも僕だよ?何があったか気になり過ぎてさ、王子命令で昨夜エドガーに話してもらったんだよ。」

「エドガー様にビンタって一体何があったの?アルナ、私に教えて?」

「ちゃんと説明すると…むぐ!むー!」


アルナの口はエドガーの手で塞がれた。

エドガーの顔を見るとじろりとアルナを見ていた。

アルナがエドガーの手をバシバシ叩くと、

エドガーは黙って手をアルナの口からのけると、そのままアルナの腕を掴んだ。


「ぷはっ!エドガー様!何するんですか!」

「…ちょっとこいつ借りるわ。」

「いってらっしゃーい。シェリー。先に僕らは教室に向かおう。」

「えー!気になりますわ!」

「ちょっと!エドガー様、腕引っ張らないで!」


アルナはエドガーにずるずると引きずられていく。

人気のない廊下に着くとエドガーはアルナの手を離して、アルナを睨んだ。


「お前さっきなんで話そうとした?俺達の秘密バラすつもりか!」

「全部は話しませんよ!秘密がバレないようにかいつまんで…。」

「バカ!俺の見立てだが、シェリー嬢は勘が鋭い。少しの情報でも気が付かれる可能性がある。あと、お前嘘下手だし、ポロッと秘密バラしそうで信用ならねえよ。」


「な!そういうエドガー様もロナウド殿下にバラしてるじゃないですか!」

「王子命令って言われたら仕方ないだろ!あいつは俺の火傷のことも責任感じて心配してたし、言わざるえなかったのもあるが…。」

「責任…心配?そういえば火傷を負ったの王子を庇ったからって聞いたけど、もしかしてその王子ってロナウド殿下?」


「…そうだよ。バラしたっていっても、契約通り、ロナウドにはお前の浄化スキルや俺の呪いのことは言ってない。大火傷でお前の病院に世話になるって話してある。あとお前の治癒スキルのことはビンタの跡がなくなったことを説明にするのに話さざるえなかったから、それは許せよ。」


「治癒スキルのことは隠してないので話して大丈夫ですよ!そういえば、私もシェリーにエドガー様がうちの病院の患者になったのは話しました。」

「それはいいが…。とりあえず、もうこの件についてこれ以上シェリー嬢に話すな!他の奴にもだ!」


「秘密はバラさなければいいんでしょ?それなら大丈夫!私が抱きつかれたり、拉致られた話を…あれ?呪いの事情を伝えずにこれだけ話すとエドガー様が変態みたい?」


それを聞いたエドガーがピクッと震え、真顔でアルナに近づいてきた。

アルナは後退するも背中が壁にぶつかり気がつくと、廊下の壁際に追い詰められていた。

エドガーは軽く片手を壁につき、アルナを見下ろした。


「お前…何が大丈夫だ?お前に任したら俺の評判が地に落ちるわ!お前は何も話すな。いいな!」

「近い近い!分かったから!話さないと誓うから!離れてください!」

「ったく。ほら、教室行くぞ。」


エドガーはアルナから離れるとスタスタと教室に向かう。

アルナはエドガーの後ろを歩く。

心なしかエドガーの耳が赤くなっているように見えた。

教室に着くとエドガー様だわ!と騒ぐ声が聞こえる。

アルナはエドガーの取り巻きに巻き込まれないように距離をとってこそっと教室に入った。

教室を見渡すと、シェリーは1人の女の子と談笑していた。

シェリーはこちらに気がつき、手を振った。


「アルナお帰り!えーと…なんか疲れてるけど大丈夫そう?」

「いろいろあったけど、無事帰還できたよ…。」

「本当は詳細聞きたいんだけど、ロナルド様に『アルナ嬢が大変な目にあうからあんまり詮索しちゃダメ』って言われたの。だからアルナが言いたくなったら話してね。私いつでも聞くから!」

「きっと一生話せないんじゃないかな?」


アルナはふっとため息をつくと、シェリーの横から熱い視線を感じ、そちらを見た。

そこにはオレンジ色の長髪をポニーテールでまとめた女子生徒がパッチリとした目でアルナを見つめていた。


「綺麗なふわふわの髪に宝石みたいな青い目…まるで天使みたい!さすが『不滅の騎士』様の箱入り娘さん…はっ!じっと見てごめんなさい。私はリナ・ダグラス。ダグラス伯爵家の長女なの。よろしくね。」


「箱入り娘さん…?えっと私はアルナ•ハーストンです。こちらこそよろしくね。」

「アルナ、この子あなたに会いたかったみたいよ。」

「ちょっとシェリー様!恥ずかしいわ。」

「私に?なんで?」

「えっと、アルナ様!私ね、魔法騎士団に所属してるんだけど、あなたのお父さん『不滅の騎士』に憧れてて!その騎士様の娘さんがクラスメイトになるって聞いて、私興奮しちゃって!」


「あなた、女騎士なの?かっこいい!それにしてもうちのお父さんそんな有名?」

「え?知らないの?実の娘なのに?」

「うちのお父さんに聞いても教えてくれないの。他の人に聞いてもお父さんに口止めされてるみたいで話してくれないし。」


「じゃあ教えてあげるわ!高い戦闘力をもち、治癒魔法を駆使して致命傷を負っても決して倒れない英雄!その名も『不滅の騎士』!魔法騎士団の本部には肖像画が飾られててそれがまたイケメンなのよ!」


「ほんとハリス様イケメンよね!リナとさっきまでハリス様の話で盛り上がってたのよ。昔は私も好きだったなあ。今はロナウド様が1番だけど。」


「うちのお父さんの肖像画飾られてるの?何それ見たい!」

「私は今の騎士様を見たい!絶対イケオジよ!」

「じゃあ写真見せようか?今持ってないから今度になるけど。」

「え?いいの?ありがとう!アルナ様!」

「アルナでいいよ。えーとリナ様って呼べばいい?」

「リナでいいよ!アルナ、今更だけど私と友達になってくれる?」

「こちらこそよろしくね!」


アルナとリナが笑い合っていると、オレンジ髪の青年がリナの肩を叩いた。


「リナ、今度の訓練の件で相談なんだけどって…あ。今取り込み中だった?」

「あ!リオ、いいところに来たね。シェリー様とアルナ、紹介するね!こいつリオっていうの。私達双子でね、リオも魔法騎士団に所属してるんだよ。」


リオと紹介された青年はアルナ達を見て気さくに笑った。


「リオ・ダグラスです!俺もA組なんだ。よろしく!えっとこちらのお二人は…?」

「シェリー・ブライスよ。リオ様よろしくね。」

「シェリー嬢…?あ!思い出した!ロナウド様の婚約者!」

「指さしたら失礼でしょ!シェリー様ごめんね。」

「痛え!リナ、頭叩くなよ!すみません。シェリー嬢。んでこっちの彼女は…。」

「アルナ・ハーストンです。よろしくお願いします。」

「リオ。アルナはあの『不滅の騎士』の娘なのよ!」


リオは驚いた表情をすると、目をキラキラと輝かせた。


「あの英雄の?すげー!もしかしてお願いしたらサインとか…。」

「うーん。サインは難しいかも…。写真を見せるぐらいはできるよ。」

「写真だけでも嬉しいや!ありがとう!いやー俺達ラッキーだな!」


笑うリオをアルナは見ていたが、あることに気がついた。


「リオ様、左手に包帯巻いてるけど怪我したの?」

「あー昨日、風魔法と剣を組み合わせた攻撃の訓練してたらちょっとミスってさ。手の甲に風魔法が直撃して切り傷だらけ。後で保健室行こうかなと思ってたんだけど。」

「良かったら私が治そうか?」

「アルナ嬢、治癒魔法使えるの?じゃあお願いしようかな?」


そういうとリオは包帯を解いた。

左手には深い切り傷が数箇所見られた。

アルナはリオの左手を両手で包むと治癒魔法をかけた。


「なんか手が暖か…ひぃ!」


リオはアルナの背後を見て怯えていた。


「え?どうしたの?あとちょっとだから待ってね…。よし!もう大丈夫!」


アルナがリオの手を離すと、リオは後ろに下がった。


「ア、アルナ嬢、ありがとな!エドガーお前怖えよ!なんで睨んでんだよ!」


アルナが後ろを振り向くと背後にエドガーがいた。


「いつの間に!エドガー様、何してるですか?」


エドガーは不機嫌そうにリオを睨んだ後、アルナの方を見た。


「お前さ、誰にでもそういうのすんの?」

「治癒ですか?怪我してる人は放っておけない性分なんですよ。」

「…そうかよ。」


不満そうに見てくるエドガーにアルナが困っていると、チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。

エドガーは舌打ちすると、席に戻っていく。アルナとリオは目線を合わせ、ほっと息を吐いた。


「あいつ何なの?意味わかんねえ。アルナ嬢分かる?」

「…私も分からない。」


席に戻るエドガーの背後からは瘴気が少し漏れ出始めていた。


(さっきまで瘴気でてなかったのに!なんで?もしかして私が気がついてない瘴気の発生条件が何かあるのかもしれない。)


アルナはモヤモヤしつつ席に座り授業を受けるのだった。

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