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「やっと昼休み!アルナ!食堂にお昼ごはん食べに行きましょう!」


午前の授業が終わってお昼休みになり、シェリーはアルナのところに駆け寄ってきた。

午前は座学ばかりだったが、アルナの好きな魔法の話ばかりであっという間に時間は過ぎていった。


(魔法薬学では薬草の新しい効能知れたし、部屋で早速薬作ってみよう!ん?そういえば私、朝方なんかモヤモヤしてたような…。なんでだっけ?)


首を傾げるアルナの肩をシェリーが叩く。


「アルナー!聞こえてるー?」

「は!ごめん!お昼ごはんだよね?」

「そうそう。早く食堂行って食べとかないと。

午後は魔法実技だから昼休みの間に運動着に着替えないとじゃない?」

「そうだったね。実際に魔法使えるの楽しみ!Bクラスと合同授業なんだよね?」

2人が食堂に向かおうとすると、リナが駆け足で近づいてきた。

「シェリー様、アルナ!私もお昼ごはんご一緒していい?」

「もちろん!一緒に食べましょう!」


3人は食堂でご飯を早めに済ませ、運動着に着替えると魔法実技をやる実習場へ向かっていた。


「Bクラスも一緒ってことはあいつらもいるか…。また女子が騒ぎそう。」

「リナ、あいつらって?」


不思議そうにアルナはリナを見た。


「Bクラスにもロナウド殿下やエドガー様みたいなイケメンが2人いるのよ。4大公爵家の子息がね。」

「そうだわ!すっかり忘れてたわ。ロナウド様には悪いけどイケメンを拝めるのは楽しみね。」


ふふふと笑うシェリーを横目にリナはため息をついた。


「あいつら顔が良いのは認めるんだけど、周りが騒ぐのがちょっとね。あーほら予想通りよ。」


アルナ達の目先には実習場で騒ぐ女子生徒の集団が見えた。

シェリーはアルナとリナの手を握った。


「2人とも、あそこに突っ込むわよ!」

「シェリー、もしかしてあの奥にロナウドがいたら、またロナウド殿下にたかる子達に牽制を…?」

「それもあるけどB組イケメンズが見たい!」

「欲望に忠実!シェリーがこうなると嫌だって言っても無理なのよね…。」


アルナとリナは諦めてシェリーについて行く。

人混みをぬけると、白銀の髪の青年とブルーバイオレット色の髪の2人の青年が立ち話をしていた。

アルナは白銀の髪の青年を見つめた。


(あの白銀の髪の男子生徒!エドガー様に連れてこられた男子寮から脱出するの手伝ってくれた人だ!たしか名前は…。)


「ルイス…?」


ぼそっとアルナが呟くと白銀の青年がアルナに気がついて振り向いた。

嬉しそうに笑うとアルナに近づいてきた。


「アルナ!やっぱり会えたね。俺の事思い出した?」

「えーと、ごめんなさい…まだ思い出せてないんです。」


そう言って申し訳なさそうにアルナがすると、右手をルイスに握られた。

ルイスはアルナに顔を近づけ耳元で囁いた。


「アルナ、敬語は?」

「あ、使っちゃ駄目なんだっけ。ごめんね。」

「いいよ。名前はちゃんと呼んでくれたからね。」


そう言って優しく微笑むルイスをアルナが見つめていると、アルナは誰かに左腕を掴まれ後ろに引っ張られて、ルイスから引き離された。


「誰が引っ張ったの?って…エドガー様!」

「エドガーどうしたの?何か俺達に用かな?」

「…別に用はねえよ。」

「その割には何か言いたそうに見えるけど?」


ルイスとエドガーが向かい合っていると、エドガーの後ろからロナウドとリオもやって来た。


「エドガー、いきなり急いでどうしたのって…ルイス達じゃないか。そういえば君達はB組だったね。」

「いきなり駆け足になんなって!あ、リナ達にルイス達もいるじゃん!なるほど。だからこの人だかりか!」

「ロナウド殿下。挨拶が遅くなってすみません。クラス離れちゃって残念です。リオは相変わらずだね。」


ブルーバイオレット色の髪をした青年もアルナ達に近寄ってきた。


「ロナウド殿下、俺も挨拶出来てなくてすみません。4大公爵家の中でエドガーだけ殿下と同じクラスになるとはね。」

「…なんか文句でもあるのか。ジュラルド。」

「別に深い意味はないよ!引きが強いなあと思っただけ。」


ジュラルドと呼ばれた青年はにこっと笑うとアルナ達を見た。


「それにしてもA組は可愛い子が多いね。俺はジュラルド・ラッセル。ラッセル公爵家の次男だよ。俺もルイスも魔法騎士団に所属してるんだ。仲良くしてね。」


そう言ってジュラルドがアルナの手を取ろうとした時だった。

ジュラルドの頭の上に水の球体が現れて、パンと割れ、ジュラルドはびしょ濡れになった。

ジュラルドば黙って髪をかきあげるとルイスを見た。


「…これルイスの仕業でしょ。」

「さあね。女好きはほどほどにってことじゃない?」

「ジュラルド、僕の婚約者には手を出しちゃダメだよ。」

「ロナウド殿下まで!俺そんな信用ないの?」

「ジュラルド様は女の子大好きだからシェリー様とアルナは気をつけてね。」

「リナ嬢も?みんな辛辣だな。俺傷ついちゃったよ。」


ため息をついたジュラルドは風魔法で水を乾かした。

ルイスはジュラルドをちらりと見た後、シェリーとアルナに向き合った。


「リナは魔法騎士団でもう顔見知りだから、挨拶は不要だよね?自己紹介が遅れたね。俺はルイス・シェラード。シェラード公爵家の長男だよ。よろしくね。」


ルイスは穏やかな笑顔を見せた。

シェリーはその笑顔に一瞬見入ると、はっとした。

一方、アルナはなにやら慌て始めていた。


「こちらこそですわ。私はロナウド殿下の婚約者のシェリー・ブライスです。」

「ルイスって公爵家だったの?えっと、私はアルナ・ハーストンです。あの、身分的に私が名前呼び捨てで敬語も使わないのは失礼だからやめとく…」


「アルナ、駄目だよ。約束したでしょ。秘密バラしてもいいの?」


ルイスはにっこり笑ってアルナを見つめる。


(秘密って男子寮に私がいたことだよね?バラされるとみんなに変な誤解されるのでは?エドガー様に拉致られたことがバレる可能性だってあるし…。)


アルナはエドガーをチラリと見て、心に決めた。


「分かった!ルイスがいいならそうする!」


エドガーは慌ててアルナの左腕を引っ張り、アルナの耳元で囁いた。


「ちょっと待て。なんで俺を見た?お前秘密ってまさか…。」

「エドガー様の呪いのことじゃないですから安心してください。私の名誉に関わることです。まあ、発端はエドガー様ですけどね。」


アルナはエドガーだけに聞こえるように小声で答えた。


「はあ?意味わかんねえよ。俺にもルイスとの秘密話せ。」

「話してもいいですけど…わっ!」


ルイスはアルナの右腕を掴んでエドガーから引き離した。


「2人でこそこそ何の話してるの?俺にも教えてよ。」

「…ルイス、こいつと話させろよ。」

「さっきエドガーだって邪魔したでしょ。」


エドガーはアルナの左腕を、ルイスはアルナの右腕を掴み、互いに睨み合っていると、ロナウドが2人に近づいた。


「はいはい!2人とも落ち着いて。アルナ嬢が困ってるでしょ?もう授業も始まるよ。」


はっとしたエドガーとルイスがアルナを見ると、アルナはエドガーの方を凝視していた。

正確にはエドガーの背後をじっと見ていた。


(エドガー様からまた瘴気が発生しだしてる!なんで?そうだ、思い出した!朝方のモヤモヤしてた原因これだ!)


瘴気にぶるりと寒気がしたアルナは思わず、エドガーから距離を取り、ルイスの方に寄っていく。

それを見たエドガーは眉をひそめた。


「お前…なんでそっち行くわけ?」

「これは無意識に体が反応して…。」

「はあ?なんなのお前!」

「アルナはエドガーより俺の方がいいんだよね?」

「…ルイス、お前黙っとけ。」


瘴気の発生が止まらない様子を見てアルナが震えていたときだっだ。


「はーい!騒ぐのはストップよ。1年生のA・B組の諸君は注目!魔法実技始めるわよ。」


高らかな声とともにショートヘアーの女性が歩いてきた。

エドガーとルイスはしばらく睨み合うと黙ってアルナの腕を離した。

アルナは震えがおさまり、ほっと息をはいた。


「魔法実技を受け持つサーシャ・キャンベルです。キャンベル先生と呼んでね。今日は自身の身体を浮かすために使用する飛行魔法を学ぶわ。」


授業が始まると飛行魔法の原理から呪文まで説明を受けた。


「飛行魔法を使い慣れてない人は呪文を詠唱してね。単純な魔法なら、魔力の流れを掴んで頭の中でイメージの構築さえできていれば呪文無しで発動できるわ。飛行魔法もその部類だから、慣れてきたら呪文無しで発動できるか挑戦してみなさい。」


先生の話が終わると生徒達は飛行魔法に挑戦し始めた。

アルナ達も飛行魔法を発動させ、空の散歩を楽しんでいた。


「シェリー、リナ、こっちおいでよー!」

「アルナ、早いわ!しかもそんな高いところ怖いし、私ここで待ってるわ。」


リナは驚いた顔でアルナに追い付いてきた。


「アルナって魔法使い慣れてるわね。呪文唱えず魔法発動させてたし、発動も早いし。私は魔法騎士団で魔法の訓練受けてるから追いつけたけど。」

「両親やお兄ちゃんから魔法の訓練を受けてるからね。治癒魔法を使うのに魔力の流れを読む訓練も馬鹿みたいにしたんだから。」

「『不滅の騎士』様の訓練!なんだかすごそうね。私も受けてみたいなあ。」

「結構スパルタ教育だからやめといたほうがいいよ…。」


アルナは感心するリナと一緒にシェリーのところに戻った。

授業の中盤に差し掛かると大方の生徒が飛行魔法を取得していた。

中には授業に飽きてさぼり始めた生徒もでてきており、それを見たキャンベル先生はにやりと笑った。


「みんな飛行魔法は発動できたようだし、ひとつゲームをしようか。」


そういうと小さい四角に切られた5色の色紙がたくさん入った袋を取り出した。


「各自この袋から1枚だけ紙をひいてね。ひいたら紙の色と書かれている番号を覚えて。」


全生徒が紙をひき終わるとキャンベル先生は先程と同じ色紙が入った袋をもう一袋とりだすと、袋に魔法をかけた。

すると色紙は蝶々に変身し、袋の中で羽ばたき始めた。

キャンベル先生が袋を開けると、蝶々は空に羽ばたいていく。


「私が合図したら浮遊魔法で空を飛んで、これから配る網でさっきひいた紙の色の蝶を捕まえなさい。蝶を網で捕まえて地上に戻ってきたタイムを測定するわ。番号は飛ぶ順番を表しているからね。タイムが1番早かった人にはちょっとしたプレゼントがあるわよ。」


「プレゼントなんだろう?貴重な薬草とかの可能性も…。私1位狙う!」

「アルナやる気だね!私も面白そうだし頑張っちゃおうかな。」

「私はマイペースでいくわ。飛行魔法はそんな得意ではないもの。」

アルナとリナが意気込み、シェリーはそんな2人をのんびり眺めていた。


「ゲームの内容としては簡単そうだね。この中だと誰が一番になるかな?」


ロナウドがエドガー達を見る。


「飛行速度でいえばルイスかエドガーか?あいつらに本気だされたら俺は絶対無理だよなー。」


リオはため息をついた。

ルイスは少しつまらなそうな顔をして話を聞いていた。


「なんかやる気でないんだよねえ。そうだ!アルナー?俺が1番になったら何かご褒美くれない?」


シェリーたちと話し込んでいたアルナは突然声を掛けられ、驚いた顔してルイス達の方を見た。


「ご褒美?私から何が欲しいの?」

「うーん。じゃあアルナと1日過ごしたいな。一緒に王都散策なんてどう?ケーキも奢ってあげるよ。」

「ケーキ!う、うーん。前助けてもらってるしな…。分かった!1番になったらね。」

「はあ?お前ケーキにつられてねえ?1日こいつと二人っきりってことだぞ?」

「そ…そんなことないですよ!助けて貰ったお礼もしてないし、別にいいかなーと。」

「それ言うなら、俺も図書館で助けた件のお礼してもらってねえんだけど。」

「あー確かに…。え?まさかエドガー様もご褒美欲しいんですか?」

「じゃあエドガーも参戦する?1位とったらアルナからご褒美レース。俺としては不参加でお願いしたいけど。」


エドガーはルイスを睨んだ後、アルナの方を見た。

アルナはビクッと震えて思わずシェリーの後ろに隠れた。


「…なんか気に食わねえし、俺もやる。」

「へぇ、面白くなってきた。本気でやらないとね。」


ルイスはにっこり笑い、エドガーはルイスをじっと見てお互いに向かいあった。


「ちょっと待って!エドガー様からご褒美の内容聞いてないし、なんか嫌な予感が…。エドガー様も参加するなら、こ褒美撤回させて!って2人とも聞いてます!?」

「ダメよ。アルナ。もう撤回できない雰囲気よ。諦めなさい。」

「うう…。ケーキにつられた私のバカ…。こうなったら私が1位になるしかない!」


アルナが気合を入れなおす一方で、ロナウド達は面白そうにエドガー達を眺めていた。


「なんか面白くなってんじゃん!俺らは賭けでもしない?俺はエドガーで!ジュラルドは?」

「うーん。じゃあ俺はルイスで。ところでリオ、何賭けるつもり?」

「今度ご飯奢るでどう?そうだ。ロナウド殿下も参加する?」

「じゃあ参加しようかな。僕は…。」


ロナウドの返事を聞いたリオとジュラルドは呆気に取られた。


「その可能性はあるけど…いや、あるかなあ?」

「レアケースだよな。そうなったらまた揉めそうだな。」

「僕の勘はよく当たるからね。楽しみだ。」


そう言ってロナウドは笑った。

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