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第八章:応援垂れ幕
学校の校舎には、野球部応援の垂れ幕が下がった。
「目指せ甲子園!」
「全校応援!」
「君たちが誇りだ!」
透は、それを見上げながら、
「誇りって、誰の?」と、心の中で呟いた。
昼休みの教室では、試合の話題で持ちきりだった。
「惜しかったよなー」
「9回のあのエラーがなければ…」
「でも、よく頑張ったよ」
誰もが一喜一憂する。
まるで、自分がバットを振ったかのように。
まるで、自分が汗を流したかのように。
結果は、弱小校として、まぁ、落ち着くところに落ち着いた。
初戦敗退。
それでも、垂れ幕はしばらくそのままだった。
風に揺れながら、少しずつ色褪せていく。
透は、放課後のグラウンドを走る。
誰も見ていない。
誰も応援しない。
それでも、彼は走る。
垂れ幕の下で、誰かが夢を見ていた。
その影で、透は現実を踏みしめていた。