記憶を無くした女が記憶を取り戻すキッカケの話
記憶を無くした女が記憶を取り戻すキッカケの話
「せっかく君と再会出来たのにざ〜んねんだなぁじゃあね〜」
どう……してこんなことに……意……識……が
そして私は朦朧とする意識の中で思い出していた。
なぜ私がこの状況になっているかというと三時間前に遡る
回想
私櫻木杏はいつも通り社長から依頼を受けるために社長室に入った。
コンコン
「失礼します。社長今日も依頼をください」
ペコリ
「いつも言ってるけどそんなに頭下げないでいいから頭上げて、僕は畏まられるのが苦手だからさ。それで本題だけど今回君に受けてもらう依頼は『森口圭介の殺害』だ。君は聞いたことがあると思うけど森口は本当に危険だ裏社会で奴に敵う者はいないと言われるほどで標的を確実に消し去ることから"神隠しの森口"の異名まである……だから本当は君にそんな依頼を受けて欲しくない……というのが僕の本音だ。だが君のことだ『私以外が危ない目に遭うぐらいなら危ない仕事は私がやる。当然のことです』とか言い出して断らないんでしょ」
「はい当然です。もう誰かが苦しむのは見たくないですから……苦しむのは私一人で十分です」
「君のそういう優しいところ僕一人の人間として好きだけどさ、たまには僕たちのことも頼って欲しいって思うのが親心ってやつなんだよ」
「社長は私の親ではないですよね?」
「はあ、それはそうだけど……親が我が子を大切にするみたいに君のことが大切って意味なんだけど。それと言っておくけど、深追いは絶対にしないで危なくなったら必ず帰ってくること分かったね。護衛として用心棒を三人雇ってるからきちんと協力してね、絶対だからね!!」
「本当いつも社長しつこいです」
ありがとうございます社長分かっています
「今心の声と逆で話してるよ気づいてる?」
「あっ」
「今あって言ったでしょ、あって。まあいいや、はいこれ予備の携帯ね。一応防弾ガラスで作ってはいるけど完璧じゃないから気をつけてね。それと君に何かあった時すぐ助けに行けるようにGPSを付けてるからそこは理解してくれると僕としても助かるかな」
「はい、いつもありがとうございます社長……それともう一つ」
「何かな?」
「助けるためとはいえGPSには毎度ちょっと引きます」
「えぇぇ〜おじさんだいぶショックだよ。およよよ」
「社長もうそろそろ行っても良いですか?」
「行ってもいいけどちょっと待って」
「なんですか?」
「お守り持ってくるから」
「お守りは嬉しいですが、私には不要です。社長が私の代わりに持っていてください。『私が帰ってこられますように』と祈っていてください。では行ってきます」
「必ず祈っておくから行ってらっしゃい!!」
ガチャ
私は社長室を後にした。
そしてこれからは杏の知らない社長室での出来事であり、たまたま社長室にいた事務員の蝶野美羽の回想
プルルルル
「社長電話ですよ、出ないんですか?」
「出る……出るからちょっと待って今祈ってるから!!」
「それじゃあ私が出ますからね」
ガチャ
「はい、お客様の明るい願いから暗い願いまでなんでも聞き届ける"株式会社青薔薇"です。……えっ、杏さんの護衛をキャンセルしたい……ですか? 違約金などかかりますが……命には変えられない、ですか。はい分かりました。またの機会がございましたらよろしくお願いします。はい、それでは失礼いたします」
ガチャ
「社長……先ほど杏さんの護衛を頼んでいた三名が『神隠しの森口が相手なんだったら勝ち目なんかねぇ!! 今更で申し訳ねぇがこの依頼キャンセルさせてくれ、金は払うだから頼む!!』と三名がわちゃわちゃ電話をかけてきまして……これなら護衛私が行きましょうか?」
あぁ社長がこの世の終わりみたいな顔してる
「どどどどどうしよう美羽ちゃんこのままだと杏ちゃん死んじゃうよ〜!! よしもういっそのこと僕が行こっか」
「ダメダメダメ絶対ダメですよ社長がいなくなったら誰がこの会社を……というか分かってますか、ただでさえ人数が少ないのに社長まで居なくなったらそもそも会社として回らなくなるんですよ!! ですから私が行きますからね!! 社長はここで待っててください、いいですね!!」
「…………はい、ごめんなさい」
現場(殺し)は久々だから鈍ってなければいいんだけど
回想終わり
そして冒頭のシーンに戻る
そうだ私森口圭介の殺害の依頼を受けて森口に尾行したらバレて
再び回想
こいつがあの"神隠しの森口"か? 写真の通りだけど……噂通りなのか?
「ねえお姉さん僕に何か用?」
なっ、気配に気づけなかった!! だが動揺してはいけない
「お仕事で少しだけ……私こういう者で」
私は名刺を渡した。
浮気調査とかそういう事にしておけばどうにかなる……いや、確実にどうにかなる保証はない、だから今はなってほしいと願うしか
ドクンドクンドクンドクン
「ああそういう事……だったらこっち来て話しを聞かせてあげるから」
私が森口に案内された場所は地下駐車場
「ここなら人はあまり来ないでしょ……さてお姉さん……いや、杏ちゃん僕のこと覚えてない?」
「覚えてない? って聞かれても私たち初対面ですよね」
「そっか覚えてないか。それで杏ちゃんは僕のことを殺しに来たんでしょ、知ってるよ。どうしてって聞くだろうから答えるけど……さっき三人組を殺したんだけどね……そこに転がってる人たちのことね、あの人たちが教えてくれたんだ」
すでにバレてるのなら
スッ……カチャッ
「分かっているのですよね、でしたら話が早いです。今すぐあなたには死んでいただきます」
すると森口はうすら笑みを浮かべ
「杏ちゃんが僕を殺すことは無理だと思うよ」
カチン
「無理だと思うのでしたら今、試してみますか!!」
そして私が構えた銃で森口を撃とうと引き金を引いた瞬間
「遅い」
ズドン
私は森口に銃を奪われそうになったが、その瞬間に森口の右脇腹に蹴りを入れた。
ドンッ
「これが僕じゃなかったら死んじゃってるかもね」
私の蹴りをもろに受けた森口はケロッとしていてその後私は力の差を思い知らされることになる。
「それじゃあ次は僕の番だね」
森口は私のみぞおちを蹴り上げた。
「カハッ……あぁぁあ」
森口は私を倒した後お腹を三発殴り右腕に二発銃弾を撃ち込んだ。
「……っ」
私は痛みのあまり声が出なかった
回想終わり
再び冒頭に戻る
私はどれくらい意識を失っていたのか分からないが目を覚ました。
「おはよ、寝心地はどうだった?」
「どうして美羽さんがここに? 森口は!?」
私が聞くと美羽さんは『森口なら隣で倒れてるでしょ』と言っていたので確認すると本当に倒れていた。
いや寝ているのかもしれないと思っていると森口が目を覚まし美羽さんを見て叫んだ
「どうして師匠がここにいるんですか!?」
「うん? 杏ちゃんを助けるためだけどどうかしたの?」
すると森口は私の顔を見て
「杏ちゃんさっきはごめんね。仕事とはいえ殴ったりして……それに杏ちゃんは覚えてないかもしれないけど、僕たち昔会ったことあるんだよ」
私は森口にそう言われても全く覚えていないし思い出せない
私がキョトンとしていると森口が説明し始めた。
十六分後
説明によると私と森口は小・中学校が同じだったらしく『あんちゃん』『けいちゃん』と呼び合うほどだったらしい……だが私には心当たりがない
「それって私じゃない杏なんじゃないですか?」
私がそう聞くと突然美羽さんが話に入ってきた。
「いや森口の言ってる杏ちゃんは貴方だよ。ねえ杏ちゃん失礼を承知の上で言うけど……杏ちゃんの記憶がないのって……ご両親が目の前で殺されたのを見たからなんじゃない?」
「どっどうしてそのことを……知って……るんですか!?」
そう私は七年前に両親が殺された。
その出来事がきっかけなのかそれ以前の記憶がない
すると美羽さんが大声で謝り始めた
「杏ちゃん本当にごめんなさい!! 謝って許されることじゃないのは分かってる……だけど私のせいでもあるから!!」
私はなんのことか分からず聞き返すと美羽さんは
「杏ちゃんのご両親を……殺したの……私なの」
私が呆然としていると美羽さんはその経緯を説明し始めた。
四分後
美羽さんは依頼を受け私の両親を殺したとのことだった。
私はその話を上手く飲み込むことが出来ないまま眠りについてしまった
そしていつもの夢を見た。
だがその夢はいつもより鮮明になっており、美羽さんの話が反映されたんだと確信した。
私は起きた後美羽さんと話をつけた。
そして森口は私と美羽さんと同じ会社にバイトとして入ることになった。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
殺し屋の夢を見たので書きました