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ボンボボン2

「もっと奥に行かないとボムバードはいないみたいだな」


 集めてきた枝に火をつけて焚き火にする。

 ボムバードとやらの姿も見ておきたかったのだけどボムバードは森の奥に住んでいて浅いところを軽く回っただけでは見つからなかった。


 フェニックスなんて伝説級の魔物を見たことはないがそんな魔物にたとえられるような赤い羽とはどれほど綺麗なのだろうかと思った。


「明日は朝からもうちょっと森の奥に入って行こうか」


「うん、分かった」


「ボムバードの討伐は……奇襲できそうならミツナが攻撃してみてくれ。追いつけなさそうだったら投げナイフで少し遠くから狙ってみよう」


 ボムバードは小型の鳥であると聞いている。

 ショックシープと違って向かってくるわけでもないので投げナイフで傷つけるのも簡単ではない。


 ミツナがボムバードに素早く近づいて奇襲できる、あるいはボムバードの速度にも負けずに攻撃できるのなら投げナイフよりも確実かもしれない。


「ふん、任せて!」


 スピードなら自信があるとミツナはドヤ顔で鼻を鳴らす。

 ショックシープでも結局投げナイフを習うことでエイルの役に立てた。


 今度こそ純粋に自分の力で役に立ってみせるとミツナはやる気を見せていた。


 ーーーーー


「ここまで出てきたのはウルフだけか」


 ボムバードを先に見つけるために慎重に森の奥に進んでいた。

 昨日と打って変わって数体のウルフに襲撃されたけれどエイルとミツナで十分に対応できる相手だった。


 ウルフも一応冒険者ギルドで引き取ってくれるので魔物収納袋に入れて持って帰る。

 戦いながら思うのはやはりミツナの素の能力は高い。


 冒険者としての戦い方や連携の仕方を知らないだけで慣れていけば優秀な冒険者となれるだろう。

 これまでは冒険者としてのやり方を教えて一緒に戦ってくれるような仲間に恵まれなかっただけなのだ。


「……エイル、あそこ」


 木の上の方に目を凝らしていたミツナが声をひそめる。


「あれがボムバードか」


 エイルは立ち止まってミツナが見ている方に視線を向けた。

 木々の間から目立つ真っ赤なものが見える。


 枝の真ん中に止まって体をくちばしで毛づくろいしているボムバードがいた。


「綺麗だな……」


「確かに、あれは欲しがる理由もわかるな」


 まるで木に炎が止まっているようだ。

 流れるような尾羽は煌めく炎の軌跡のようで、体の羽は動いて日の光をキラキラと輝いている。


 わざわざ欲しがる理由も理解できるものだとボムバードを見て思う。


「ミツナ、いけるか?」


「うん、やってみる!」


 ボムバードはまだエイルとミツナに気づいていない。

 奇襲するチャンスである。


 一度大きく息を吐き出したミツナが集中を高める。

 ボムバードまでの間にある木や枝を見て接近するルートを想定する。


「行くよ……ふっ!」


 ミツナが地面を蹴って走り出す。

 出来るだけ大きな音を立てないようにしながらも素早くボムバードに迫る。


「速い!」


 エイルが想像していたよりもミツナの速度は速かった。

 瞬く間にボムバードとの距離を詰めていく。


「……気づかれた!」


 あと少しでミツナの剣が届きそうというところでボムバードがミツナの接近に気づいた。

 ボムバードが翼を広げて飛び立とうとする。


「届けぇー!」


 ミツナがボムバードに向かって剣を振り下ろす。


「ナイスだ、ミツナ!」


 ギリギリのところでミツナの剣はボムバードに届いた。

 倒せなければ墜落もさせられないような浅い一撃であるがそれで十分だとボムバードに向かって手を伸ばす。


 ボムバードにエイルの魔力が飛んでいく。


「むっ……?」


 ボムバードの体がグッと膨らんだのをミツナは見た。

 爆発する。


 そう思った瞬間ボムバードが締め上げられたような声を出して急に地面に落ちていった。

 地面に落ちたボムバードは動かない。


「エイル……!」


 成功したのだとミツナは笑顔でエイルの方を振り返った。

 ボムバードの体が膨らんだ瞬間ちょっと危ないかもと思った。


 さすがはエイルだと思わざるを得ず、ミツナの尻尾はクールにキメようとする顔と違って激しく振られてしまう。

 エイルもゆったりとミツナの方に向いながらミツナに笑顔を返す。


「なんとか上手くいったな」


 エイルからボムバードまで距離があったのでヒールで気絶させられるか不安があった。

 けれどもいい感じにボムバードの気を失わせることができて安心した。


「ちょっとだけギリギリだったけどな」


「そうなのか?」


「一瞬体膨らんでた」


 気を失って墜落したボムバードは元に戻っている。

 エイルの位置からだとボムバードの体が膨らんだかどうかよく見えなかったのでギリギリだったのも分かっていなかった。


「まあ……間に合ったならいいけどもうちょっと近づいた方が安全かもな」


 次はミツナの邪魔にならないようにもう少しエイル自身もボムバードに接近するなどした方がいいなと改善案を考える。


「トドメ刺す?」


「あっ、そうだな」


 次のことを考えていてボムバードのことを忘れていた。

 今はまだ気絶させただけで倒したわけじゃないのでトドメを刺さないといけない。


「ナイフじゃなくて、手で首を折るんだ」


 ナイフを取り出したミツナを止める。

 普通トドメを刺すならナイフでざっくりやってしまえば早いのだけどボムバードの場合できるだけ羽を傷つけることは避けたい。


 小型で弱い魔物であるしボムバードにトドメを刺すのは首を折るという方法を取るのだ。

 残酷だがこれぐらい冒険者ならできなきゃならない。

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