第38話 どうにもならないと悟ったとき、人は眠りにつく
『体験会明日だから』
そう言われたのは昨日。
つまり体験会は今日!
いきなりのことに動揺してしまった俺は……そのままスララに包まれて眠ってしまっていた……。
俺てっばほんとにバカっ!
「まぁ、今回は身内だけらしいし! 何とかなるっしょ!」
◇
「……あのぉ……」
そして王都にたどり着いた俺を待ち構えていたのは、とても身内だけとは思えないほどの大所帯だった。
「す、すみません……父が盛り上がってしまいまして……!」
少し前から王都に戻り準備していたクラリスが謝ってくる。
謝罪はいらない、大人しく死んでくれ……!
「わっはっは! 勇者殿とその偉大な仲間たちが行っている事業だ! みなも興味が尽きないだろうと思ってな!」
前に会ったときとは異なり、威風堂々とした振る舞いを見せつけるかのように王が笑う。
「さすがは王様! わかってるぅっ!」
最初に口を開いたのは年齢不詳の美女。
……誰ぇ?
「彼女は冒険者ギルドを束ねる総支配人、メリッサ様です。一応王族なので身内枠です……」
血縁だからセーフとはならんやろ!
ま、まぁ……セーフと思っとこう。他にもいるからね……。
「ふむ。彼が魔王討伐メンバーの1人か……」
「彼女は今回ギルド総支配人の護衛を務めることとなったAランクパーティ『フルメタル・アームズ』のリーダー、タディナさんです」
完全に身内ではなくなりましたな!
Aランクパーティって言うと、ドラゴンとかなら倒せますってやつらだな!
俺と彼女のタイマンなら確実に勝てるだろう。彼女が。
「それと宰相や近衛兵長の……まぁ身内の方々です」
最初は王様とこちらの方々だけって聞いてたよ!
宰相がめちゃくちゃ申し訳なさそうな顔してこっちを見てるよ!
「最後に……我が国と並ぶ大陸の最大国家、『ラインガルド』の国王ディル様と、第1王女のマリア様です」
……どうしてぇ……?
身内どころか……ほぼ敵じゃないですかぁ……?
国が違えば本質的にそいつは敵、昔誰かが言っていた気がするぞ!
社会のせんせーだっけ?
「思ったよりも深いところに内通者がいたようで……」
「……」
さらに何かで聞いたことがある。
ある程度の情報共有を目的に、各国それぞれ内通者を忍ばせており、それを黙認していると。
「いやぁ! 偶々私が直接グランヘイム王に友好の品を持ってきたんですけどね! そしたら勇者様たちが面白いことをしてるって言うじゃないですかっ!」
「あ、あはは……そうなんですよぉ」
魔王のいた『深淵の封獄地』を挟んでちょうど反対側にあるラインガルド。
特に縁がなく行くことはなかったんだけど……。
「お会いしたことがなかったですからね、勇者様たちとはぜひ私も1度お会いしたいと思っていたのですよ! お会いしたことがなかったのでねぇ……」
「……いやぁ、はっはっは!」
お腹が……胃が痛いんですけどぉ……っ!
今紹介された彼らが今回の体験会の参加者のようだ。
そして何故か城門の前には……数えきれない人、人、人。
どんな情報が流されたのか、そこには大勢の人が……。
「わっはっは! 早速向かおうじゃないか! ささ、レイジ殿!」
このじじい、いつか絶対殺す!
「……『従魔召喚』。ミーティアよ、ここに来たれ!」
「ヒヒーンッ!」
頭上に掲げた『封魔石』からミーティアを召喚する。
神秘的な光とともに、静かに地上に降り立つ天馬。
ランクA魔物として名高いフィンドールでもよかったんだけど……あいついうこと聞きやがらない……。
「おぉ……これが!」
「な、何と美しいっ!」
その姿を見た人々が騒めき始める。
一般の人たちにとってペガサスは滅多にお目にかかれない存在。
そんな存在に乗っていけるんだぜ! モンスターパークには!
「き、危険はないのでしょうか……う、疑うわけではないのですが……!」
職業柄か、近衛兵長が恐る恐る尋ねてくる。
「ミーティア、誰か乗せて――」
「私が行くわ! 乗せてちょうだいっ!」
デモンストレーションのために誰かを乗せて飛んでもらおうと思ったら、ギルド総支配人のメリッサさんが名乗りを上げる。
この人、行動がいちいち早いな。
「大丈夫、私は『身内』よ」
「……」
すれ違いざま、ボソッと声をかけてくるメリッサさん。
何やらキナ臭さを感じるが……何を言っているのか、ぼくわかんなぁい!
「ヒヒーンッ! ブルルル……」
「え、嫌なの……? そう言わずにさぁ……頼むよ……」
「……」
まさかの拒否!
しかし……。
「ブルルルッ!」
「うべぇっ!?」
俺の顔を一舐すると――。
「へ……? きゃあ!?」
「ヒヒーンッ!」
風を操り、メリッサさんを背に乗せる。
「――ふわぁっ! すごいっ! すごいすごいっ!」
「ブルルル……」
ゆっくりと浮上し、空を駆け始めるミーティア。
まるで幼い少女のように感嘆の声を上げるメリッサさん。
集まった人たちの上を駆け、城をの周りを旋回し、そして――。
「ヒヒーンッ!」
「え? え?」
ミーティアが作り出した水の輪を潜り抜ける。
さらにその水が小さな馬の姿になり、メリッサさんの周りをぐるぐると駆け回る。
「こ、これは……!」
いや、メリッサさんだけでなく、俺たちの周りにもいつの間にか小さな仔馬いた!
「あははっ! あははははっ!」
最早言葉にならないようで、満面の笑みを浮かべながら楽しそうにはしゃぐメリッサさん。
「ブルルルル……」
そしてゆっくりと俺たちのところへと戻ってきたミーティアが、最後に水で作った仔馬たちを頭上に放ち――。
「ふわぁ~……」
「おぉ! 何と……っ!」
弾けた水が、人々の頭上で虹を描く。
「……」
「……」
しばしの静寂の後――。
「ま、まさかこれほどとはっ! みなの者! これが『魔物使い』レイジ殿とその従魔ミーティア殿の力じゃ!」
「すげぇ……すげぇっ!」
「かっこいいわぁ~……」
王様の一言をきっかけに、感嘆の声が次々と上がる!
ミーティア……何てできるペガサス……っ!
「素晴らしい……何て美しいっ!」
「さ、さすがに……感動したわ……」
どうやらラインガルドの王と姫も感動してくれたようだ。
どうか、このままお引き取りを……。
読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/
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