第19話 狐耳とふさふさ尻尾と犬歯と聖女
先程猪を見事に倒して見せたコン。
彼? 彼女? を頭に乗せて先を進む。
「コンや、兎を探しているんだけど……わかるかい?」
「こん?」
いつぞやにも行ったやり取り。
以前とは見違えるほど成長したコンならばもう大丈夫だろう。
「兎、探して」
「こん?」
「お前の、餌」
「こん!」
おぉ! 元気に確信を持った返事! さすが、あの時とは違うんですね!
狐と言ったら兎を常に口にくわえてるイメージですからね、問題ないでしょう!
道中、雪に足を取られながらもずんずんと進む。
時折コンの示す方向を確認しながら。
「あまり魔物いないね」
「やっぱ雪だと食い物が少ないからかね~」
元の世界と生態が異なるのか、木とかは案外茂っているため、飢えることはなさそうではある。
しかし地面は雪に埋もれており、小さい生き物にとってはやはり辛い環境だろう。
「こん!」
コンが一声鳴く。ついに見つけたか?
「……コンお前……」
そこにいたのはオオカミの群れ。
もしかしてコンは……己を餌とするであろう魔物の元へと案内したのか?
「グルルルル……」
「フゥーッ、フゥーッ!」
あっという間に囲まれた俺たち。
彼らも、久しぶりの獲物に目をギンギラ輝かせてるぞ!
「くきゅ~ん……」
ガクガク震えているコン。
よく案内したな、お前……。
「アオォーンッ!」
リーダーっぽい犬の遠吠えで一斉に襲い掛かってくる狼たち。
しかし結果は猪の時と同じ! 結界が彼らを阻む!
「コン! 『札1』」
「こん!」
そしてその時と同じようにコンが魔法を飛ばすが――。
「ガゥッ!」
「こん……」
狼は余裕の様子で影の刃を避ける。
猪より強いぞ!
「……打つ手なし」
「諦めるの早くない!? ノノさんも攻撃してよ!」
「無理、あいつら早過ぎ」
しょ、しょんなぁ~……。
仕方ない、あまり魔力を消耗したくないが……。
コンの見せ場も作りたいしな!
「コン! 合体だぞ!」
「こん? こんこん!」
一応コンに声をかけ、心の準備を促す。
伝わっていない気がするけど。
「『人魔一身』! フォックスモード!」
コンの体が光にとけ、俺と一体化する!
フサフサの尻尾! 狐耳! 歯も何だかギザギザしてる気がするぞ!
「……いい」
何だかボーっとしてるノノさん……いつもボーっとしてたわ。
そんなことよりも! 魔力が! もったいない!
「『エアスラッシュ』!」
「キャンッ!?」
コンの放つそれよりも早い風の刃が目の前のオオカミを切り裂く。
コンよ、お前も頑張ればもっと強くなれるからな!
繋がっている意識の中、コンが嬉しそうにしているのがわかる。
「グルルルル……ッ!」
「ギャオォォンッ!」
仲間をやられ、怒り心頭と言った様子の残りの狼。
我を忘れたのか、一斉に襲い掛かって来るが――。
「『エアブレイド』!」
手にした風の刃で全て薙ぎ払う。
これにて終了、急いで『人魔』を解除!
「ふぅ……」
「もう終わり……?」
どことなく寂しそうなノノさん。
そんなに俺のコスプレが見たいんか?
「こんこん! こ~ん!」
「わっと……くすぐったいぞ!」
変身を解除したコンが再びじゃれ付いて来る。
可愛い。
「さて、他の強敵が来る前に移動しようか」
「うん」
吹雪で薄れているとは言え、血が流れた戦いの場。
臆病で温厚と噂されているスノーラビットはもうこの近くにはいないだろう。
今回は思ったよりも短い時間で討伐できたからよかったものの……再び戦うのは危険だ。
万が一魔力が足りなくなってしまえば、取り返しがつかないことになる。
気を付けて進もう。
◇
「ぴぃーっ! ぺっぺ!」
そんな不安など糞くらえ、とでも言うようにスララが消化液を吐く。
「ギィィィッ!?」
「ぴっ! ぱくっ」
怯んだモグラのような魔物を体内に取り込み、あっと言う間に消化してみせるスララ。
お前……いつの間にそんなに強くなったんだよ……。
「けっぷ! ぴぃっ!」
「お、おお! すごいぞスララ!」
ハーピィの時に進化して、そのまま忘れていたスララ。
種族名はグレートスライムと言うらしい。しかも亜種だって! すごいぞスララ!
「これなら、オオカミさんが来ても安心ね」
「本当に……」
まぁ、まだまだ山の手前側。そうそう強い魔物には遭わない……と信じたい。
そう思った瞬間、一陣の風が俺らを襲う!
目の前の一帯の雪を吹き飛ばし、そこにいたのは――!
「『貴様らか……我が子らを殺したやつら……』」
「なっ!?」
――白銀の狼。
念話により、人語を操る知性。その身に宿る圧倒的な魔力。
どう考えても先ほどまでの魔物とは桁違いの存在。
しかし場違いにも……あまりの美しさに目を――。
「――っ!? 『結界・極』!」
「ガァオォォォーンッ!」
ノノの『結界・極』。ドラゴンの攻撃にも耐えるその障壁を、狼が噛み砕こうと――!
「ひ、ヒビがっ!?」
「むむむ……!」
や、ヤバすぎる……! 何でこんな奴が……!?
「『……不穏な気配……悪いが、ここで死んでもらう! ガァァァッ!』」
読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/
今日の更新はここまでとなります。また明日よろしくお願いします!
ブックマーク、誤字報告や温かい感想を頂けると跳んで喜びます!!!
また、こんな魔物が見たい! こんなアトラクションあるよ!
なんてアドバイスを頂けると非常に嬉しいです(切実)
よろしくお願いします(/・ω・)/




