第121話 レイジの不在の間に~ノノの場合②~
「はぁ~! 忙しい忙しい!」
ノノが倒れて1週間ほど。
倒れた彼女の口に木の実や果物をすり潰した物を流し込みながら、ミライは汗を拭く。
「ほら、あなたも……あれ? どこ行くの?」
「も、もうすぐ……目覚めそうだから……」
世界樹の影に隠れている人影に向かって声を掛けるミライ。
どうやら、まだノノと顔を合わせる時ではないらしい。
「……そ! じゃあそっちのヒナちゃんによろしく!」
「……こん!」
先日、神獣の継承を終えたレアンが死に、その亡骸が灰になったかと思うと……その中から出てきたヒナ。
見た目通り、不死鳥だったと言う事だろう。
全く、あの時の切ない思いを返して欲しい。
そう思わずにいられないミライだった。
◇
「いよいよ感、あるな……!」
何千、何万もの負の感情を叩きつけられたレイジ。
手の先にある光……だけでなく、背後にはいつの間にかたくさんの光が、彼を支えていた。
そして対峙するのは……。
「ご丁寧に魔王の姿とはね」
彼もかつて対峙した魔王。
負の象徴ともいうべき存在が目の前にいた。
「……みんな」
横を、そして背後を見る。
ユーフィ、ユート、ミライ、クラリスを始め、今まで出会ってきた人たち。
それだけでなく、スララやピヨヨなどの従魔。
「……ノノ……」
しかしその中に、彼が1番求めている存在はいなかった。
「……魔王なんか楽勝で打ち勝って戻って来いってことだよな!」
思いっきり駆け出すレイジ。
「グォォォッ!」
「うぉぉぉ……お……」
しかし魔王に触れた瞬間、今までとは比べ物にならないほどの負の感情が彼を襲う。
「……!? ……!!! …………!!!」
「『ニクイニクイニクイ!』」
ユーフィやスララ達の思い出が……。
「コロスコロスコロス!」
ユート達との思い出が……。
「ウラヤマシイウラヤマシイ……ネタマシイ……!」
ノノとの思い出が……。
全ての温かい思い出が冷たい黒に上書きされて――。
『けっこん、しようね』
「――おれ、は……!」
「『シネシネシネシネ!』」
「俺はまだっ! ――大事なことを言えていない!!! それなのに――っ! こんなことで消えられるかぁぁぁっ!!!」
突如、レイジの周囲を温かな光が包む。
「――ノノ……?」
「……」
光が人の形となり、頷く。
「……おまっ、お前……今までどこに……!」
「……」
光は何も言わず、空いている方の手を握る。
「……ノノ……ユーフィも」
「……」
「……」
光は何も言わない。
温かな気持ちを言葉の代わりに伝える。
それと同時に、レイジたちがやるべきことも。
「……? はは、何だか……『人魔一身』みたいだな……!」
「……」
魔王の、自身の負の心を。そして聖の魔力を――。
「『聖邪調和』」
◇
「うぅ……う?」
「……おはよ、ねぼすけさん」
目を覚ましたレイジ、目の前には彼の大切な幼馴染にして最愛の女性。
「……やっぱり、俺にはお前がいないとダメみたいだ」
「ふふ、知ってるよ」
「……けっこん、してください」
「……うん。ふふ」
ちゅっ。
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