第99.5話 幕間 マッチポンプ美談~グランヘイム国王の悩み~
「……」
自室の机で頭を抱える。
目の前には、愛娘からの1通の手紙。
「よもや……こうも手を噛まれるとは……」
内容は、先日行われたプレオープンの開催通知、のみ。
招待する旨どころか、それ以外の近況報告等は一切ない。
いつもは勇者がいかにかっこいいかという内容に溢れているのだが……。
「……陛下」
娘のちょっとした悪戯だと、適当に対処するわけにはいかない。
それは大国故の悩み。
つまり、舐められたらそいつを叩き潰さなければならない、ということ。
しかしながら、これは『魔物使い』との件が影響しているのだあろう。
これ以上失策を犯してしまえば、完全に敵対視されてしまう。
……どうしたものか。
「報復しますか?」
「ならんっ!」
武力的な戦争はもっての外、こちらが短期制圧されておしまいだ。
経済的な締め上げも、大した影響を与えられまい。
向こうには『魔物使い』がいる。
ほぼ安全に大量の物資を高速に運ぶ……そんなことが可能なとんでもない人間が。
何よりも、民や他の国が許さないだろう。
『勇者』は魔王を討伐したこの世界の救世主。悪はこちらだ、と。
そんなことは宰相も十分理解しているだろうが、敢えて口に出したのだろう。
選択肢を1つずつ消していくのだ。
「無視しますか?」
「……」
大国故の余裕。
それを見せつけてやるのもいいが……。
「……私としては、お勧めしませんね。このままずるずると関係を絶たれてしまうかと」
「そうだな」
大陸の中心にあるあの場所との関係が薄くなる。
今後を見据えたとき、彼の地こそ世界の中心になるのは明白。
であれば……。
「……非を認め、謝罪する」
「ですな。幸いにも、まだ道は残されているようですぞ。文字通りに」
そう言って宰相は1通の手紙を差し出す。
「謀ったか?」
「いいえ、偶々です」
嘘を付け、と内心悪態を付きながら手紙を開ける。
そこに記された日付は、プレオープン翌日のもの。内容は――。
「『可愛い娘に会いたければ、道を通って来てください』か……」
領地の端が隣接しており、かつて幾度も拡張しようと試みてはいたが、採算が取れず断念してきた。
当然、道などない。
「いかがします?」
「……そうだな……」
世界のためとは言え、その身を差し出させた娘。
このくらいの噛みつきなどかわいいものだ。
と、思うことにしよう。
「久しぶりに、娘の顔を見に行ってやるか」
それに……あちらからこう言ってきたのだ、何かしらの手立ては考えてくれているだろう。
「であれば、指揮を王太子殿下にお任せしては如何でしょうか? 誰も成功しなかった未開の地の開拓。これを成し遂げれば……」
「王位に就く際の箔も付く、と……」
「加えて『父と娘の確執を取り払うために』なんて付け加えれば……」
「……それ、最の高」
なんという美談……!
読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/
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