第97話 マダス、まだっす?
「もういいです……5名ずつに分かれて順番についてきてください!」
あーあ、クラリスを怒らせちゃったぁ!
「ふふ、おちゃめだね」
「ああ、協力してやろう」
ま、実際に体験した方が楽しいもんな!
と言うことで、俺は未だ呆然としているおっさんたちをグループ分け、ノノさんは入口を『結界』で塞ぐ。
音漏れ防止とは……ノノさんもお茶目!
「では……次のグループ行きましょう!」
そして順番にスタッフが付いて入っていく。
「? レイジ様?」
最後は俺たちだ。ノノとユーフィとカレンさん、それに未だ呆然としているディル王。
「ユーフィ、道中少しだけびっくりするかもだけど、大丈夫かな? 怪我はしないと思うけど」
「はいっ! レイジ様とノノちゃんが一緒なら大丈夫です!」
ふんすと気合いを入れるユーフィ。
かわよ。
しっかり俺とノノで手を繋ぎ、ゆっくりとダンジョンに侵入する。
その先で――。
「んぎゃああああっ!?」
「ひゃぁっ!」
スライム床を踏んづけたディル王に――。
「ふげぇぇぇぇっ!?」
「ひゃぁっ!」
突如動き出した岩に驚いたディル王に――。
「びゃああああっ!」
「ひゃぁっ!」
物陰をすばやく移動するロックリザードに驚いたディル王に――。
「ふん、私を驚かそうなど、10年早いわ!」
「……」
ようやく我に返ったか、ゴール地点の動く木、トレントさんを前にして威厳を保とうとする。
「お父様、嫌いです!」
今まで散々、父親の悲鳴に驚かされていたものね……怖かったね。
俺としては、その度にしがみ付いてきてくれたから……感謝の極みッ!
「――ッ!? ――……」
「あ、気絶した」
さもありなん。
ゴール地点の先、待機場所に他の客も揃っていた。
「これで全員ですね! 如何でしたか、案外楽しめたんじゃないでしょうか?」
「え、えぇ……」
「……」
……うん、説明としては十分なインパクトを与えられたようだな!
こうなるなら、シネンのとこで幽霊系の魔物をテイムしておくべきだったな……。
シネンと言えば、某聖なる虫はさすがに見送ったぞ!
「『……! ……!』」
「さ、地上に戻るか」
シネンの抗議の声を無視して、階段を登る。
カサッ。
「――ッ!?」
「? どうした?」
「あ……いや、何でも……」
まさか、そんな訳ないよな……ははっ!
早くみんなのところへ行こう……。
……。
……。
……。
カサカサッ!
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサッッ!!!
◇
「さて、本日の最後のイベントです!」
ガーデン隣接されたもう1つの施設。
それは、野外コンサート会場!
「歌唱を能力に持つ魔物たち! 野生では危険極まりない悪魔の囁きですが、ここでなら大丈夫! 世界で唯一無二のコンサート、心して聞いてください!」
ピピンの発案により、今まで練習を重ねてきたハーピィたちがお歌を披露してくれるぞ!
アカペラなのが残念だが――。
「ラ~♪ ラララ~♪ ラ~ラ~♪ ラ~ラ~♪」
「はわぁ~……」
「へぇ~……」
クィーンの独唱から始まった、歌詞もないシンプルな歌。
「「「ラ~♪ ラララ~♪ ラ~ラ~♪ ラ~ラ~♪」」」
「……ほぅ」
「……なんと……」
それがいくつも合わさり……。
まるで……壮大な物語の始まりを告げるような……!
奮い立つ、魂が揺さぶられる……!
叫ばずには! いられないっ!!!
「ゼル――っ!」
「気持ちはわかるけど、それ以上はいけない」
すまぬ。
さては……いや、何も言うまい。
あの頃は一緒になってリモコン振り回して楽しかったね!
「ラ~♪ ラララ~♪ ラ~ラ~♪ ラ~ラ~♪」
最後に、再びクイーンの独唱で幕を降ろす。
「素晴らしいっ! 素晴らしいよ!」
「私も感動しました! まさか、まさかこんなに美しく……魂が揺さぶられるとは!」
スタンディングオベーション!
もちろん俺も!
にしても、ハーピィたちもさすがだが、きっと舞台裏ではピピンが――。
「ちなみに、この曲は私の鼻歌をクラリスがまとめ上げてハーピィに指導していた」
ピピン役立たず。
てかクラリスの才能がハンパないな……。
「素晴らしい歌でしたね! さすがはハーピィさんたちです! ありがとうございました!」
クラリス自身の努力などおくびにも出さず、ハーピィを称賛する。
異世界召喚の当事者でもあり、一時は親の仇レベルで恨んでいたが……。
「……クラリスも、幸せになってくれるといいな」
「……そう、ね」
おや、珍しく歯切れの悪い……。
今なら同意してくれると思ったが、そうもいかなかったか。
「申し訳ないですが、準備が足らず曲目はこれだけ――え、なんですか? え? あなたも?」
読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/
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また、こんな魔物が見たい! こんなアトラクションあるよ!
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