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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

白い本

作者: 優樹菜

はじめてホラー書いた

白い本


ホラーって言うのは、あれだ、なにもない、誰もいないはずの、密室な空間で起こる物語。


…………? ああ、そうか。


そうだな……そうだ。


そういうことなら、確かに、アレがそれだ。


幼い頃、親父から一冊の本を貰ったことがある。


題名はもう思い出せないし、どんな内容だったかも覚えていないけれど、その白い本は、霊的ななにかを記述したものだった。




幼い頃の自分は、それにえらく興味をひかれ、一日一冊ずつ、貪るように読んでいって……それで親父に叱られたんだっけ。


「そういう本を読みすぎるとな、引き込まれて戻れなくなるぞ」


そんな言葉も、当時の自分には理解できなかったけれど。


……内容は、そう……ある校舎で二人の女子高生が連続殺人をおかしていく、そんな話だったっけ。


「その話は読んだら呪われるぞ」


親父の、笑い顔。


……だから読んださ。




その本を読んだことで引き込まれた。


……ただ、そう……本当は、呪われているんだけどね?本が、俺自信を呪っている。


だって、あの本を読んでいた頃の自分は……なんていうかその……他愛のない日常にあきあきしていたんだ。


だから、たぶん……俺はあの本を真似たんだと思う。


このつまらない世界にある物語を真似て、自分が主人公になったつもりになってみた。


……そう、俺は主人公になったんだ。


つまらない現実から連続殺人をおかして逃げ続ける、主人公にね。


そうして、俺はその世界に浸ったさ。


浸って……浸って……そして、出られなくなった。


その世界は俺がいる限り終わることはないんだから、当たり前と言えば当たり前だ。


そうして俺は主人公になって、主人公は幸せになるんだから、それは俺の幸せだ。


俺が幸せなら、その世界も俺にとっての現実になる。


……けれどそれは違うんだと……子供の頃の俺は思ったのだろう。


だからあの白い本を呪ったし、それを捨てた。


つまらない現実にもどってきた。




そして、暫くたちある噂が耳に入ってきた。


「ねえ、知ってる? また死体が出たんだって」


「えー、怖いなあ。今月で三人目でしょ?」


それは連続殺人事件の噂で、俺はそれをくだらないと笑い飛ばした。


……けれど、その事件は、おさまることなく続いていった。


噂は噂を呼び、俺はその事件のことをよく知っている奴等から話を聞いた。


「なあ、知ってる?あの事件」


「ああ。人が次々に殺されていくっていう」


「被害者はみんな若い女だけだってな」


「……ああ、あとは必ず心臓をえぐりだされているらしいぜ」


「知ってる。心臓をえぐられた死体は、必ず時計を持ってるんだってさ」


「時計?」


「ああ。被害者がみんな、同じ時計をもってるんだってよ」


……それは偶然だ。


その事件に関連性はないさ。だって、俺が読んだ本はあんな話じゃない。


あんな事件、俺は知らない。


だから無関係だ。そうに決まってる。


それに、その事件の話をしてくる奴等はみんな噂を小耳にはさんだ程度の奴等で、本気でその事件を調べようとする奴はいない。


そんな下らない話なんて忘れてしまえばいいのに……けれど、俺は気がしれなかった……になってしまった。


その事件に俺が関わっているかもしれないと、考えてしまったからだ。


だって……そうだろう? 俺は、つまらない現実から逃げた。俺だ。だから逃げたのは俺で……そして、俺は戻ってきたんだ。つまらない日常にさ。だから……もしその事件の実行犯は、俺、あの白い本が原因だというのなら、それは俺だ。


俺が主人公になったつもりで起こした殺人なんだ。


……それがもし全て偶然だとしたら? 噂はただの偶然で、事件にはなんの関わりもないとしたら? けれど、そう考えれば考えるほど……俺は怖くなった。だって、そう考えれば辻褄が合うんだ。



噂だと白い本は、捨てた本あの一冊の他にも存在するらしい。


けれど、それを俺が手に入れることはないだろう。何故って? 白い本はものすごく呪われているからだよ。一度でも読んだら引き込まれて戻れなくなるぞと親父は言った。だから、もし俺がその本を偶然手にしてしまったら……きっと俺はその本の虜になってしまうだろうさ。


そうして俺は主人公になったつもりで事件を起こし続ける。


……その事件を止める奴なんていない。


だって、みんな俺を恐れているんだから。


……そして、俺は今、また主人公になったつもりで事件をおこして逃げ続けているんだ。


……そうさ、これは全て偶然なんだ! だから、俺が犯人なわけがないだろう!?


「それは違う」


俺の言葉を、彼女は一言で否定した。


「え……?」


「だって、それは貴方の夢だもの」


ああ、そうだ……そうだった。


これは俺の夢だ。だから俺は主人公じゃない。


主人公は別にいて、そいつが俺を追い詰める役なんだ。そして俺はそいつを憎みながら逃げ続けるんだ。




かのじょが何者かは、知らない、…目が覚めたときには、白い本がおいてあった。





その白い本が、俺を誘うんだ。俺を主人公にしよう。


ああ……そうだ……俺はこの夢を見たとき、いつもそうしているように、その本をびりびりに引き裂いてやろうとして手を伸ばした。けれどそのときの俺にそれが出来るわけがなかった。だって、これは俺の夢だからね。この本をびりびりに引き裂いたところで、きっと目が覚めれば元通りになっている。


「そう……これは貴方の夢だもの」


だから、俺はこの本に書かれていることをしなくちゃいけない。


このつまらない現実から逃げ出すために、俺が主人公になる為に。


ああ……そうだ……俺はその本に書いてある事をしなくちゃいけない。


そうしなきゃ、俺はつまらない日常に逆戻りだ。あの……何もおもしろくない現実に。


「貴方はその私を読むべきよ」


本が語り書けてくる読む?この本を?……何故?どうして?いや、そもそもこの本はなんなのだろう? これは本当に俺の夢なのか?それとも……いまだに俺は夢を見続けているのだろうか?


「貴方は私を読むべきだわ」


ああ……そうだ、その通りだ。


……けれど、本を読むのは俺であって俺ではない。なら、誰がこの本を読んでやればいいというのだろう……? そして、それが出来るのは誰だというのだろう……? いや、違う。それは問題じゃない。




それだけ思うと静かに開き始めた。






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