第一話
初投稿です。よしなにお願いします。
遅筆で拙筆ですが、完結はさせたいと思いますので、ゆっくりとお付き合いお願いします。
世界は争いに飢えている。
大陸中最大の領土を持つカルミア帝国が隣国に対し、戦争を起こしたのが始まりだった。きっかけなど些細なもので、戦争を起こす理由が欲しかったに過ぎない。
領土をさらに広げようとする国がいれば、対抗する国が現れるのも必然であった。結果として、カルミア帝国に並ぶ国力を誇るロカリス王国などの大国も均衡を保つためという名目のもと、戦火を広げていった。
そうして止まることを知らない戦争の余波は、周囲の国だけでなく大陸全土を巻き込み、10年が経った今では世界大戦へと発展していた。この戦争での被害者は、大国が力の誇示のため、戦争に巻き込んだ数多の小国であろう。力のない国から滅びていく、そんな時代であった。
今日もまた、ひとつの国がなくなった。
グラヨール王国。決して大きいとは言えない国であったが、卓越した魔法力を有する少数精鋭の部隊や、独自の技術力を用いた魔導兵器の力によって他国からの侵略に抗っていた。その部隊を率いていたのは、グラヨール王国の若き王女であった。
ロカリス王国は、数回にわたりグラヨール王国へ攻め入ったが、そのどれもが苦汁を飲まされる結果に終わっていた。そのため今回の進軍にはより一層力を入れており、前回までの倍以上の戦力をもって確実に攻め落とすという意思を感じられた。
いつも以上に凄惨な争いが始まると予想されていた。しかし、戦端が開かれることはなく、グラヨール王国城壁の上には降伏を示す白旗があがっていた。
これまで抗っていたグラヨール王国であったが、国民の待遇を保障することを条件に降伏を申し出た。その結果、国王や重鎮らは悉くが捕虜となったが、たった一人王女だけはまるで突如消えたかのように、ついぞ見つかる事はなかった。
不気味な事に捕虜となった者たちは、自分たちの国が負けたとは思えないほど清々しい笑みを浮かべていた。研究者と思しき人物は「実験は成功、我々の勝利だ」と言い残し不敵な笑みを浮かべたという。
こうしてロカリス王国の意気込んだ進軍は、両軍無血のままグラヨール王国の降伏をもって幕を閉じた。王女を捕らえるという目的は果たせぬままに。