ポーカーフェイス勇者
なろうラジオ大賞参加作品です
世の中では転生チートものが流行り、その転生チート野郎をやり込めるものが流行ったり。
だがまさか自分がその物語に転生するとは思ってもみなかった。
まさかやり込められる転生チート野郎に転生するとは……!
い、いや、だがまだ間に合う。
確かに俺ことこのチート野郎は、「あれ? 俺何かやっちゃいました?」をかまし、美少女幼馴染とツンデレ美形侯爵令嬢、天才美少女魔術師、ポンコツ美女の女騎士、エルフの奴隷姫を侍らせる鈍感系主人公ムーブをかまし、王女を婚約者にして爵位をゲットするという典型的チート道を辿ってきている。
だがまだ俺をぶちのめす努力系転生主人公とは出会っていない!!
だからまだ大丈夫! なはず!
というわけで俺は早速この国を出ることにした。
いやだってこのままだと努力系転生勇者(めんどくさいな、努くんと呼ぶことにしよう)努くんと出会ってざまぁされちゃうんだよ。
ヤンデレ風味のハーレムメンバーとはお別れして、ラブアンドピースなスローライフを希望、いやかなりマジで。
ていうかなんでハーレム作っちゃうかな俺。
前世じゃ確かにモテなかったが、前々世はそうでもなかったぞ。前々々世はわからんけども。
俺はこっそり城から抜け出した。
部屋には『世界を救ってくる、探さないでください』とメモを残してある。
まだ誰にも手を出してないから多分オッケー。
そして俺は今、久々の解放感で幸福を味わっていた。
いやあ、やっぱり付き合うならあとくされのないボンキュッ、ボーンなお姉ちゃんですわー。
生まれた国から遠く離れた言葉も分からない国で、俺は夜のお店でお姉ちゃんを4、5人テーブルに呼び、ボトル片手に豪遊中。
え? スローライフ? 年取ったらね、年取ったら。ほら俺今ピチピチのハタチだから。
「姉ちゃんを返せ!」
あれ、なんか懐かしい言葉。
するとそこには俺をぶっ倒す予定の努くんが。
あれえー?
どうやら国がおかしくなって逃げてきて、そして騙され、姉が夜の店で働かされるようになったらしい。
やっべえ、主人公とエンカウント。
俺はポーカーフェイスでヤツの味方のフリをして、借金を全部支払ってやった。
もんのすげえ感謝された。
だから努くん、俺をぶちのめさないでくれ。
努くんは俺にキラキラした目を向けてくる。
「どこまでもついて行きます、アニキ!」
今、俺の隣には努くんとその姉がいる。
内心ガクガクブルブルの俺の勇者系ポーカーフェイスがいつまで持つか、それは誰にも分からない。