家業(そのいち)-3
ぬいぐるみには何も仕掛けをしていない。
だけど、動向を探るならば何も無い方が良い。
師匠ならきっともっと上手くしているだろうが、ボクにはこれが精一杯だった。
ソレも持った瞬間に理解してくれたのだろう。
ボクは思考を止めることなく変わることのない、1枚の絵を見るように時が来るまで今のまま警護に努める事にした。
壱
今が何時なのか分からない。
でも、時が来たのを感じた。
常にボクの後ろにあった気配が、ソレと別れてから少なくなり、そしてボクの後ろから微かな気配に変わったから、、、
ソレが行動を起こしたのか、それともソレが捕まったのか分からない。
でも、確かに少なくなっている。
今しか行動を起こす瞬間はないと本能が告げるとボクはゆっくりと身体を動かし、席を経った。
ゆっくりと警戒していることを探られないようにトイレに行くようにボクは荷物の半分を置いて歩き出した。
部屋の全員の意識がボクに向くのを感じたが、ソレを気取られるのは命取りになる。
ボクは気付かない素振りをしながら部屋を出た。
出た瞬間、ボクは防犯カメラの映像で覚えたこの建物の構造からいくつかある出口へのルートを選びボクは走り出した。
弐
やはりと言うか警報が建物内を響き渡った。
ボクはアレ等が来る前に走りながら手元で仕込みを始めた。
監視カメラの映像から選んだルートだとこの角を曲がるときっとアレ等は待ち受けている。
ボクは急いで作った師匠特性の煙幕弾を曲がり角に打ち込み、煙がボクの所まで来るの見計らいダミー人形を曲がり角に投げ込むと近くの排気口に入り込んだ。
排気口に入り込むとすぐに銃撃音が背後から聞こえたる。
少しでも時間を稼ぐためにボクは焦らず、排気口の入り口を元に戻すと頭の中のマップを便りに進んで行くことにした。
ソレは大丈夫だろうか?
ボクの理性はこの建物に一刻でも居るのは危険だと告げている。
でも、ボクの身体は別の所を目指していた。
そこも監視カメラが映っていたが、何も映らなかった場所。
虫や月明かりの明暗も映し出されないダミー映像の場所だった。
そこに近付くと、良く知っている臭いがした。
師匠からはこの臭いだけは覚えて絶対に近付くなと再三注意を受けていたが、ボクの身体は自然と進んでいた。
参
ボクは1室の部屋を上から眺めていた。
ソレはアレ等に囲まれて拷問を受けていた。
致命傷になる所を避けての裂傷から血が滲んでいた。
血の臭いがソレから流れる血の量では考えられない程、濃い臭いを漂わせている。
「あの子は関係ない!」
ソレが声を荒げながら、叫んでいる。
アレ等はその言葉を聞くとゆっくりとナイフをソレの身体に刺し込んでいった。
「っ!!あの子は旅人で今日知り合っただけ!お願いだから、あの子だけは無事に町の外に出してあげて!」
どうしてソレはボクの心配をしているのだろうか?
ボクは分からなかったが、何よりも分からないことがあった。
それはボクの求める答えなのかも知れないと思いボクは荷物をあさり、準備を始めた。
体力やこの後の行動を考えると時間が無いのは分かっている。
ボクの手は恐怖からなのか、焦りからなのか、震えながらもいくつかの物を完成させ、再度確認した。
まだ、゛少女゛は薬物や致命傷を受けずにその場で居たが、表情からどうやらボクが逃げた事を理解して命を諦めようとしているのが見えた。
ボクはガスマスクを着け、腰に棒を備えて準備を終えると排気口を音を立てずにゆっくりと開けて閃光弾、その少し後に師匠特製の対人煙幕弾を投げ込んでガスマスクを片手に飛び降りた。
信頼