家業(そのいち)-1
『繋がりは大事だから、独りになるのは止めておきな』
師匠は良く言っていた。
でも、ボクには分からない。
苦しい時に手を差し伸べてくれるそんな存在なんて居ないんだ、、、
壱
雪が降る中、ボクは倒れている。
この世界は非情でどうしようもない世界なんだと思う。
ボクの身体に雪が積もり始めている。
ボクはこのまま、ここで終わるのかと思うと心が少し楽になってきた。
「、、、?」
何かの聞こえるけど、ボクの身体はボクの意識を廻ることは無く、次第にボクの意識事態も無くなってきていた。
「!!??」
音は何か必死になっているようだが、ボクの意識は闇の中に包まれていった。
弍
ボクは近くの公園のベンチで目を覚ました。
ボクの身体にはコートとマフラーが巻き付いている。
ボクの物ではないそれ等にボクは疑問を抱いていると、持ち主のソレが戻ってきたみたいで温かい缶コーヒーをボクに差し出してきた。
ボクはソレを不思議な感じで眺めていた。
「良かったね。私が居なかったら君死んでたんじゃない?」
どうやら、ボクはソレに命を救われたみたいだった。
ボクの身体に巻き付いているコートとマフラーをソレに返すとボクはお辞儀をしてその場を離れようと歩きだした。
「ねぇねぇ。行くところあるの?」
ボクは無視して歩き続けた。
「行くところ無いなら私の所くる?」
意味が分からなかった。
ソレとは過去の面識なんて当たり前だけどない。
つまり、ソレは初対面のボクを誘っている。
そんな怪しいソレにボクは警戒しながら歩みを早める事にした。
「警戒しなくても襲わないよ?襲うなら気絶してる時にしてるから」
確かにと思う気持ちもあったが、それでも歩みを緩めるつもりはなかった。
「、、、本当は家業の手伝いをして欲しいの。きちんとお礼も渡すから!」
ボクは歩みを止めてソレに向き合った。
ボクはまだこの町で何かをするか決めていなかった。
「簡単な作業だから手伝って、お願い!」
ソレはボクに懇願していた。
ボクはため息をついて、命の恩人と言うこともあるので引き受けることにした。
いつの間にか雪は止んでおり、曇天の隙間から月明かりが覗かせている。
参
ソレの後に着いていくと一件のビルにたどり着いた。
「私の家業はあらゆるモノからあらゆるモノを警護する仕事なの。今日の警護はこのビルの警備ね」
ボクは帰ろうと思った。
腕力等に対して自信なんて無いから、、、
ソレは察知したのか、ボクの腕を掴んでビルに入っていた。
「今日はここのビルの警備員を守れば良いだけの簡単なお仕事だから危険はないよ」
、、、警備員を警護すると言う言葉の意味が分からない。
ボクの表情を読み取ったのか苦笑いしながらビルの中を進んでいった。
「警備員を警護って何のためにするんだろうね?今までも色んな依頼があったけど、私も初めての経験なの」
警備員室についてボクはなんとなく理解した。
師匠から昔聞いた『信用しない人』それと同じなんだと思った。
複数の監視カメラで写し出される、変化の無い大量の画面を複数の警備員が見ている。
ソレも少しは異常を感じているのか、ボクの腕を強く握り絞めている。
ボクは痛みに耐えながらもソレの顔が仕事人の顔になっているのを感じた。
「今回の、、、舐めてたかも、、、」
ソレがボソッと言った言葉をボクは確かに聞いた。
そろそろストック作りたい