草笛-3
ボクは昨日まで寝ていた寝袋に斧が振り下ろされるのを近くの草の中で見ていた。
アレはもう一度振り上げ、寝袋に振り下ろそうとしている。
このままやり過ごすのも良いかもしれない、、、でも、ボクは闘うことにした。
ボクに足りないモノはたくさんある。
でも、逃げることでその何かを手に入れて夢を掴むことが出来ると思わないから、、、
ボクは予め用意した簡易的で原始的な仕掛け、設置型クロスボウを起動する紐を切った。
紐は勢い良く引っ張られていき、張り切っていた弦から1本の矢を飛翔させた。
飛翔した矢は風切り音を大きく鳴らしながら寝袋の辺りを貫く算段だが、当たれば儲けモノ当たらなくても突然の敵意に常人ならば怯みを与える事が出来る。
その時の行動でボクの次の手が変わる。
ボクは敵意と殺意の音を鳴らしながら飛ぶ矢がアレの太ももに刺さるのを見た。
見た上で逃げることにした。
荷物の半数は今の隠れている場所に置いて居るので旅は続けられる。
もう半数は仕方無いけど諦める事にした。
アレは常人でも外れた人でもない。
風切り音を確認した上で自ら当たりにいく。
そんなアレの相手なんて出来る訳が無い。
ボクは足音を忍ばせながら逃走用に決めていたルートを通って町を出ようとしていた。
壱
寝床にしていた所からある程度離れ、ボクは【裏道】を走っていた。
アレの居る町 でなぜ皆はこんなに平凡のように暮らしているのだろう等と無駄な思考をしながら人が通ることの出来る【裏道】が終わりを迎えそうな時にボクは立ち止まった。
警戒をしながら寝るのに不便の無い場所、、、
逃げるのに適した見付かり辛いルート、、、
考えすぎかもしれない、、、でも、ボクの足を止めるには十分な理由だった。
その場に立ち止まると荷物から棒とスリングと閃光弾を取り出し、【裏道】の先に向かって狙いを定め、放った。
閃光弾はあまりが量が作れず、選択を誤っていた場合はアレにボクの居場所を伝えることになってしまう。う、、、だが、ボクには確信があった。
あの角にアレは息を忍ばせボクの命を狙っている。
このルートもあの場所もアレが用意していたに違いないから、、、
閃光弾が【裏道】の終わりに着弾すると閃光が辺りを包み込んだ。
「っぐ」
微かにでも、確かに聞こえた。
ボクは棒を片手に構えてそこに向かって駆け付け、振り下ろした。
ボクの棒はアレの手に当たり、手に持っていた斧を地面に落としたが、アレは直ぐにボクの首に向かって手を伸ばしてくる。
アレには痛みが無いのだろうか?
ボクは些細な事を考えながら棒をアレの顔に向かって全力で突いた。
アレは避ける素振りを見せずに居るのを見てボクは極めて優しく笑顔を向け、、、無慈悲にボタンを押した。
電撃が棒を流れ、アレは痙攣を起こしながらその場に倒れた。
ボクはアレにもう一度、電撃を浴びせ置いてきた荷物を取りに戻ってみることにした。
弍
期待はしていなかったのもあるから落ち込みはしなかったが荷物の大半は無惨な姿になっていた。
ボクはその中から使えそうなモノを物色して荷物をまとめこの町を去る準備を始めた。
なぜボクが襲われたか分からない。
でも、アレによって何人もの旅人はここで無くなっていたのをアレが流した血の跡を見て察することは出来たが確認をすることにした。
アレの血は一見変哲もない壁に向かって進んでおり、そのまま消えていた。
ボクは壁に手を掛け、少しの傷を付けてから壁を調べた。
壁は横にスライドする形で開くことが出来た。
中からは腐臭と鉄の匂いが漂ってくるがボクは歩みを進めた。
中に入ると白骨化した人骨が至るところに転がり、やはり何人もの旅人がアレの犠牲になっていたのが確認出来た。
全ての人骨の頭が無い以外に違いはなく、小さな人骨や大きな人骨等、きっと老若男女の人骨がそこに転がっているのだろう。
道の終わりを迎え、出た先は【裏道】の出口の直ぐそこだった。
ボクは未だに倒れているアレに対して一瞥を向けるとそのまま町の外に向かって歩きだした。
迷走中