草笛-2
さっきの演奏でボクにしてはかなりの大金を手に入れたので、久しぶりに水洗いではなく、コインランドリーを使って衣服等を洗濯した。
コインランドリーでグルグル回る衣服を眺めながら師匠の事を考えていた。
『旅は人と人との繋がりでなっているそれだけは忘れてはいけない。旅は独りだが1人ではない』
師匠の言葉の意味をボクは一緒に居る時には気付く事は出来なかった。
師匠は何でも独りで全てをしていたから、、、
路銀を集めるのも人が少なくても、いつも一定以上は集めていたし、旅人とは思えない程の清潔感を保っており、独りで完結していた。
それなのにボクを弟子にしてくれたのはきっと師匠の戯れだったのだろうか、、、
懐かしい気持ちと師匠の居ない孤独を噛み締めながら回る衣服等を眺めていた。
壱
朝になり、ボクはこの町を散策し始めた。
ボクは何のために旅をしてるのかを探していた。
ボクの夢は果たしてこの道の先に繋がっているのだろうか?
分からないけど、それでもボクはボクを知るためにも旅を続けている。
冷たい空気の中、朝日の温かな日射しを心地よく感じながら街並みを散策していた。
繁華街はどこの町でも変わらないが繁華街を外れると町の特色が出てきて、この町の本質の欠片を確認することが出来る。
何かがあると言う訳でもなく和でのんびりとした優しい空気が流れている。
こう言う町を師匠は好きでいたけど、ボクにとっては退屈だった。
見るべきモノも何もないそんな町の散策は歩くだけで終わってしまうからだ。
ある程度歩き回ってボクは途方にくれていた。
最低3日は町に居る。それが、師匠がボクに教えてくれた事だったからだ。
たくさんの理由があるみたいだけど、1番は旅人は旅行者ではないからと言う理由みたいだった。
弐
ボクは昨日と同じ場所で同じ様に演奏を続けていた。
ボクは視線が相変わらず苦手だ。
それでも路銀が無いと生きていく事が出来ないから、、、
だから、本当に偶然だった。
今日も何回もお金が桶に入り、いつもなら落ち着いてから顔をあげるのだが、お金が入った後にすぐに顔をあげてしまった。
そこには入れた人の後ろ姿しかなく、立ち止まっている人が居なくて他の人はもう帰ってしまったのかな?と思っていた。
その人も通りの向こうに消えてしまい立ち止まっている人は居なくなってしまった。
不思議に想いながらボクは次の曲を奏で終わってまた、お辞儀をした時に違和感を感じた。
昨日から同じ靴しか見てないことに気付いてしまった。
お金が入る瞬間にボクは顔をあげてしまった。
そこにはいたソレは凶器を能面で隠した無表情でボクを見つめた後、怒りの表情を見せて今度はそのままどこかに行ってしまった。
その後は何曲しても、立ち止まる人はいるがお金が入る事は無かった。
参
ボクはこの町についてからずっと利用している寝床に着くと、周りを見渡してからサギョウを始めた。
サギョウは手早く丁寧にしなければ、いけない。
遅くても早くてもサギョウは全てを台無しにするからだ。
師匠に何度も何度も仕込まれて、旅をするのには必要な事として教わったから、、、
ボクは日常の行動のようにサギョウを終わるとそのまま寝袋に入った。
夜の音が辺りを優しく包む中、不意にバキッと言う音が軽く響き、沈黙が瞬間的に流れた後、重たい衝撃音が静かな夜に鈍く響いた。
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